漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

ウィーランド

2007年04月20日 | 読書録

 昨日から、風邪と偏頭痛でまともにものを考えられないでいるが、ちょっとだけ落ち着いたので、先日読んだ本のことを少し。

「ウィーランド」 チャールズ・ブロックデン・ブラウン著 志村正雄訳
世界幻想文学大系3 国書刊行会刊

を読む。

 「アメリカ小説の父」とされるブラウンは、1771年、フィラデルフィア生まれ。この「ウィーランド」などの四作品でホーソーンやポーなどに影響を与えたことから、その称号を与えられているらしいが、一説には、エドガー・アラン・ポーはこの作品から、推理小説という分野を考え出したのではないかとも言われているらしい。
 この作品は、ヨーロッパのゴシック小説をアメリカに持ち込んだものということだが、印象はいくらか違う。この作品の背景が、アメリカの原野だというのが、その理由だろう。読みながら、僕はポール・オースターの「ムーンパレス」を少し思い出した。
 オースターを思い出したのは、その初期作品「幽霊たち」で登場人物の名前を全て色の名前に統一してコンテンポラリーな雰囲気を出していたが、あの中で「そもそもの始めにはブラウンがいる」という部分があり、ブラウンという名前をそもそもの始めとしたのは、もしかしたらこのC.B.ブラウンのことが頭のどこかにあったのかもしれないと思った、そのせいなのかもしれない。

 この「ウィーランド」は、最後が余りに唐突だけれど、導入部もいいし、雰囲気の盛り上げ方も上手い、なかなか面白い小説だった。