小暮満寿雄 Art Blog

ダジャレbotと間違われますが、本職は赤坂在住の画家です。作品の他お相撲、食やポリティカルな話も多し。右翼ではありません

タンドリーチキンで一杯はいかが?

2014-11-08 10:39:47 | Weblog

中華街のおみやげ「うずらピータン」。アヒルの卵よりかなりくせのあるお味です。

 

本日も引き続き「医食同源・かれーな印度カレーを召し上かれ」の12話目をUP。
今回はタンドリーチキンの話ですが、インド料理の代表に思われているタンドリーチキンもナンなどのタンドール料理は北インドの一部・・・それもパキスタンと東西に分かれているパンジャブ地方の食べ物。

南インドでは「タンドリーチキン」も「ナン」も知らない人がいるのです。

2006年と8年も前の記事ですが、そんなに古くなっていませんので、どうぞお楽しみくださいませ。

ビーツを使ったボルシチ風薬膳カレー。鶏卵と一緒に「うずらピータン」を添えてみました。

 

 

かれーな印度カレーを召し上かれー12
タンドリーチキンで一杯はいかが?
掲載日:2006年01月25日

 まいど、まいど、イダテンのゲンさんです!

 いやあ、お客さんがた。昨年から続いていた大雪のせいで、商品の配送が遅れてしまい、誠に申しわけねえこって・・・ようやく、大雪もピークを過ぎたところで、これから少しづつ元に戻っていくと思うんで、今しばらくお待ちくだせえ。今回の遅配に関しては、状況をよーく調べたのち、対応策を含めてご報告させていただきますんで、何卒ご堪忍いただければ有難えってなもんで・・・。

そんな大雪がようやくおさまってきたと思ったら、どこかのIT(だと思われていた)グループの不祥事で、市場がえらい騒ぎになってやがる。

こちとら地道にモノを売ってきた人間からすると、とんだとばっちりで腹立だしい限りだが、腰を据えて今まで通りの商売をするしかねえって感じだよ。

ともかくもお客さまがたには、体に気をつけていただき、今年の商戦に良い結果を勝ち取られますよう願うばかりさね。あっしも出来る限り、良い食材を安い値段でご提供するんで、今後ともよろしくお願いいたしやすよ!

タンドリーチキンは宮廷料理だった?

さーて、今回の「かれーな印度カレーを召し上かれー」は、ご好評をいただいたインド料理レシピ編の第2弾として、タンドリーチキンを取り上げてみよう。

カレーと同様、インド料理の代表のように思われているタンドリーチキンだが、実はこの食い物――インド料理であると同時にパキスタン料理でもあるんだ。

なに、ゲンさん。パキスタン料理なんてはじめて聞くけど、そんなモン本当にあるのかって?

へっへっへ。何を言ってんだよ、お客さん。みなさんが行かれるインド料理の専門店の中には、パキスタン人の経営者が少なからずいるんだよ。つまり、お客さんがたは知らず知らずのうちにパキスタン料理とやらを口にしているってワケさね。

いやいや、パキスタン料理ってえのは正確じゃねえな。パキスタンって国は、宗教上の違いからインドから分離した国(※1)なもんで、その食文化は北インドに近い。だから北インド料理と呼んだ方が正しいだろう。

北インド料理のルーツは、イスラム文化圏の影響を色濃く受けた16世紀ムガール帝国の宮廷料理と、もとから北インドにあった食文化が合体したものと言われている。

羊肉や鶏肉を中心とした肉料理はイスラムの食文化だし、土窯を使って食材を焼き上げる技法は、もとからインドにあったものだ。

タンドリーチキンは、そんな北インド――パンジャブ州からパキスタンにかけた地域で生まれた料理だ。おそらくは宮廷料理として、タージマハルを建てたあのシャー・ジャハーン帝も召し上がったのかもしれないなあ。

※1 インドの人口の8割がヒンドゥー教徒なのに対し、パキスタンの97%はイスラム教徒である。

タンドリーチキンで一杯はいかが?

タンドリーチキンは、文字通りタンドールと呼ばれる土窯で焼き上げる。タンドールは大抵のインド料理屋に置いてあり、どこでもガラス越しに見ることができるから、きっとみなさんもご存じだろう。口が狭く、内部が深い壺型になっていて、炭火を熱源にする窯だ。

ピッツァの窯などと同様、造りが大掛かりなもんで、本場のパンジャブ地方でも家庭料理ではなく専門店で食べる料理となっている。

焼き鳥でもうなぎでもピッツァでもそうだが、高温の炭火で焼いた食べ物というのは、独特の香ばしさがつく。タンドリーチキンやナン、シークカバブなどは、そのタンドリー独特の香りが魅力なんだ。

え? うちの居酒屋でもタンドリーチキンをお客さまにお出ししたいって? タンドールの取り付けは無理だけど、炭火ならどうにか熾せるから、ゲンさん何とかならないかって?

そうさなあ。完全に専門店と同じ味・・・と言うワケにはいかないが、酒の肴としていただく場合は、別の工夫しだいじゃ十分美味しく食べられるかもしれないよ。

ここいらで、ちょっくらタンドリーチキンのレシピをお見せしよう。前回と同様、エビ太郎の作者先生にわかりやすく絵を入れてもらったので、参考にしておくれ。

焼き魚とか焼き鳥と同じ要領で火を入れると、けっこうイケるはずだ。あっし自身も家庭にあるグリル台で焼いてみたが、ビールにもワインにも合う味に仕上がった。焼き鳥の台では試してないが、たぶん相性は良いはずだ。ちょっくら変わった居酒屋メニューができるかもしれないから、ぜひ一度試しておくんなせえ。

ナンはインダス文明がルーツだって?

タンドールの本場・パンジャブ地方というのは、インドだけではなくパキスタンにまたがった地域だ。インド側にもパキスタン側にも、シーク教徒と呼ばれるターバンを巻いた人たちが数多く住んでいる場所として知られている。

彼らは外交官や海外で働くビジネスマンなど、目立つ仕事につく人が多いことから(※2)、とかく外国からは、インド人=ターバンと思われがちだが、実際のシーク教徒の数はインド全体の人口のわずか2%に過ぎない。エア・インディアのマスコット人形もそうだけど、存在感があるんだな。

数が少ないわりに勢力が大きい点は、ムンバイのパールスィー教徒によく似ているが、シークは食の禁忌がないためか、外国でのレストラン経営の乗り出す人が多い。日本のインド料理店の大半が北インドの料理だというのも、きっとそのことが関係しているんだろう。

タンドリーチキンをはじめとして、日本でインド料理の定番と思われているナンやサモサ、シーク・カバブ、羊肉や鶏肉を中心としたカレーの類は、パンジャブ地方やデリー周辺の北インド――それも高級店で食される料理と考えて良いだろう。

ところで余談ながら、パキスタンってえところは、インダス文明の発祥地だ。教科書に出てくるモヘンジョダロ、ハラッパの遺跡も、実はインドではなくパキスタンの領内にある。パキスタンの領内は、今ではすっかりイスラム化してしまったが、実はインド古代文明のもとになった場所で、ブッダの登場はそのずっと後になるって話さね。

この遺跡ではナンの原型と見られる、小麦のパンを焼いた跡が出土されている。パキスタンからトルコにかけて、イスラム文化圏ではナンやピタパンなどのように、もっちり炭火で焼いたパンが見られるけど、そのルーツはインダス文明まで遡るのかもしれないよ。

さーて、時間がきやがった。これから赤坂はタージのランチバイキングにでも出かけて、タンドリーチキンをイヤというほど食べて来るかな。

それじゃ、お客さん! 次回をお楽しみに!

※2 現在、インドのシン首相もシーク教徒で、しかもパキスタン側のパンジャブ地方出身として知られている。

かれーな印度カレーを召し上かれー
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