漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

フライデーあるいは太平洋の冥界

2008年08月21日 | 読書録

「フライデーあるいは太平洋の冥界 」
ミシェル・トゥルニエ著 榊原 晃三訳
岩波書店刊

を読む。
 巻末には、ジル・ドゥルーズによる解説が併録されているが、そちらは読んでいない。

 タイトルからすぐに分かるように「ロビンソン・クルーソーもの」であるが、二匹目のドジョウを狙った作品ではなく、おおざっぱに言えば、「オリジナルのロビンソン・クルーソーを、現代文学的に語りなおした作品」である。
 やはりタイトルから分かるように、原作ではさほど重要視されなかったフライデーに大きく焦点を当てているのだが、「フライデーの側から見たロビンソンの物語」といった単純なものではない。著者の筆致は、最後までフライデーの側に立つことはない。視点は常にロビンソンの側にあり、フライデーという存在を反射鏡のようにして、常に自分自身を見詰め続けるのだから。
 また、この作品ではほぼ原作をなぞっていながら、最後で大きな転換が行われる。これについては、色々な意見が出ていることだろう。