ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカル魚でとれたてごはん…高崎 『だんべ』の、ギンヒカリのつくりと生春巻き

2017年02月18日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
高崎といえば「だるま」と、多くの人が即座に思い浮かべる所以は、少林山達磨寺にある。唐風の総門から長く急な大石段を登り、大岩の「達磨石」に参拝してからさらにひと登り。本堂の霊付堂がだるまの納め所で、堂を囲む回廊にダルマがびっしり積みあがる、かの有名な光景が拝めた。ダルマはいずれも両目が入っていて、こちらに満願成就の目線がたくさん注がれてくるかのよう。社務所にかかる絵馬もダルマで、日本中のダルマが並ぶ達磨堂の前には大ダルマも鎮座していた。境内どこにいても、エネルギッシュな赤の縁起を授かっている気分に浸れてしまう。

駅へと引き返す途中で日が傾きはじめ、碓氷川越しに吹きつける上州の空っ風が身にしみる。たまらず高崎駅に着いたとたん、駅前の居酒屋「だんべ」の暖簾をくぐると、ちょうどひとり空いたとのことで、カウンターに席をつくってもらえた。品書きの料理には、群馬産食材使用を示す「マル群」マークが多数ついており、赤城鷄に上州牛、野菜もジャガイモにマイタケにモヤシに梅など、ズラリと多彩に揃っている。冷えた体を温めるべくまずは高崎産豆腐の揚げ出しと、酒は館林の「龍神」辛口を。豆腐は舌で押しても崩れないほどコシがあり、ポン酢生姜風味の出汁のおかげで芯から温まる。

ひと心地ついたら、ボードのオススメから「鮮刺」すなわちつくりを選び、腰を据えて構えることに。すると福島のアイナメに高知の黒ムツなどが並ぶ各地の地魚のところに、「群馬」の文字を見つけて驚く。魚種は「ギンヒカリ」とあり、県の水産試験場で開発された養殖のニジマスです、とお兄さん。「ぐんまの最高級ニジマス」と称されるように、海なし県のローカル魚として現在売り出し中の種だそうである。ダルマの赤つながりで赤身もよし、とつくりを頼むと、見た目はサーモンよりも色が深く、オレンジというよりは橙色に近い鮮やかさである。

ひと切れいくと、舌ざわりがツルリときてから、トロリととろける柔らかさ。続いて脂甘さが立ち上がり、さらにグッと押してくると思ったら、ほどほどのところで収まっていく。辛口の「龍神」をあててみたら、むしろ酒の方が強すぎるぐらいだ。ニジマスは2年で成魚になるが、3年ほどかかる種を選抜して養殖することで、大型で食味をよくしたのがギンヒカリの特徴である。いわばじっくり育て上げた、内に秘めたる味わい深さで、外洋を回遊するサケのバイタリティと対称な、ジワジワと湧き上がるうまさか。川魚のクセもなく、海の魚の濃厚さもないところが、研究開発された種らしいハイブリッドな素性ともいえる。

せっかくなので、豊富に揃う高崎食材を合わせた一品料理もと、ギンヒカリの生春巻きを追加。群馬産の梅が隠し味となっており、ギンヒカリのトロトロとレタス、玉ネギの野菜のシャキシャキが、食感のコントラストを醸し出す。梅の酸味と脂の甘さは、正面からコンタクトして相乗、食感と味ともに、群馬の出会いものの妙だ。観音様から岩魚への白に続き、ダルマからギンヒカリへの赤。縁起のよいまちの見どころを紅白あやかって巡ると、食にもツキと縁起がめぐってくるような、高崎食材で杯を重ねる夜である。

ローカル魚でとれたてごはん…高崎 『たかべん』の、岩魚鮨

2017年02月18日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
高崎城跡に建つ市役所21階の展望ロビーは、高崎の街なかで屈指の観光スポットである。東側を臨むと、右方向から稜線を広くとる赤城山と榛名連峰が、市街を懐に抱くように広がる。西側に移動してみると、右方向には頂から白く雪をまとった浅間山のゆるやかな山容、そのすぐ左に荒々しくがたついた妙義山の峰々が対照的だ。上州の名だたる山々に囲まれた眺めを楽しみながら、フロアを行き来していると、まるでこれら山岳の持つパワーを享受したような気分に浸れる。

そして眼下を流れる烏川越しの小高い丘には、白亜の像が市街を見下ろすように立っているのが遠望できた。高崎のシンボルである、白衣大観音像である。鬱蒼とした森の中から白衣をまとい屹立する姿は、やや右方向の雪の浅間山と並び「白」を強く印象付ける眺めだ。高崎は「縁起のいいまち」と銘打って、運気を上げる市街の様々なスポットをPRしているという。白衣大観音はさしずめ縁起のいい紅白の、白の象徴といったところだろうか。

展望台より、遠方からながら観音様へ参拝したら、「赤」の縁起にも参拝せずにはいられない。高崎を象徴する赤といえば、ダルマ。そこでだるま市で知られる少林山達磨寺を詣でに、高崎駅へと引き返した。昼飯は駅弁で済ませようと構内の売店「たかべん(高崎弁当)」を覗いたところ、だるま弁当と並んで川魚の押し寿司が、二種類ほど並んでいる。縁起ものの名物弁当と迷うところだが、ローカル魚の駅弁にどうにも食指が動いてしまう。ダルマはこの後でたくさん相見えるし、二種から「岩魚鮨」の方を選んだ。最後のひとつで、購入すると「この時間に買えるとは、ついてますね」と店のお兄さん。1日数個しか入らないレアな駅弁だそうで、さっそく観音様から縁起を授かったようで嬉しくなる。

高崎駅から、達磨寺最寄りの群馬八幡駅まではわずかふた駅なので、到着してから待合室にて腹ごしらえとした。箱を開けると、ネタは岩魚のみの棒寿司が一本と、実にシンプルだ。ひと口大に切り分けてから、醤油をかけ回して一切れ。舌ざわりはサラサラとなめらかで、川魚ならではの土の香りの後から、ほんのり脂ののった身の甘さがふっくらと立ち上がってくる。見た目から上品な白身かと思いきや、猛々しく芯が通った力強さが感じられ、なかなか野性味あふれる味わいの寿司である。

群馬県のイワナは、先の烏川や榛名川、碓氷川など、県内を流れる河川の上流域に棲息している。深い山峡の源流部で漁獲されるため、釣り人には「幻の魚」と称される一方、利根川水系の冷涼で清冽な水を生かし、養殖も盛んに行われているという。岩魚鮨の由緒書きには「上州の清流で育てた幻の魚」とあり、水の良さがそのまま澄み切った味に現れているようだ。きれいな白身の見た目は観音様の着衣のごとき、とばかり、白の縁起をしっかり取り込んで、まる1本ごちそうさま。

以下、「赤」編に続く。

ビジネスホテル寿々屋@高崎

2017年02月18日 | 宿&銭湯・立ち寄り湯
プライベートで泊まる宿はとことん安くがポリシー。今宵の「ビジネスホテル寿々屋」、前回高崎泊した時の怪しげな「ニュー赤城」の隣だ。3700円也の外観と内装、エアコンが騒音全開と、学生の時の貧乏全国旅を思い出す。

漫画の蔵書が盛りだくさんなのも、この手の宿のお約束。今夜は『最強伝説 黒沢』読破するかな。

cafeあすなろ@高崎

2017年02月18日 | 旅で出会った食メモ
中央ぎんざのレトロアーケードを歩いたので、シブい純喫茶でコーヒーといきたかったが見当たらず、鞘町の「cafeあすなろ」へ。かつてあったクラシック喫茶の流れを汲んでおり、ロフト風の店舗は空間を広く取っていて落ち着け、ピアノのBGMが穏やか。深煎りコーヒー350円も、コスパよし。

用のない街・高崎さんぽ10

2017年02月18日 | 用のない街にあえて泊まり旅気分に浸る
中央ぎんざ商店街の夜の顔は、なんとクラブ街。もともとあった商店が廃業した際に、その場所で開店したからか、先ほどの昭和レトロ店舗の間にこうした店が入っている。そのため昭和な大衆食堂や文房具屋の数軒隣に、きれいどころのお姉さんが出入りするという、なんともシュールな商店街風景というか社交街風景が展開されている。

年配の店主がのんびり店番しているレトロな商店街に、日が暮れると夜の蝶が飛び交い、それに惹かれた男子が集う。これまた、高崎の縁起のひとつか。