さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

もはや「具志堅以上」その真価まざまざと 寺地拳四朗、ブトラーを9回に仕留める

2023-09-20 08:58:16 | 関東ボクシング


ということで月曜祝日、友人宅でAmazonPrimeVideoのライブ配信を楽しく見ました。
感想は色々ありますが、とりあえず名実ともに(こんなことをわざわざ書くのも面倒ですが)メインとして相応しかった寺地拳四朗vsヘッキー・ブトラー戦から、簡単に感想です。


初回は印象としては静かなものだなあ、というところか。拳四朗の左ジャブが軽快に出ている。
2回は双方、多少ギア上げて、踏み込みに行った感。ブトラーは手数を増やすが、拳四朗のワンツーがより深く入り、ブトラーの顔が上がる。
3回、攻防の密度が上がっていく。互いに右ボディ。拳四朗右をヒット。ブトラー返すがまた拳四朗の右が当たる。
4回、ブトラーは左右に動いて、姿勢も色々変えて打ってくる。しかし拳四朗の右カウンター、正確。
簡単に倒せるとも思えないが、ペース自体は拳四朗。ボディも時折打てている。


ブトラーは往時ほど忙しなく動くではないが、その分無駄の無い印象。
多種多様な攻防パターンを惜しみなく出し、果敢でもあるところは同じ。
久し振りの世界戦のチャンスに、全身全霊を込めて闘っていることが伝わる。


5回、アクシデント発生。バッティングで拳四朗が右瞼を切る。解説の村田諒太が言うように、まともに血が目に入る位置では無かった?が、不測の事態ではある。
個々の選手に関係ない話、といえばそれまでながら、イベント全体の流れから行っても、負傷判定になるとちょっと辛いかなあ、などと思っていました。

ところがドクターチェック終えて再開後、拳四朗が明らかにギアを上げる。
左ボディの好打でブトラーを下がらせ、上はガードを叩き、また左ボディ、右もボディへ、小さい振りで突き刺す。
あっという間に、ここまでとはまた一段違う意味の劣勢に陥ったブトラー、右サイドに出て、死角から狙う右クロスという得意技で対抗。

しかし拳四朗、左フックのダブル、トリプルと左右ショートアッパーを織り込んで相手を崩し、合間に右ショート強打を狙う、こちらも得意の7、8連打コンビネーションを繰り出す。さらにワンツー決めて攻勢。
しかしブトラー、ボディ返して攻める。拳四朗のヒットにめげず、前に出てラウンドを終える。


試合の流れは完全に拳四朗のもの。普通の相手だったら拳四朗が6、7回あたりにフィニッシュしていただろうと思いますが、前回のアンソニー・オラスクアガ同様...多少、趣が違いますが、ブトラーここから奮戦。


6回、要所のクリーンヒットは明らかに拳四朗が良いですが、ブトラーは打たれてもすぐ左右ボディに右ロングと返し、抵抗。
拳四朗が右アッパー上、右ストレート下という凄いコンビを決めても、まだ出てくる。
しかしさすがに厳しく、打たれて足取りが乱れる。拳四朗ワンツーをヒットする。

7回、8回と同様の構図。そして徐々に、ブトラーの対応、反応が反撃よりも回避へと比重が移っていく。
サイドに出る姿勢も、遠回りながら見にくい位置から打つので良く当たる右クロスを打つためのものではなくなり、半ば横向きの「逃げ」になっていく。

9回、拳四朗、左右の速さ遅さを組み替えたワンツーを数度。打たれたブトラーがロープへ後退。
防御姿勢も取れず、拳四朗が左右の連打。最後は右がヒットしたところでレフェリーが止めました。



試合前から拳四朗有利の声が多く、実際の試合もその通りだったと言えばそれまでかもしれません。
しかし、この試合は実況が言うとおり「新旧世界統一王者同士」の闘いであり、それに相応しい濃密な内容のものでした。

それはまず、ヘッキー・ブトラーの変わらぬ果敢な闘いぶり、その健闘によって証されたと言って良いでしょう。
見た目は「道では会いたくない」風貌ですが(失礼)その姿は、まさにファイターの誠実、闘いへの献身を見たくば彼を見よ、と言いうる、感動的なものでした。


そしてこちらも変わらず、世界チャンピオン、王者、という言葉に相応しい、揺るがぬ巧さ、強さ、そして確かさを魅せてくれた寺地拳四朗。
5回、結果として出血が目に入ってしまって大わらわ、ということにはならず幸いでしたが、負傷判定の可能性も生まれたバッティングによるカットのあと、当然セコンドとコミュニケーションを取ったわけでもなく、自身の決断として、攻撃シフトに切り換えて、持てる攻めのオプションを全部繰り出し、ブトラーを打ちまくった姿は、こちらも感動的なものでした。

これが王者の強さであり、果断さであり、確かさである。その揺るぎない心技体こそ、真に世界の頂点に立つ者の真実である。
世界チャンピオンを名乗るボクサーは数多居ますが、我々ボクシングファンが、相応しいと思えるものを見せてくれる者ばかり、とは残念ながら言えません。
しかし寺地拳四朗は、今回もまた、それを我々にしかと見せてくれたように思います。お見事でした。改めて拍手です。



これでAmazonPrimeVideo配信の興行で、三度メインイベンターを務めた寺地拳四朗は、全ての試合で、百点満点に近い、堂々たる闘いを見せてくれていると思います。
世界タイトルマッチの出場は14試合を数え、13勝1敗。対戦相手は格下の名前は僅かで、大半が名実を兼ね備えた相手ばかりです。
少なくとも日本のボクシング史上、108ポンド級最強のボクサーであり、その内容や実績でもって、あの具志堅用高を上回る名チャンピオンであると言えるでしょう。


試合後、本人は4団体統一を希望するコメントをしていました。
報道ではフライ級転向も、選択肢としてある、という内容のものもありました。
しかし、4団体統一はもうええかな、と...ジョナサン・ゴンサレスやシベナチ・ノンティンガが楽な相手だなんて言いませんが、しかし今の寺地拳四朗からすれば、ちょっと難しいかもしれないがまず勝てる上位挑戦者、という感じでしかないでしょう。
もし彼に危機をもたらす存在があるとすれば、それはフライ級の、しかも階級最強レベルのチャンピオンでしかあり得ないだろう、と思います。

そのような彼の真価が、もっと広く多くに知れ渡り、それに相応しい今後があることを、ファンとしては願うばかり、です。
アンダーは色々ありましたが、終わって見れば寺地拳四朗偉大なり、それがほぼ全て、という興行でありました。



コメント (8)
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