さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

若く新しき者、必勝の宿命を果たす ジェシー・ロドリゲス、エストラーダを7回KO!

2024-07-01 00:05:44 | 海外ボクシング



ということで当然昨日はDAZNの生中継に釘付けでありました。
メインの時間はえらく遅くて、ちょっと驚きましたが...。


スーパーフライ級、事実上の頂点を争奪する世界タイトルマッチながら、王者はブランク明けのファン・フランシスコ・エストラーダ。
挑むは若き昇竜、ジェシー・バム・ロドリゲス。
若さ、時の勢い、いずれもロドリゲスにあり、ということは、前提としてわかっていたことではありました。


初回、場内囂々たる「ガジョ」コール。観衆の声援はエストラーダに向けられている。
両者、前の手リードで探り合い、外し合い...だったが、徐々にサウスポー、ロドリゲスの右リードが当たり出す。
エストラーダ、左ダブル。ロドリゲス、次の左を外しワンツー。左がインサイドから決まる。エストラーダ、早々に少し効いた?
ロドリゲス、左ダイレクトも決める。エストラーダは右ストレート伸ばし、左フック迎え撃ち。

ポイント迷うが、ロドリゲスの左の効果を取る。
初回から実に濃密な攻防。しかし、ロドリゲスはまだ正対する構えのみで、サイドへ出る動きはあまりない。


2回、ロドリゲスの右リードが支配。合間に右サイドへ出る動きも徐々に。左アッパーが正面から、側面から飛ぶ。
エストラーダ、後手に回り続けたこの三分間で、左目周辺にアザが出来る。クリアにロドリゲスの回。
3回、ロドリゲス右ボディ、次の攻撃で右アッパー上。エストラーダも左アッパーを打っていたが、その上を通るパンチ。
エストラーダ、一瞬両膝が伸び、その後コーナーへ後退して追撃される。なんとか凌ぐが、ロドリゲスの右リード上下が決まる。
エストラーダ反撃も右を外される。ロドリゲスの回。

4回、ローブローを打たれたとアピールするエストラーダ、間を取りたがる。劣勢の証。
ひと息つけたからか、エストラーダの右に力感が出てくる。サウスポーの右腕の下を通す左アッパーも出る。
しかしロドリゲス、程なく右リードで「セット」し直す。右ジャブから軽く左アッパー、ワンツーで追い打ち。
軽めだが速く、正確なコンビネーション。これがまともに決まって、エストラーダ、ダウン。立ち上がるがまた攻められ、スリップも。ロドリゲス10-8。


エストラーダのダウンシーンは、連打に目がついていかずに打たれた、というもの。
まさに「新」と「旧」の運命が交錯した、残酷な瞬間でした。
やはり、新しき者が旧き者を打ち破る、そういう試合になったか...と。しかし話は「すんなり」とはいきませんでした。


5回、ロドリゲスがガードを絞って正面から接近。足を止め加減にして、左アッパー、右フックの連打。
エストラーダもこの間合い、位置関係なら、打たないわけにいかず。左右ボディアッパー、左フックなどで応戦。

しかしこれも、ロドリゲスの仕掛けだったか。エストラーダ、手を引き出されている。
ロドリゲス、打ち合い続けるかと見せて、左サイドへ出て間合いを空け、ワンツーでエストラーダをロープへ飛ばす。
さらに左アッパー、右フック決めて攻勢。エストラーダを止め、4連打を決めて、またロープに追い、打ちまくる。ロドリゲスの回。

ここで、もう充分ではないのか、と思い始めました。現実的に、ここで棄権はしないだろうが、もしそうしても、納得いく結末であろうと。


ところが6回、開始早々でした。ロドリゲスが右リードを突いていく。右足を相手の左足の内側へ踏み込んで突き放す型。
ところが若干、間合いが近すぎた。エストラーダが、対サウスポーのセオリーどおり、左足を外側へ置いて、そのままの踏み込みで打つ右ストレートが決まり、ロドリゲスがダウン。

まさかの展開、というか、本当に驚きました。これが王者の意地というものなのか。
ついさっきまで、良いパンチを打ち返せる間合いではなく、その隙間もなかったように見えたのに。
まさに、晴れた空から雷が、という感じでした。

ロドリゲス立ち、エストラーダが攻める。慌てて打ちまくるのでなく、右ストレートをボディへ伸ばす。狙いを持った反撃。
しかしロドリゲス、ダメージは浅かったようで、すぐに右ジャブ、回り込んで左アッパー。次は正面から同じパンチ。
左ショートストレートのリターンパンチ。左ロング、右ボディ。
さらにロープ際で左ボディストレート、右アッパー、左ショートから右フック返しで締める、凄いコンビネーション。なおも左右ボディ、ワンツー。

終わってみればダウン以外はワンサイド、ロドリゲスの攻勢。10-9に「戻す」べき内容。


7回、さすがにもう、時間の問題と見えたが、ロドリゲスの左右アッパーが上下に決まり、左クロスが入っても、エストラーダは耐える。
これは上では倒れないと見たか、ラウンド終盤、いったん上にパンチを集めたロドリゲスが、エストラーダの反撃に合わせて左ボディをカウンター気味に打ち込む。
これが二度続けてヒットし、二発目が悪い間合いで入ったか、エストラーダが崩れ落ち、悶絶。衝撃的なフィニッシュによるKOでした。



試合全般を通じて見えたものは、「新」王者ジェシー・ロドリゲスの圧倒的な技量力量でした。

両ガードを高く掲げて、その位置から無理なくどんなパンチでも打てる。
防御に安定感があり、その上で右リードを多用して、良い間合いを抑え、リズムに乗って攻め、守る。
その基本の上に、得意の「サイド攻撃」を濫用せずとも、相手を着実に攻略していく。まさに理想のボクサーファイター、その完成形。
ダウンを喫したことは不覚だったのでしょうが、その前後を見るに、試合の大勢には何の影響もありませんでした。

DAZNの実況が、マイケル・カルバハルらの名を挙げて、彼らの系譜に連なる軽量級の王者が生まれたと言っていましたが、まさしく。
ジェシー・ロドリゲスは、米大陸の軽量級最大のスターとして、その地位を確立しました。



そして敗れたファン・フランシスコ・エストラーダ。一時代を画した名王者とて、時の流れには勝てず、徐々に厳しい面も見えていた数試合、そしてブランクを経ての一戦で、一度だけ王者の意地、誇りを形にして見せはしたものの、内容的には完敗、という形で「王位」を譲ることになりました。

現状、彼の心身が、最強の敵と闘う構えであり得たのかどうか、という点について、論議があって不思議ではない。
きついようですが、率直に、そう見えた試合内容でした。
初回早々から、ロドリゲスの右リードを端緒に、ワンツーや左アッパーを避ける際、目線が外れかけていたし、ダウンシーンについても上記の通り。
そこには往時の、数々の激戦を闘い抜いてきた王者が備えていたはずのものが、いくつか欠落しているように見えました。

試合後には笑顔で勝者を称える一方、再戦条項を行使すると宣言していたりと、闘志自体は変わらぬまま、のようです。
しかし、誰の思いも同じでしょうが、本当に再戦があるとして、その闘志のみで、望みを叶えられるかどうかというと...もちろん、実際に闘えば、どんなことでも起こり得るのがボクシングではあるのでしょうが。



しかし、今後どのような試合が組まれようと組まれまいと、確かなこともあります。

陽が東から昇り、西へと沈むように、新しき者は旧き者を倒さねばならない。
新旧の王者が激突した、宿命の一戦...ボクシングの歴史において数多ある「王位継承」の儀式たりうるタイトルマッチに、ジェシー・ロドリゲスは、必勝の宿命を背負って臨み、見事に勝利を収めました。
その事実は、王者ジェシー・ロドリゲスの偉大、その証として、試合を見た我々の心に焼き付いた、ということです。

そして、もし再戦があろうと、或いは日本にも居るタイトルホルダーとの対戦があろうと、その試合は、まず王者の偉大さを軸に話が回ります。
相手がどう、ライバルが居るかどうか、試合として面白いと思えるものになるかどうか...そんな、ある意味では俗な話を必要としない、「単体」を見るだけで価値のある、真の王者。
井上尚弥がそうであるように、ジェシー・ロドリゲスもまた、そういう領域にいる一人になった。そういう試合だった、と思います。


コメント (4)
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