高崎といえば「だるま」と、多くの人が即座に思い浮かべる所以は、少林山達磨寺にある。唐風の総門から長く急な大石段を登り、大岩の「達磨石」に参拝してからさらにひと登り。本堂の霊付堂がだるまの納め所で、堂を囲む回廊にダルマがびっしり積みあがる、かの有名な光景が拝めた。ダルマはいずれも両目が入っていて、こちらに満願成就の目線がたくさん注がれてくるかのよう。社務所にかかる絵馬もダルマで、日本中のダルマが並ぶ達磨堂の前には大ダルマも鎮座していた。境内どこにいても、エネルギッシュな赤の縁起を授かっている気分に浸れてしまう。
駅へと引き返す途中で日が傾きはじめ、碓氷川越しに吹きつける上州の空っ風が身にしみる。たまらず高崎駅に着いたとたん、駅前の居酒屋「だんべ」の暖簾をくぐると、ちょうどひとり空いたとのことで、カウンターに席をつくってもらえた。品書きの料理には、群馬産食材使用を示す「マル群」マークが多数ついており、赤城鷄に上州牛、野菜もジャガイモにマイタケにモヤシに梅など、ズラリと多彩に揃っている。冷えた体を温めるべくまずは高崎産豆腐の揚げ出しと、酒は館林の「龍神」辛口を。豆腐は舌で押しても崩れないほどコシがあり、ポン酢生姜風味の出汁のおかげで芯から温まる。
ひと心地ついたら、ボードのオススメから「鮮刺」すなわちつくりを選び、腰を据えて構えることに。すると福島のアイナメに高知の黒ムツなどが並ぶ各地の地魚のところに、「群馬」の文字を見つけて驚く。魚種は「ギンヒカリ」とあり、県の水産試験場で開発された養殖のニジマスです、とお兄さん。「ぐんまの最高級ニジマス」と称されるように、海なし県のローカル魚として現在売り出し中の種だそうである。ダルマの赤つながりで赤身もよし、とつくりを頼むと、見た目はサーモンよりも色が深く、オレンジというよりは橙色に近い鮮やかさである。
ひと切れいくと、舌ざわりがツルリときてから、トロリととろける柔らかさ。続いて脂甘さが立ち上がり、さらにグッと押してくると思ったら、ほどほどのところで収まっていく。辛口の「龍神」をあててみたら、むしろ酒の方が強すぎるぐらいだ。ニジマスは2年で成魚になるが、3年ほどかかる種を選抜して養殖することで、大型で食味をよくしたのがギンヒカリの特徴である。いわばじっくり育て上げた、内に秘めたる味わい深さで、外洋を回遊するサケのバイタリティと対称な、ジワジワと湧き上がるうまさか。川魚のクセもなく、海の魚の濃厚さもないところが、研究開発された種らしいハイブリッドな素性ともいえる。
せっかくなので、豊富に揃う高崎食材を合わせた一品料理もと、ギンヒカリの生春巻きを追加。群馬産の梅が隠し味となっており、ギンヒカリのトロトロとレタス、玉ネギの野菜のシャキシャキが、食感のコントラストを醸し出す。梅の酸味と脂の甘さは、正面からコンタクトして相乗、食感と味ともに、群馬の出会いものの妙だ。観音様から岩魚への白に続き、ダルマからギンヒカリへの赤。縁起のよいまちの見どころを紅白あやかって巡ると、食にもツキと縁起がめぐってくるような、高崎食材で杯を重ねる夜である。
駅へと引き返す途中で日が傾きはじめ、碓氷川越しに吹きつける上州の空っ風が身にしみる。たまらず高崎駅に着いたとたん、駅前の居酒屋「だんべ」の暖簾をくぐると、ちょうどひとり空いたとのことで、カウンターに席をつくってもらえた。品書きの料理には、群馬産食材使用を示す「マル群」マークが多数ついており、赤城鷄に上州牛、野菜もジャガイモにマイタケにモヤシに梅など、ズラリと多彩に揃っている。冷えた体を温めるべくまずは高崎産豆腐の揚げ出しと、酒は館林の「龍神」辛口を。豆腐は舌で押しても崩れないほどコシがあり、ポン酢生姜風味の出汁のおかげで芯から温まる。
ひと心地ついたら、ボードのオススメから「鮮刺」すなわちつくりを選び、腰を据えて構えることに。すると福島のアイナメに高知の黒ムツなどが並ぶ各地の地魚のところに、「群馬」の文字を見つけて驚く。魚種は「ギンヒカリ」とあり、県の水産試験場で開発された養殖のニジマスです、とお兄さん。「ぐんまの最高級ニジマス」と称されるように、海なし県のローカル魚として現在売り出し中の種だそうである。ダルマの赤つながりで赤身もよし、とつくりを頼むと、見た目はサーモンよりも色が深く、オレンジというよりは橙色に近い鮮やかさである。
ひと切れいくと、舌ざわりがツルリときてから、トロリととろける柔らかさ。続いて脂甘さが立ち上がり、さらにグッと押してくると思ったら、ほどほどのところで収まっていく。辛口の「龍神」をあててみたら、むしろ酒の方が強すぎるぐらいだ。ニジマスは2年で成魚になるが、3年ほどかかる種を選抜して養殖することで、大型で食味をよくしたのがギンヒカリの特徴である。いわばじっくり育て上げた、内に秘めたる味わい深さで、外洋を回遊するサケのバイタリティと対称な、ジワジワと湧き上がるうまさか。川魚のクセもなく、海の魚の濃厚さもないところが、研究開発された種らしいハイブリッドな素性ともいえる。
せっかくなので、豊富に揃う高崎食材を合わせた一品料理もと、ギンヒカリの生春巻きを追加。群馬産の梅が隠し味となっており、ギンヒカリのトロトロとレタス、玉ネギの野菜のシャキシャキが、食感のコントラストを醸し出す。梅の酸味と脂の甘さは、正面からコンタクトして相乗、食感と味ともに、群馬の出会いものの妙だ。観音様から岩魚への白に続き、ダルマからギンヒカリへの赤。縁起のよいまちの見どころを紅白あやかって巡ると、食にもツキと縁起がめぐってくるような、高崎食材で杯を重ねる夜である。