ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

らかん茶屋のカキ土手鍋@経堂

2017年02月25日 | 町で見つけた食メモ
今宵の宴は、カキの宴。広島の産物産品のプロモを目的とした「ひろがるひろしま」による、牡蠣の土手鍋&広島の日本酒まつりにおじゃました。会場は世田谷区経堂の「らかん茶屋」。同地のイベントスペース「さばのゆ」で、広島の食と酒の情報発信に参加したことがあり、その流れの催事である。

タイトルの通り、広島のカキと酒づくしで、特にカキが頭抜けた旨さだこと。生ガキはプリプリの舌触りが若々しい艶めかしさで、舌から喉へツルリと芳醇に落ちていく。カキフライならぬカキ天は、グシッとソフトな衣に瑞々しさが封じられ、じっとりとこなれた旨さが生ガキと対照的。どちらも肉厚さとジューシーさは特筆もので、カキ処広島湾の豊かさが舌の上に浮かんでくるようだ。

この日の素材のカキは、似島にある堀口海産から取り寄せたものである。広島湾は太田川などの河川が流れ込む富栄養な湾で、波が穏やかかつ台風などの天災が少なく、カキ養殖に適した環境にある。似島は広島市街の沖合に位置しており、これら環境的恩恵を大きく受けるため、より丸々としてフルフルに柔らかな身質となるのだ。加えてこちらでは、カキを殻から外す「カキ打ち」の際に身を傷めないようにしたり、殺菌時に塩素を使わない独自の方法を用いるなど、水揚げ後の扱いにも配慮。らかん茶屋のご主人が「ここの方はいわば、カキオタク」などと称するように、品質にとことんこだわっているのだそうだ。

その真髄は、主菜であるカキの土手鍋で心底実感できる。八丁味噌ベースの赤味噌による土手味噌のまったり厚い甘さに負けず、ホコホコとした歯ごたえから角の取れた穏やかな甘みが拡散。潮の香りはほどほどながら、目を閉じればそこに瀬戸の海を感じられるようだ。カキは割と体に強くあたる食材ながら、これならいくつ食べてもすんなり腑に沁みていく。締めの雑炊ならぬ南部煎餅が、味噌とカキエキスをしっかり吸い込み、くたっとしながらもなかなかやる味わいである。

竹鶴秘蔵の濁り酒など、この会のために揃えられたレア物の地酒が次々に杯に注がれ、カキをアテにしては同席左右との広島や地域の談義に花が咲く。これぞ酒と料理、そして人との「出合もの」が美味く楽しい、経堂クオリティだ。