三陸屈指の防災都市と称された田老の防波堤は、まさに「万里の長城」たる堂々たる佇まいである。3本の防波堤を臨めるポイントに立ち、周囲をぐるりと見渡せば、復興に向けての様子が手に取るように分かる。湾内で巨大な渦となり、ここを乗り越え街を押し潰し引いていった津波の凄まじさ。それから4年、がれきの山は草地となり、現在はかさ上げの造成が進み、高台には移転した住宅も建ち始めた。
水門だけ残して決壊した第2防波堤の海寄りには、漁師が作業に使うプレハブの小屋が建ち並ぶ。ワカメ漁やウニ漁に使われているのだが、浜に近いため移転対象なのらしい。かさ上げした国道4号線から海側は、民家などは建てられない決まりで、それでも浜に近いところで働きたい、海が見えるところに住みたいのが、漁師の気持ちなのらしい。
同じ防波堤の内側に建っていたたろう観光ホテルは、4階まで津波を受け壁を破壊されてしまった。震災の遺産として、その姿を残すべく保全中で、営業棟は景勝の三王岩に近い高台に「渚亭たろう庵」として移転した。景色を見てもらうためにここに建てました、と支配人が称するだけに、13室の客室はどれも展望の素晴らしいこと。復興著しい田老の市街や、田老漁港と太平洋を見下ろしつつ、部屋付きの露天ジャグジーに浸っていると、被災地であることを一時忘れてしまうような。
景色はもちろんのこと「宿として地元を利用する」との話の通り、料理も地元の食材にできるだけこだわっている。アワビの肝とコノワタの突き出しに始まり、酢の物は山田のホタテ、宮古のホヤに水タコ、ホヤ、そしてサケの氷頭(軟骨)にマンボウのコワダ(腸)といった珍しい部位も。マツモは地元田老産で、キウイのソースが個性ある魚介たちをうまくまとめている。
続く地物煮魚のクリームソースは、田老でとれたサクラマスで、淡水のマスらしく身の味が淡く軽いこと。ソースのベースは、サケのアラを2時間以上煮込んで作っているそうで、食材を無駄にしない心意気が伝わってくる。突き出しのアワビのキモも、高級魚介である吉浜アワビから外したものだそうである。
支配人いわく、この宿には冷凍庫を置かないことをモットーとしているそう。入札権を持っているので直下の田老漁港で毎日仕入れられ、ウニやアワビ、ホタテ、ヒラメなどは漁協で提供してもらった生簀にもストックしているためだ。数日しけても問題なく、宿の規模が小さく、個人客で部屋出し中心だから対応できるのです、と支配人。これもまた、地元の食材を徹底して利用する表れに思える。
つくりはサワラにチダイ、ヒラマサに、スイという地元の魚も並んだ。どれも身が厚くチダイはシャッキリ、サワラとヒラマサはもったりと脂が甘い。もう一品、田老で揚がったエゾアワビは季節外れながら、ゴリゴリの歯ごたえの後に貝の旨みが華やかに咲く。南部潜りで漁獲されたものを漁協から買ったもので、通常は11〜12月の口開け期間以外は禁漁でとらないのだとか。
そしてメインは、蒸しアワビとワカメのウニソース焼き。加熱して磯旨さが増強されたエゾアワビに、潮の香りが豊かなワカメ、ミルキーに濃く甘いウニと、田老を代表する高級ローカル魚介の揃い踏み的な一皿だ。「天然のワカメは、田老が日本一です。その最高のを巻いて焼いたのですから」と、支配人の推しもパワフルなこと。ちなみに地物のウニは、市場で牛乳瓶入りのが、8個相当の身が入りオススメだそう。殻付きは新鮮そうに見えるが、ウニは剥かないと当たり外れが分からないという。
岩泉の地酒「八重桜」は、名水処の酒だけにスッと素直で魚介に合うこと。こうした食べる支援には、地物をしっかり食べさせてくれる拠点が欠かせない。海と漁港が見下ろせる高台の宿が、田老の漁師たち、そして町の支援につながる旗印になればいいな、と、復興談義に花も咲いて冷酒瓶がどんどん空になる、田老の一夜である。
水門だけ残して決壊した第2防波堤の海寄りには、漁師が作業に使うプレハブの小屋が建ち並ぶ。ワカメ漁やウニ漁に使われているのだが、浜に近いため移転対象なのらしい。かさ上げした国道4号線から海側は、民家などは建てられない決まりで、それでも浜に近いところで働きたい、海が見えるところに住みたいのが、漁師の気持ちなのらしい。
同じ防波堤の内側に建っていたたろう観光ホテルは、4階まで津波を受け壁を破壊されてしまった。震災の遺産として、その姿を残すべく保全中で、営業棟は景勝の三王岩に近い高台に「渚亭たろう庵」として移転した。景色を見てもらうためにここに建てました、と支配人が称するだけに、13室の客室はどれも展望の素晴らしいこと。復興著しい田老の市街や、田老漁港と太平洋を見下ろしつつ、部屋付きの露天ジャグジーに浸っていると、被災地であることを一時忘れてしまうような。
景色はもちろんのこと「宿として地元を利用する」との話の通り、料理も地元の食材にできるだけこだわっている。アワビの肝とコノワタの突き出しに始まり、酢の物は山田のホタテ、宮古のホヤに水タコ、ホヤ、そしてサケの氷頭(軟骨)にマンボウのコワダ(腸)といった珍しい部位も。マツモは地元田老産で、キウイのソースが個性ある魚介たちをうまくまとめている。
続く地物煮魚のクリームソースは、田老でとれたサクラマスで、淡水のマスらしく身の味が淡く軽いこと。ソースのベースは、サケのアラを2時間以上煮込んで作っているそうで、食材を無駄にしない心意気が伝わってくる。突き出しのアワビのキモも、高級魚介である吉浜アワビから外したものだそうである。
支配人いわく、この宿には冷凍庫を置かないことをモットーとしているそう。入札権を持っているので直下の田老漁港で毎日仕入れられ、ウニやアワビ、ホタテ、ヒラメなどは漁協で提供してもらった生簀にもストックしているためだ。数日しけても問題なく、宿の規模が小さく、個人客で部屋出し中心だから対応できるのです、と支配人。これもまた、地元の食材を徹底して利用する表れに思える。
つくりはサワラにチダイ、ヒラマサに、スイという地元の魚も並んだ。どれも身が厚くチダイはシャッキリ、サワラとヒラマサはもったりと脂が甘い。もう一品、田老で揚がったエゾアワビは季節外れながら、ゴリゴリの歯ごたえの後に貝の旨みが華やかに咲く。南部潜りで漁獲されたものを漁協から買ったもので、通常は11〜12月の口開け期間以外は禁漁でとらないのだとか。
そしてメインは、蒸しアワビとワカメのウニソース焼き。加熱して磯旨さが増強されたエゾアワビに、潮の香りが豊かなワカメ、ミルキーに濃く甘いウニと、田老を代表する高級ローカル魚介の揃い踏み的な一皿だ。「天然のワカメは、田老が日本一です。その最高のを巻いて焼いたのですから」と、支配人の推しもパワフルなこと。ちなみに地物のウニは、市場で牛乳瓶入りのが、8個相当の身が入りオススメだそう。殻付きは新鮮そうに見えるが、ウニは剥かないと当たり外れが分からないという。
岩泉の地酒「八重桜」は、名水処の酒だけにスッと素直で魚介に合うこと。こうした食べる支援には、地物をしっかり食べさせてくれる拠点が欠かせない。海と漁港が見下ろせる高台の宿が、田老の漁師たち、そして町の支援につながる旗印になればいいな、と、復興談義に花も咲いて冷酒瓶がどんどん空になる、田老の一夜である。