さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

防御の「品質維持」が問われる 和氣慎吾、強打グスマン「封殺」なるか

2016-07-18 11:10:39 | 関西ボクシング



ということで、今週の大阪を皮切りに、三ヶ月連続のダブル世界戦が行われます。
前座にも日本、東洋のタイトルマッチがあり、和氣慎吾の世界戦まで組まれるということで、
ひさびさに井岡ジム興行に足を運ぶ予定です。
二階席の隅っこから眺める、という感じになりますが、一応生観戦です。


個人的なお目当ては、野中悠樹の試合もそうですが、やはり和氣慎吾ですね。
彼の初の世界戦が大阪で開催とは、想像すらしたことがなかったですが、
世の中どんなことでも起こるものです。
いろいろ事情もありましょうが、日頃関東で和氣を応援している方々からすれば、
やはり不都合なお話ではありましょう。地元岡山からの方々にとっては幸いかもですが。

もう少し早くプレビューめいたことを書こうと思い、ジョナサン・グスマンの動画は
二試合ほど見ていたんですが、今頃になってしまいました。


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まず動画紹介。昨年10月10日、ダニー・アキノ戦。アキノは17勝(10KO)2敗。
黒のベルトライン、ゴールドのトランクスがグスマン。
母国カナダ国旗の緑、白、赤の三色トランクスがアキノ。





序盤からグスマンのパワーが目につく。ジャブは少なめながら右が伸び、返しの左フック。
3回、左の返しで倒し、右からの連打で二度目。
中盤以降も反撃を試みるアキノを迎え撃つ形で強打を見せる。
9回、右を打ち下ろし、追撃でアキノ倒れ、ストップ。


もう一試合、今年4月29日、メキシコのダニエル・ロサス戦。
ロサスは20勝(12KO)3敗1分。
IBFの「2位決定戦」。




序盤から、左右共に打ち抜きの効いた強打で優勢。
5回終了間際に左フックで倒す。8回も攻勢、最後にロサスが倒れたところでゴング。
この回終了でTKO。


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21勝21KOのレコードもなるほど、と見て思わせるパンチ力の持ち主です。
しかし、全体的に見て、攻防共に完璧に「出来た」一級品かというと、まだわかりません。
映像が意外に少ないこともありますが、未知数な部分あり、です。


パンチは左右ともに強そう。打ち抜きの効いた打ち方。
この二試合では左フックがダウンを奪う決め手になっている。右からの返しが得意そう。

構えは左を下げ加減。ジャブで作っていくという風ではなく「来る」相手を迎え撃つ型か。
体力温存のために、こういうスタイルを選択しているような印象。

リズムはあまり感じない。強振する傾向あり、と言える部類に見える。
もし長身で速い相手に足を使われたらどうか。サンプル不足なので何とも言えず。

距離はやや遠目、スタンス広めの設定。打ち合って力が出るのは中間距離。
パワーがあり、けっこう正確に当てる。好機を得た時の詰めが厳しく、思い切りの良い判断をする。

反面、ダウンを奪ったあと、慌てて出ずに見て、相手を泳がせているような場面もあり。
後退しながら右カウンターを決めたり、見た目の印象よりも冷静だったりする。

あと、ジャブの後に相手が来たときや、クリンチ間際に肘を使って相手を止める。
良く言えば厳しい対応が身についている、となりますが、悪く言えばダーティー。
これは試合前のルールミーティングなどで、和氣陣営は厳しく言っておいた方がいいかも。


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ということで、これに和氣慎吾がどう対するか、です。

和氣慎吾の特徴をざっと言うと、長身、サウスポー、身体半分右に出し、相手の身体を
自分の左が当たる最短距離に置いたときの左強打に威力を秘める、というところです。

この距離と位置関係において、いわば「スイート・スポット」とでも呼べる空間に
相手が来たところを打つ形で、和氣は抜群の強さを発揮します。
左もストレートのみならず、左アッパーをいきなり決めて倒した試合もあります。
好機を得れば、相手が世界のトップ選手であろうとも、クリーンKOを実現する力があると思います。


その反面、構えや位置取りが、相手を引き寄せ過ぎではないかと見える場面もあります。
構えの前に、相手のパンチの「通り道」がある。
或いは、良いパンチを打てる立ち位置を相手に許し過ぎている。
そんな印象を持つ場面が、過去の試合では見受けられました。
日本や東洋の相手ならまだしも、これが世界戦となったら...という印象は拭いきれません。


初の世界戦、強打のグスマンに対し、作戦としては当然、足を使うことになるのだと思います。
右リードで牽制し、右回り基本、足で外し、ダックで右に出て、時折左ストレートを伸ばして、
遠ざかりつつ左周りで巻き戻し、また右へ...という繰り返しを上手く続けて、
グスマンの強打を空転させ、徐々にダメージも与えうつ...という流れが理想的でしょう。

しかし、スタイル的にはこの選択が正しいとしても、グスマンの強打と馬力が、
易々とそれを許してくれるわけもなさそうに思えます。
これまでの和氣の闘いぶりが、上記したような「引き寄せ」傾向にあったことを、不安に思いもします。

和氣が勝つには、丁寧に防御して、慎重に立ち上がりを闘うことが前提でしょう。
疲れもせず、ダメージも無い、元気な序盤のうちからこの相手と打ち合うことになってしまったら、
十中八九打ち負けて、悪くすれば倒されるでしょう。

長身、リーチ、大柄なサウスポーであるという自分の利点を生かし、防御の質を落とさずに維持して、
グスマンの強打を封殺する展開を作ることが、勝利への道だと思います。
その流れさえ掴めれば、充分勝機はあるし、鮮やかな形での勝利も期待していいと思うのですが。


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とまあ、若干堅苦しく書きましたが、共に強打という強みを持つ、日本とドミニカの上位対決です。
ファンとして見れば、純粋に楽しみです。
結果は正直、読みにくいです。共に不安、未知数な部分もあります。
しかし、この日のメイン(というか、単に「いちばん最後の試合」ですかね)のようなカードよりも、
よほどわくわくした気持ちで迎えられる試合です。

和氣慎吾、ジョナサン・グスマン、両者の健闘をまずは祈ります。
そして、内容と結末が、これぞボクシング!と思える、爽快なものであってほしい、と。


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2 コメント

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Unknown (neo)
2016-07-20 11:43:56
動画ありがとうございます。
グスマンについて、当方も同様の感想を持ちました。特に、強打の割に待ちに比重を置き、やや遠目の距離からカウンター出来る部分などは、スタミナの弱点を技術でカバーしている印象で、楽な相手では無さそうに思いました。
和気選手についても同感で、特に相手の距離で手が下がり、しかもその時間帯が結構長いと思いますので、そこをどう辻褄を合わせてくるのか、楽しみにしています。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2016-07-21 16:22:52
>neoさん

試合見終えてですが、別記事にも書いたとおり、和氣の「引き寄せ」傾向が出て、そこにグスマンが踏み込んできたという展開に見えました。2回のバッティングによる急展開がなければ多少違った可能性はありますが、たぶんあればなくても外し切れなかっただろうな、と。正直いって、和氣の闘い方自体には少しがっかり感もありました。割と漫然と、今まで通りの感覚でこの試合を戦おうという風だったのかな、という。それで通じなかった内容と結果を受けてから、やっとあれこれ考え出すのであれば、傍目の勝手で言えば、遅いし甘い、という風になってしまいますね。強敵相手に闘ったこと自体はまず、称えたい気持ちもありますが。

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