ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

新作テーマは、妄想の効用!?

2017-02-16 09:44:24 | 演劇

 人間だれしも嘘をつく。その場逃れの苦し紛れだったり、たわいもない座興だったり、時には用意周到狙いを定めての策術だったり。トランプさんなんか、嘘で大統領になった。メディアや敵対勢力を嘘つきと罵り、自らの政策も嘘でがっちり補強して、一気に今の地位に駆け上がった。嘘で固めちゃいけない場所が嘘のコンクリートでこってり塗り固められ、その土台の上で多くの人たちが白黒構わず喚きちらし、こぶしを振り上げている。嫌な世の中になったもんだ。

 とは言え、僕も名だたる嘘つきだ。台本という嘘八百を吐き散らしている。今回もまた、新しい嘘をつく。そのテーマは、妄想!頭や心に根付いてしまった嘘っぱちを題材に取り上げる。

 現実にしっかり足を踏んまえて生きろ!ってよく言われる。たしかに、現実世界を無視して暮らしなんて成り立たない。なにかを成し遂げたけりゃ、否応なく現実と組み合わにゃならない。でも、いつもいつも世の実際、己が真実と向き合っているってのも、辛いことにゃ違いない。いや、誰だって、多かれ少なかれ、嘘や妄想の一つや二つ抱え込んでいるもんじゃないか。オタクって連中なんか、妄想世界に浸り込んで生き辛き世を漕ぎ渡っているわけだが、それは彼らだけの特技・特権ってわけじゃない。妄想が人を支える、妄想こそがお役立ち、そんな人間の心の裏側を覗いてみようってのが、次なる新作の狙いどころだ。

 妄想にもいろいろあって、オタクの幻想みたいな確信犯的なものから、当人はまったく妄想と気づいていない精神障害の領域のものまで、様々ある。統合失調症のように疑心暗鬼に苛まれ体調の不調まで引き起こすものもあれば、妄想症と言って、虚妄の物語をひたすら信じてはいるがそれ以外の局面ではまったく常人と変わらないなんて人もいる。

 どうやって人は嘘を紡ぎそれを大切に育てるのだろう。そこんところが、台本のキモの一つになるわけで、これは、もしかしたら、頭脳の中に嘘を信じる働きがあるからじゃないか?と考え始めていたら、お見事ドンピシャ、こんな本に出合った。

 脳の認知機能ってやつは、複雑な外界からの刺激を受けると、なんとかつじつまの合うように、認識してしまうって事実を脳科学の様々な新実験の成果を踏まえて教えてくれる。例えば、腹話術。実際に話をしているのは横にいる腹話術師だが、見る者は人形がしゃべっていると理解してしまう。だから、この芸の面白さが成り立つ。人形の口の開閉という視覚刺激と術師の声という聴覚刺激が同期してしまう、これが脳のつじつま合わせだ。他にも、壁の裏側にある手と内側に置いたゴム製の疑似手に同じ刺激を加え続けると、なんとそのゴムの手を実際の手だ認知してしまう、なんて衝撃の実験もある。

 要するにこうだ。簡単に認識できない複雑な外界刺激に遭遇すると、脳はなんとか真っ当な答えを求めて、嘘を築き上げて、つじつまをう合わせてしまうってことなのだ。ということは、現実が受け入れがたい状況にあった時、人は嘘・妄想の中に逃げ込むってこともありってことなんじゃないか。

 で、この本のもう一つの主張。そんな不合理な脳のつじつま合わせ機能、実は、とても役に立つ働きだってこと。そう、嘘が有用だってこと。そう、ここが今回書こうとしている台本の中心テーマなんだよ。

 さて、強力な理論的助っ人も得られたし、いよいよ、書き始めるとするか。タイトルは・・・・・

 

 

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