スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

竜王戦&第三部諸感情の定義一二・一三

2007-12-13 20:58:32 | 将棋
 竜王戦には中部での対局に勝った棋士がシリーズを制するというジンクスがあります。今期は第二局が伊勢神宮での対局で,これは佐藤康光二冠の大逆転勝ち。しかしこの第六局も伊豆での対局ですので,中部対局に違いはありません。また今日はLogical Spaceさんのライブ中継もありましたのでそちらもどうぞ。
 昨日は28手しか指されず,渡辺明竜王の29手目の封じ手は☗4九玉。ここから後手は3二の金を繰り出し金銀交換。やや損かもしれませんが,金が遊ぶよりはましとみてのものと思います(渡辺竜王はこの金を使わせない構想だったようですので,作戦としてはうまかったといえそうです)。互いにその金銀を自陣に打ち合う渋い展開になりました。
 50手目,後手は☖4五歩とここから仕掛けました。対して後手は55手目に☗9四歩と端から。62手目は☖6三銀引としておくのも有力だったようですが☖4五銀と攻め合いに。さらに76手目は☖2四角と引くのも有力だったよですが☖4八成桂。このあたりは佐藤二冠の棋風通りといった感じですが,直後の☖3六桂はまずかったようです。☗4六歩なら勝ちとみてのものだったのでしょうが,普通に☗同歩と取られてしまいました。ここで長考したようなので,見落としであったと思われます。☖3六桂では先に☖2八金だったのでしょうが,そもそも踏み込んだのがまずかった可能性もありそうです。
 次の☖2八角打からはおそらく修正手順。87手目に次の☗7五角の詰めろ飛車取りをみせられて☗9八飛と逃げられましたが,ここは☖5二飛と詰めろで逃げて凌ぎました。
 92手目の☖8八銀不成の局面から観戦。ここは後手は歩しかないので先手がいいのだろうと思ったのですが,この局面で先手は残していた34分(29分でした)の時間をすべて使って☗9八飛と逃げました。これだけ考え部分的には一手損する手を指したわけですから,ここは後手の方がよかったのかもしれません(ここでは香を取らずに☖5四飛と浮く方がよかったようです)。
 97手目に☗6一角と打って反撃に。後手は駒不足で凌ぐほかないので,ここは☖7四飛とする手だったかもしれません(BSの久保八段の解説では☖7一玉でした。ただこれも先手が勝つようです。また,所司七段は☖8五桂を有力手としてあげています)。実戦は☖7七馬から銀を一枚使わせて角を取り(佐藤二冠はここでは形勢を悲観していたようです),盤の後手からみて左に逃げ越そうとしましたが,と金を作られた上に金駒も剥がされながら攻められ,はっきりと苦しくした感じです(101手目の☗7五桂でもう先手が優勢とのことです)。115手目の☗5六桂に対して☖2二馬と逃げた局面では先手の勝勢と思われます。この後も将棋は続きましたが大勢には影響せず,後手の投了となりました。
 いきなり1分将棋になりどうなることかと思われましたが,渡辺竜王が何とか勝ちきり4勝2敗で竜王防衛。これで4連覇ですが,歴史が浅いとはいえ竜王の4連覇は史上初のこととなります。今シリーズは,内容では圧倒していた感がありますが,それでも2敗を喫し,この将棋も楽に勝ったという感じではありませんので,傍目よりも苦しかったかもしれません。手について何かあればいつものようにあとで()の中に。

 心情の動揺animi fluctuatioに関係する話は,一旦はこれで終りにします。ただ,相反する感情のうち,Xに対する希望spesとXに対する不安(恐怖)metusには,ほかの感情affectusにはないある特別な関係があるとされていますので,このことだけみておくことにします。そこでまず,これらふたつの感情のスピノザによる定義Definitioをみておきましょう。
 希望は第三部諸感情の定義一二です。
 「希望とは我々がその結果について幾分疑っている未来あるいは過去の物の観念から生ずる不確かな喜びである」。
 不安は次の第三部諸感情の定義一三。
 「恐怖とは我々がその結果について幾分疑っている未来あるいは過去の物の観念から生ずる不確かな悲しみである」。
 岩波文庫版の『エチカ』の恐怖については,ここでは不安ということばで代用するのはすでに説明した通りです。
 希望という感情と不安という感情が,反対感情であるということについては,これらの定義により一目瞭然であると思います。これらふたつの感情は,まったく同じものに関係する,喜びlaetitiaと悲しみtristitiaであるからです。また,僕たちは一般に,希望と不安を,未来に関連するような感情と考えているかもしれませんが,これらの感情はこの定義にもあるように,過去と関係する場合もあります。実際,過去のある経験に関連付けて,希望を感じたり不安を抱いたりすることは,あることではないかと思います。重要なのはそれが不確かであるということであって,このふたつの感情は,人間にとって確実であること,あるいは人間が確実であると思い込んでいることには関係しません。そしてこの特徴が,これらふたつの感情に,ある特別の関係をもたらしてくるのです。
コメント
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