「フライデーあるいは太平洋の冥界 」
ミシェル・トゥルニエ著 榊原 晃三訳
岩波書店刊
を読む。
巻末には、ジル・ドゥルーズによる解説が併録されているが、そちらは読んでいない。
タイトルからすぐに分かるように「ロビンソン・クルーソーもの」であるが、二匹目のドジョウを狙った作品ではなく、おおざっぱに言えば、「オリジナルのロビンソン・クルーソーを、現代文学的に語りなおした作品」である。
やはりタイトルから分かるように、原作ではさほど重要視されなかったフライデーに大きく焦点を当てているのだが、「フライデーの側から見たロビンソンの物語」といった単純なものではない。著者の筆致は、最後までフライデーの側に立つことはない。視点は常にロビンソンの側にあり、フライデーという存在を反射鏡のようにして、常に自分自身を見詰め続けるのだから。
また、この作品ではほぼ原作をなぞっていながら、最後で大きな転換が行われる。これについては、色々な意見が出ていることだろう。