御強(おこわ)とは、狭義には赤飯、広義にはもち米を用いて炊いた飯全般を指す言葉ですね。
近頃ではあまり耳にしなくなりましたが、十年以上前に亡くなった大正生まれの祖母はたいそうおこわが好きで、必ずおこわという言葉を使い、赤飯なんて言いませんでした。
東京の東端で生まれ育った私は、自分が江戸っ子などと思われるのが恥ずかしくてたまらず、他人から「とびおさんは江戸っ子だね」なんて言われると、必ず、「いいえ、江戸っ子ではありません。江戸川っ子です」、なんて訂正せずにはいられない恥ずかしがりです。
ところが祖母は嫁ぎ先こそ都区内ではたいへんな田舎の江戸川区ですが、育ちはまさに江戸。
爽やかな江戸弁と気風の良さが見事でした。
最近知ったのですが、おこわという言葉、何ももち米を炊いた飯のことばかりを指すわけでは無かったそうです。
駄洒落みたいですが、大怖(おおこわ)を表す意味もあり、世の中の泥棒、殺人、そういった犯罪者を指す言葉でもあったそうです。
四、五両の おこわを息子 ゆふべ食い
と言う川柳が、「誹風柳多留」に残っています。
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誹風柳多留 (新潮日本古典集成) |
呉陵軒 可有,宮田 正信 | |
新潮社 |
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現代語訳 江戸川柳を味わう―誹風柳多留全巻の名句鑑賞 |
東井 淳 | |
葉文館出版 |
意味はと言うと、息子が美人局の被害にあって四、五両取られた、という洒落にならないお話です。
江戸時代、おこわに犯罪の意味を持たせた中でも、最も多かったのは美人局だったそうです。
いつの時代も男というのは女がからむと途端に馬鹿になるようで、まして現代でも女から男に言い寄るなんてことは稀ですから、江戸時代に素人女が男に声をかけるなんてことはあるはずもなく、そのあり得ないことが起こるからちょっと奥手の若い男なんかはあっという間に女の策略に嵌ってしまったのでしょうねぇ。
男、特に経験が無くて性欲ばかりが強い若い男の馬鹿さ加減を嗤った川柳と思われます。
美人局の示談金が、概ね四、五両だったそうです。
安い金ではありませんね。
しかしまぁ、何事も経験。
女性に比べて男というものは、若い時分に馬鹿な経験を積んでおかないと、中年になってとち狂うということがあります。
そうなっては手に負えません。
でも若いうちのおバカな行動は、若さゆえに許され、笑って済まされるものです。
少年の成長を描いた名作「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」でも、主人公の少年、イングマルの間抜けな行為がこれでもかと描かれます。
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それは滑稽でもあり、センチメンタルでもあり。
特に私のような、すっかり世間知に冒された中年オヤジには、まばゆいばかりの輝きのように感じられます。
かく言う私も、今となって若かりし頃を思い起こせば、汗顔の至りです。
ただしその代り、馬鹿をやり尽したおかげで思い残しがなく、今さら馬鹿はできません。
男というもの、馬鹿こそ最良の成長の糧のように思えます。
それは所謂、優等生でも同じこと。
このブログを愛読くださる皆様には信じられないことでしょうが、私自身、学校では優等生で通っていたのです。
ただし学校を離れるとやりたい放題やっていた、食えないガキだったことも確かです。
もっとも成長したと気付いた頃には、もう先が短いのだからやれませんねぇ。
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