さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

予想外の展開で、世界を驚かす殊勲の勝利 西田凌佑、9戦目でロドリゲス下す!

2024-05-05 00:06:02 | 関西ボクシング



昨日は西と東で試合があり、共にライブで見られるという一日でした。
しかしなんといってもメインと見るべきは、IBFバンタム級タイトルマッチの王座交代劇。
単に結果のみならず、試合内容にも驚きの多い一戦でした。


王者エマヌエル・ロドリゲスは、過去の対サウスポー戦同様、右ストレートをリードに使う。
フェイント入れて、拳を放り出すような打ち方ですが、このリードで相手を捉えてリズムに乗り、後続打に繋げるパターン。

ところが挑戦者、西田凌佑はサウスポースタンスの前足、右足の位置取りが巧く、ロドリゲスの踏み込む左足を邪魔する位置をキープ。
この前足による「制限」が効いて、初回、2回と、遠い間合いを強いられたロドリゲスは右を打つたび、前にのめる。
そして西田の右リード、長短様々に打ち分ける左、ときに右フック返しに繋がる連打も出て、西田がポイント連取の好スタート。


西田は調子自体良さそうな上に、ロドリゲスのキーパンチである右ストレートのリード、カウンターを共に封じる策を練ってきた、と見える。
これは良いぞと思ったが、3回からはロドリゲスの前足、左足の踏み込みが、少しずつ左側へとずれていく。
この左斜め前への踏み込みで、右ストレートが当たる間合いを探し、角度もつくようになり、西田がこのパンチを受け始める。


ロドリゲス、さすがに対応が早い。
西田、この良い感じをせめて4回終わるまで続けたかったなぁ...さてこの先どうなるか、と思っていた4回からは、もう試合前に思い描いたあれこれが、全部無に帰すような展開になっていきました。


西田がワンツーを上下に散らし、近い距離で打ち合う中、ボディ攻撃が決まる。
ロドリゲスが少し効いたかと見えたのち、西田の左ボディブローがまともに入って、なんとロドリゲスがダウン。
かなりダメージ甚大で、立ったが足が止まっている。西田追撃し、ロドリゲスそこから打ち返す。激しい打撃戦に突入。

4回は西田が攻めきったが、5回、ロドリゲスは苦境にあっても強さを見せる。ボディ打たれても堪え、反撃の左右フックには迫力がある。
6回も西田のボディ攻撃は良いが、ロドリゲスの右リードも再三決まる。
西田はボディ打ちたいのか、接近戦で行くと決めたのか、もう距離や間合いどうという部分では、序盤の優位性を捨てている。

7回、ロドリゲスはさらに闘志をみなぎらせて打ち合う。右アッパー決める。しかし西田も左アッパーでお返し。
ロドリゲス、ワンツーで西田を一歩下がらせる。さらに激しく打ち合うが、西田のボディがまた効果を上げる。
8回も激しいラリー。西田、ボディから上へ返す連打が決まる。ロドリゲス、小さい左フックのカウンターが出るが、もらった西田が構わず左ボディを伸ばす。

9回、西田が打ち合いを挑み、ボディ決める。ロドリゲス攻められてスリップ。見るからにきつくなっている。足元が乱れる場面も。
10回、西田は左ショート決める。ロドリゲス粘るが、動きが止まりかけ、もう棄権するんではないか、と一瞬思ったほど。
西田さらに出るが、ちょっと下ばかり狙いすぎ。上下に攻撃を散らし、ときに上に強打、或いは「鋭打」が欲しい、と見ていて少し歯痒い。
しかしこちらも精一杯なのだろう、という感じ。

11回、激しい消耗戦。ロドリゲスがリターンのコンビでヒットを取る。ややロドリゲス。
最終回、互いに疲れとダメージ抱えながら打ち合い、かなわず休み合い、また打ち合う。ラストにヒットをとった西田の回か?


採点は4回にダウンがひとつあったので、13ポイントを取り合う形。
8対5が二者、一人は10対3で、西田が3-0判定勝ち。
さうぽん採点は、西西ロ西、ロロロ西、西西ロ西、8対5で、合計は二者の採点と同じでした。



試合としては、わずか9戦目の西田凌佑が、世界のボクシングファンを驚かせる殊勲の星を挙げた、というものでした。
しかし、結果だけで無く、その試合内容、経過もまた、驚くべきものだったと思います。

見ていて、序盤のうちはまだ、両者の過去の試合を見てきて、こういうことが起こるだろう、と思う範囲に収まる攻防でした。
しかし4回、西田のボディ攻撃とダウンシーン、そしてその後の西田が見せた、ショートの距離中心でのヒット・アンド・カバーによる試合展開は驚きでした。

大きく動いて外す、見てわかりやすいヒット・アンド・ラン戦法ではなく、もっと動きの範囲を狭めたもので、当てて外す展開で競り勝てたら。
それが、試合前に想像した西田凌佑の勝機でしたが、実際に起こったことは、足で距離を作る防御でなく、ガード、ブロックと上体の動きで防ぎ、接近して打ち勝つという展開でした。

もちろん、ロドリゲスがボディ攻撃によるダウンで被ったダメージは甚大なもので、それがロドリゲスの戦力を大きく削いだから、こういうことも出来たのでしょう。
しかし、ダメージを堪えて打ち返すロドリゲスのパンチには、まだ充分に威力も感じました。
それに対し、変に動いて外しにかかるのでなく、ボディ攻撃の手応えを信じて、打ち合って勝つというのは、かなりの胆力と、技術体力の充実なくば、不可能だったでしょう。
上記したとおり、下狙いが見え見えなところがあり、もっと上へのパンチを強く、鋭く打っておいて、また下へ、そしてまた上へ、とやれんものか、これだけ優勢なのに...と思わなくもなかったですが、考えてみればデビュー9戦目で、相手があのロドリゲスなのですから、さすがに欲張りすぎかもしれません。


その辺はまた今後の課題でしょうが...試合後のインタビューなどを聞いても、大阪にもこんなに上品で謙虚な「ええ子」で、なおかつ強いボクサーがいるんですよ、という良いアピールになるようなもので(笑)関西ボクシングのイメージアップに一役買ってくれそうな、新チャンピオンの誕生でした。
その闘いぶり、勝ち方は、こちらの想像を上回るものでもありました。脱帽し、拍手したいと思います。いや、お見事でした!




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6 コメント

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Unknown (海の猫)
2024-05-05 08:41:39
いや驚きました。西田は最高の仕上がりと出来で、相手陣営とファンの想定を超えてきましたね!

ロドリゲスが自身のボクシングをさせてもらえなかったですね。序盤、思った以上に西田の前の手、前の足が効果的でロドリゲスが入れない。この時点で両者の精神的疲労度に差が出来たと思います。その後、ロドリゲスの右が当たり出したときはやはりロドリゲス、と思いましたが、接近戦を用意し、ボディ狙いと戦略もバッチリ。武市トレーナーは、誰の試合か忘れましたが過去にも印象的な良い仕事をしていたかと思います。
ロドリゲスにとって西田は相性が良い、苦手なのはタフな根性タイプと思ってましたが、西田は心身ともにタフでした。西田も相当ダメージあったと思うのですが、それ以上に「いける、通じてる」という気持ちが大きかったのでしょうね。

自分は予想も応援もロドリゲスでした。中谷との統一戦も見たかったですし、、、。西田が統一戦に進む可能性はありますかね。Abema が離さなければ、中谷は A か O ですが、対中谷で考えると、モロニーより武居の方が可能性ありそうな。モロニー-武居は全く分からないのですよね。どちらの圧勝も接戦も展開としては想像できる。武居のボクサーとしての経験不足、未知数な部分がプラスに働く可能性もあり。
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Unknown (モノクマ)
2024-05-05 09:41:27
西田すごかったですね
4回のボディも驚きましたし、中間距離でおされ始めるとすぐに接近戦へ切り替え、それを遂行できたのも驚きました
西田の過去の試合では接近するとクリンチで逃げることが多かったので、ボディのダメージを踏まえても、接近戦への対応と耐久力は見事でした

これで、一番難しそうだったIBFが日本人となったことで、WBOも日本人になれば、一部ファンに期待されているAmazonがお金を出してトーナメントなんてこともあるのでしょうかね笑
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Unknown (R45ファン)
2024-05-05 10:56:35
本当予想外でしたね。私の陳腐な考えでは西田くんが最初に良いのを当ててリード保ち、長い距離で何とか凌ぎ続けて僅差逃げ切りしか勝ちパターン無いかなと見てましたが…
どうやらプロ三戦目で大森さん、次で比嘉くんクリアに攻略した彼の力をまだまだわかってなかったのかもしれません。
思いのほかタフで気も強く、そして武市さんの作戦を実行し切れる実直さ。なかなかですね。
ただ今回はロドリゲスがあまり接近戦や撃ち合いするタイプじゃなく、きれいなスタイルだからやり切れましたが、もっとタフでガチャガチャに来るタイプだとどうか…などありますが、その時はまた新しい西田くん見せてくれそうですね。
本当に見た目は普通の好青年。全然強そうに見えないですが、バンタム級トーナメントやり出したら相手にとってやりづらいタイプとして案外勝ち残りそうですね。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2024-05-05 18:09:17
>海の猫さん

ロドリゲス側を驚かせた、それが最大の勝因ですね。というか、試合中に相手見て驚いてたら、たいがいその試合は負けですから、それが出来た西田を称えるしかありませんね。
過去の試合で、アウトボクシングのイメージがあったようですが、比嘉大吾戦ひとつとっても、けっこう比嘉に入られていて、そのときの対応が力強いものだったから勝てたわけで。今回はさらに攻撃に力を割いて、それを完遂しました。
それがなるほど、今回の試合に関しては、ロドリゲスの苦手だった、ということかもしれませんね。意外性と相性、この両面でもっての攻略だったと。
今後の路線、どうなりますかね。ABEMA、亀田ラインから外れて欲しいと思うのは、誰もが思うところでしょうが。堤聖也とクリスチャン・メディナ・ヒメネス(西田に敗れた選手ですね)でIBF指名挑戦者決定戦という話がある?らしいですが、これがどのプロモーションから出た話かが、まずは問題ですね。
中谷はそもそも、バンタムに長く留まるかどうかが、ちょっとわからないですね。変な話、他の誰と当てても勝ってしまいそうだし、何なら上に行って貰って、その頃には井上尚弥戦がビッグマッチと目される機運が醸成されている...そんな「運び」になる可能性も...ありますかね。もし明日武居が勝とうが負けようが、とにかく四団体統一戦を、Amazonのビッグイベントにして、これから売っていってもらいたいと、まずはそれを願っていますが。


>モノクマさん

接近戦で足止めて、ヒット・アンド・カバーをやっているのには、我が目を疑いましたね。どなたも程度の差こそあれ似た感想みたいです。もっとはぐらかす、立ち回る、という部分が見えないと、勝ち目はないと思い込んでいました。かなり打たれてもいましたが、怯まず打ち合っていましたね。
Amazonのボクシング配信、井上尚弥の試合については、Leminoとの間で、Leminoが2~3試合やって、また一試合Amazonでやる、という感じの合意があるそうです。今回はその順番だったんでは、という話を、さる筋から聞きました。
つまり、今後も井上を独占することは出来ないらしく、そうなれば他に目玉が要ります。そこで、那須川天心世界挑戦までの間を繋ぐためにも、寺地拳四朗4団体統一と共に、バンタム級でも...という流れになってくれたら良いんですが。実際どうなるかは、まったくわかりませんけども...。


>R45ファンさん

仰る通りで、そういう勝ち筋しかなかろうし、それに辿り着けたら殊勲だと思っていました。実際はそれ以上のことが起こりましたが。
過去の試合について見誤っていた、しっかり見られてなかった、というのも同様の感想を持ちました。まあ、応援する側の我々がそうなのだから、対戦相手が、仮にタイ人相手の平板な試合の映像だけ渡されて、それしか見てなかった、ということがあったとしたら、なおのこと、だったでしょうね(実際どうかは知りませんが、それも勝負の内です)。
武市トレーナーは抜群のセンスを持つホープでしたが、八重樫東に阻まれ日本チャンピオンに手が届きませんでした。しかしトレーナーとして、世界の王座を掴んだのですから、拍手ですね。
西田の今後については、もちろん全てにおいてさらなる成長が求められますが、ボディ効いて足が止まってなお、強い連打で迫って来たロドリゲス相手にあれだけやれたんだから、まずは大したものです。「がちゃがちゃ」タイプについては、比嘉大吾戦というヤマをクリアしていますから、ある程度までは大丈夫でしょう。そのさらに上の話というか、離れてもくっついても巧い、井上拓真と対してどうか、というのを、見てみたい気持ちがありますね。すぐにとは行かないでしょうが。
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Unknown (月庵)
2024-05-05 22:41:18
最初の流れでこれなら勝ち負けになる、と見た4Rにダウン奪った時には思わずおおってなりました。その後ロドリゲスがノーモーションの右で主導権を奪い返しにかかった時はその右に西田が反応出来ておらず、そのままずるずる失点とダメージを積み重ねる可能性が頭をよぎりましたが、すぐに距離潰してインファイトを選択するなど、陣営の作戦が完璧でしたね。大先輩の名城信男と同じく、アマで傑出した成績を収めたわけでもない、プロキャリアも浅い選手が大一番でこれだけの引き出しを見せて勝ち切るのは、非アマエリートにとってはよき見本となりましょう。素晴らしい試合でした。

1日経って、陣営のおおよその考えは出てきましたね。割と言葉を濁さずはっきり思うところを言うのは逆に好感ではあります。陣営コメントを見るまで、亀田は無い袖を振ってどうにか日本に王者を連れてくる『投資』をした以上簡単に他媒体での統一戦には乗らないだろうと思っていましたが、そもそも六島側にその考え自体がない(一応石田が井上拓真に勝てば……とは言いましたが)とはっきり言い切られた以上はそれはそうと割り切るしかないですね。減量苦ならなおのことです。噂の堤の試合が決定戦になるのかはなんともですが。ロドリゲス撃破という手土産があれば階級上げてもチャンスは巡ってくるでしょうし、減量が限界だという訴えを無視した結果の惨劇は既に前例があるわけなので、悔いの残らない選択をして欲しいと思うだけです。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2024-05-06 06:41:09
>月庵さん

ボディで倒すというのは、あまりにも予想外で、びっくりしましたね。それでもロドリゲスの粘り、右ダイレクトやコンビから左フックなど、怖い攻撃がありました。倒した後も手強い敵に変わりなく、そこでも競り勝ったんですから見事ですね。
キャリアは確かに名城信男を思わせますね。名城信男はデビュー戦から直に見ていて、ああこれがいわゆる「プロ向き」というやつかあ、というくらい、最初からわかりやすく強かったので、イメージは違っていたんですが、なるほど似ているところもありますね。
当該記事、スポニチのものが一番詳しかったですかね。まあ身も蓋もない「ナニワ」全開というのか。昭和末期と変わらん情緒ですね。結局選手の栄達よりも自分のことが優先、それが当然、という「だけ」です。階級を上げるというのは残念ながら、然るべき決断でもあろうし、本当にそうするなら支持しますが、しかし結局は選手に無理させて自分の権益を取るんやないのか、という疑いも消えませんね。東京行くの嫌、というのはいただけずとも、選手の体調優先というなら仕方ない、と、素直に取ればそうなりますが。はてさて。
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