昨日は六本木の新国立美術館に「チューリッヒ美術館展」を見に行きました。
チューリッヒは実は20代の時に、いちばん最初に訪れた外国。
美術館も当然行きましたが、まるで記憶はなく、近代のコレクションを集めた良い美術館だったということしか覚えていませんでした。
当然見るのも初めてという作品ばかりでしたが、スイスの美術館ということもあって、スイスの画家以外でもアルプスの光線に合った寒色系をベースにした作品が目立ちました。
目玉は6mあるモネの睡蓮。
最晩年のモネは目を悪くしたこともあって、キャンバスの四隅を塗り残した作品が多く、モノによってはそれが欠点に見えるものもあるのですが、これは圧巻。
見なきゃ、”あっかん”でえ・・・なんて、ウフッ♪
近代の抽象画を予感させる傑作です。
しかし、今回私がいちばん心を動かされたのは、何と嫌いなココシュカでした。
いや、はっきり今でも大嫌いなんですが、ここまで自分のダークサイドを出すかってくらい。これでもか、これでもかと心のがん細胞を自ら切り取って摘出しているかに見えます。
世の中にこれほど醜悪な絵があろうか、でも凄い・・・て驚きですね。
醜い絵を描く画家は世に大勢いますが、そこには磨き上げて人に見せられる工夫をします。たとえばエイリアンのH・R・ギーガーも醜い怪物を描きますけど、あれは一種のイラストで、本物を見ると意外に軽い。自分の情念を吐き出しているのではなく、淡々と仕事をこなしているようです。
ところがココシュカは溜まりに溜まって仕方ない情念をキャンバスにぶつけている。
ここまでやった画家はそうそう見当たるものではありません。
まあ、やっぱり嫌いなんだけど(笑)。
ココシュカは情念を吐き出してスッキリしていたのか、94歳まで生きています。
画家は長生きするの典型ですね。
好きなアーチストで印象に残ったのは絵画でなく、ジャコメッティの彫刻です。
あの細長い人物像で知られるスイスの彫刻家ですね。
実際に実物を見ると、角度によって人物が普通になったり細長くなったり。まるで空間に歪みができているような面白さがあります。
手塚治虫の「火の鳥」に、脳に損傷を負って人間が針金のように見えるという場面がありますが、手塚はジャコメッティの彫刻を見て考えたのかも。
だって、そっくりだもの。
チューリッヒ美術館展は12月15日まで。
地味ですが、地味に強い宝富士関のように見所満載です。
(今日は勝てよ、稀勢の里!)
それから本日18:30より弦楽四重奏による演奏会があります。
モーツァルトの弦楽四重奏と日本人作曲家のプログラム。
リハーサルを聞く幸運に恵まれましたが、美術館とクラシックは相性が良く、何とも素晴らしい雰囲気でした。