ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

微笑む人

2016年12月03日 | 文学

 今朝、自室のエアコンが壊れたので、修理を頼みました。
 室外機が動いていないとのこと。
 もう10年近く経つエアコンで、修理するより買い換えたほうが安いと言われ、仕方なく家電量販店でエアコンを購入しました。
 設置工事は12月11日の日曜日。
 それまでは、自室は使わず、リビングで過ごそうと思っています。

 お昼はきのことベーコンのぺペロンチーノを食し、珈琲などいただいてから自宅マンションに戻り、小説を読みました。

 貫井徳郎の「微笑む人」を一気に読みました。

 殺人劇ですから、ミステリということになるのでしょうが、不思議な構成の作品でした。

 小説家の「私」が事件を取材し、ノン・フィクションにまとめるまでの過程を描く、という形になっています。

 物語の冒頭、妻子を殺した犯人が逮捕され、犯人の真実を探るため、犯人の過去を、小学生時代にいたるまで追っていく、というお話。

 いきなり、犯人は不可解な動機を口にし、マスコミが大騒ぎ。

 本が増えて家が手狭になったため、妻子を殺せば本がきれいに整理できるから殺した、と言うのです。

 そんな動機あり得ますか。

 しかも犯人は常に微笑みを絶やさず、温厚で、誰からも慕われる誠実な人物として描かれます。

 不可解な動機と犯人の人柄が、読む者を混乱させます。

 様々な人物が登場し、「私」のインタビューに応える形で、犯人の人物像が多角的に描かれます。

 しかし、動機の謎は解けません。

 ラストちかく、
 
 最終的に理解できる結末が必ずあるのなんて、フィクションの中だけですよ。身近な人が考えていることだって、本当のことなんて分からないじゃないですか。

 と、犯人に関係する女に語らせます。

 これは読者を混乱に陥れる、一種の読者への挑発と言えるでしょう。

 確かに、凶悪犯人の気持ちに限らず、親子兄弟、配偶者や恋人などの親しい間柄であっても、他人の気持ちを100%理解することなど不可能です。
 いや、50%も無理かもしれません。

 怖ろしい真実を突きつけてくれるものです。

 そして物語は、理解できる結末を提示することなく、微笑む人=犯人の真実を解明できずに終わるのです。

 しかもこれは小説です。

 フィクションの中だけは、分かりやすい結末があるのではなかったのですか。

 後味の悪いミステリです。
 しかしそれだけに、考えさせられる、高い文学性を持ったミステリと言えるでしょう。

微笑む人 (実業之日本社文庫)
貫井 徳郎
実業之日本社


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