ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

コンビニ人間

2017年02月21日 | 文学

  昨夜は芥川賞受賞作「コンビニ人間」を読みました。
 単行本で150ページほどの中篇ですので、1時間ほどで読めました。

コンビニ人間
村田 沙耶香
文藝春秋

 36歳、独身、コンビニ店員歴18年、恋愛経験なし、したがって処女の女の物語です。

 この女、子供の頃から少しずれています。
 公園で小鳥が死んでいるのを見つけて、他の子供たちは泣きながらお墓を作ろう、と言うのに対し、真面目に、お父さん、焼き鳥が好きだから焼いて食べようなんて主張して、母親にたしめられて「せっかく死んでいるのに」なんてつぶやいてみたり。

 小学校で男の子同士が喧嘩を始めて、止めなければ、と思って、スコップで思いっきり男の子をぶん殴ったり。

 普通と違う、一風変わった子、と評価されてしまいます。

 しかし、コンビニ店員である間は、マニュアルどおりに、しかも明るく元気にしていれば、コンビニ店員の普通」、でいられて、社会から受け入れられている、と感じることができるのです。

 夢の中でもレジを打つほど、コンビニ店員であることにどっぷりとはまっています。

 しかし親や友人は、なぜいい年をして結婚も就職もしないのか、と彼女を責めるのです。

 コンビニに30代半ばの、やはり独身で普通に収まらない男が新人として働き始めたことで、彼女の生活に変化が訪れ、コンビニを辞めて就職しようとしますが、自分はコンビニ人間以外の何者でもないのだと気づき、またコンビニ店員に戻る、というお話。

 あっさり描かれていますが、これはわが国近代文学の伝統に沿った内容であろうと思います。
 太宰治の「人間失格」など、普通じゃない自分と、世間との葛藤に悩む、という。

人間失格 (角川文庫)
梅 佳代
KADOKAWA/角川書店

 耽美主義の大家、谷崎潤一郎でさえ、「異端者の悲しみ」という小説を残しています。

現代日本の文学 (7)少年 神童 異端者の悲しみ 母を恋うる記 吉野葛 蘆刈 春琴抄 少将滋幹の母 夢の浮橋
足立 巻一
学研

 古典文学ではあまり掘り下げられることの無い、社会と個人との葛藤を描いた物語です。

 普通の生き方とか、当たり前の幸せとか、小市民的幸福とか、そういうものと、そうでない生き方の線引きはどこでなされるのでしょうね。

 歌手とか芸能人とか、あまりにぶっ飛んでいる場合、普通ではないことが当たり前とされますが、そういう世界で成功する人はほんの一握りで、圧倒的多数の凡人は、学校を出たら就職し、適当な年齢になったら結婚して子供をもうけるのが当たり前とされています。

 そこからはみ出すものは、不気味な存在であるかのような扱いを受ける始末。

 だからこそ、この小説はどこか不気味なのかもしれません。
 

 この小説は、世間的な普通と、そういう生き方ができない存在とが、共存することの難しさを感じさせてくれます。

 しかし、晩婚化・未婚化の現代、もしかしたら普通の概念も変わってくるかもしれませんね。


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