さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

次代のホープ、WBAランカーに勝つ 尾﨑優日、シットヒサクを2回でストップ

2023-09-11 11:50:52 | 関西ボクシング



ということで昨日はTV大阪YouTubeチャンネルのライブ配信を見ておりました。
たまに映像が止まるが一瞬で済み、画質もまずまず。全8試合配信されました。

実況は興行側に阿る昭和テイスト全開でどうにもいただけませんでしたが、まあどこも同じようなものと言えばそうですね。
解説は石田匠。井上拓真挑戦はおそらく来年、とコメントしていました。一試合待つことで王者陣営と合意があるのでしょうか。それとも...。



この日一番の注目は、タノンサック・シムシーの弟で、WBAランカー(今はミニマム級4位)のシットヒサク・シムシーに、4戦3勝(3KO)1分(相手の負傷によるもの、だそうです)のサウスポー、尾﨑優日が挑むチャレンジマッチ。
シットヒサクは川満俊輝に敗れた試合を見ましたが、変に受け身で構えてしまって攻め込まれ、TKO負けを喫したものの、一打のパワーや切れはなかなかのものに見えました。
この選手、きちんと締めてきたら力はあるだろう、尾﨑にとっては、けっこう厳しいチャレンジマッチになるかも、と思っていました。


しかし、尾﨑がスタートから柔軟で軽快。膝が柔らかく、右ジャブが上下に伸びる。
左右に軸をずらす動きから入っていき、ボディの打ち合いでまさり、次は飛びかかるように右フックを上に。
そして細かく刻むステップから踏み込み、ワンツーを二度繰り返して、シットヒサクのガードを破り、早々にダウンを奪う。

立ったシットヒサクに、尾﨑が鋭く追撃。
良く見て右リードを突いていき、右フック(外から)、左アッパー上、前に伸びる右フック(やや内側への軌道)で打ち崩したガードの真ん中へ、さらに右ジャブからクロス気味の左。
まともに決まったところへ、さらに肩越しの左クロスで追い打ち。シットヒサクたまらず、二度目のダウン。

攻撃時のスピード、切れは目にも鮮やか。ジャブを多用しての測定、相手のガードを攻略する「崩し」もしっかり出来ている。
シットヒサクのスロースタートは事実にしても、尾﨑の鮮やかな好スタートに驚かされました。


しかし2回、早々に仕留めるかと見えた流れで、シットヒサクが踏ん張って打ち返す。
接近戦に持ち込み、右ボディからワンツー、左の強打を決めて尾﨑の腰を落とさせる。
ロープ際で雑な判断をして、右を振ろうとしたところをまともに打たれた尾﨑、一転してピンチ、と見えた場面。

だが尾﨑、すぐ立て直す。右リード突いて、上体を沈めて外し、左アッパー、右フックのコンビ。
さらに左ストレート、右フック返しでシットヒサクをぐらつかせ、追撃。左右がヒットしたところでレフェリーが止めました。


2回に打たれた場面は、そこだけじゃなく、間を詰められた前段階も良くなくて、この辺はまだキャリアの浅いボクサーやなあ、と見えました。
当然、そこは反省材料でしょうが、それ以外のところは文句なし。攻撃力はスピード、切れ味抜群で、組み立ての妙も見える。お見事でした。
シットヒサクは前回見たときより少し鈍って見えた面もありましたが、力を出す前に尾﨑が仕留めた、というのも事実だと思います。


尾崎優日、負傷ドローになったというジェローム・バローロ戦は見ていませんが、ライトフライ級でありながら4勝は全部2回までのKO、TKO勝ちというのは、なかなか目覚ましい戦績です。
これまでは相手がどうかな、と思ってもいましたが、まずは一階級下(とはいえ、けっこう大柄でしたが)のWBA4位に勝った、という事実だけで、新人としては充分でしょう。

今後はより上のレベル、国内上位や王者クラスとの対戦へと進んでもらいたいですが、そういうカードが組まれるかどうかは、ちょっとわからないところです。
もちろん事情もありましょうが、自主興行一本槍でキャリアを作っていくレベルの選手ではないだろう、と見ますし、「枠」を越えた大きな舞台での活躍を期待します。




セミファイナルには高山勝成が出ました。再起二戦目、判定勝ちとなりました。
相手のバローロは尾﨑と闘い負傷ドローだったそうですが、けっこう力があり、前に出て連打でペースを抑えようとする高山の出鼻に、鋭い右クロスカウンターを狙い、決める場面あり。
打ち合いになれば分があるのはバローロの方でしたが、高山はならばと左のレバーパンチを決めて、ダメージを与え、さらに攻め込むという「勝負」に出て、僅差で押し切った、という判定になりました。

40歳になってなお、動きの量と質にこだわり、なおかつ思うに任せない展開になりかけたところで、ボディ攻撃にシフトして攻め返すという判断をし、その通りに闘い抜く。
高山勝成の闘い様には、改めて感嘆させられました。
本人は問われれば「いずれ世界を」と言うのでしょうが、同時に「今はひとりのボクサー(に過ぎない)」という言い方もしているようです。
それもまた、彼ならではの凄みやなあ、と思うところです。今後どうとか、限界が見えるとか、傍目が何を言おうと思おうと関係ない「境地」に彼はいるのだなあ、と。



メインは加納陸が、キティデッチ・ヒランスクと対戦。
WBOフライ級1位になり、アジアパシフィック王座を返上して「世界前哨戦」を闘った加納でしたが、大柄なキティデッチを初回と6回にダウンさせたものの、あまりダメージを与えられておらず。
試合全般を通じて、攻撃に威力が欠ける弱味が見えて、キティデッチの闘志を挫けず、逆にやる気を引き出してしまうような展開。
ヒット、攻勢でまさり続けて、クリアな勝利でしたが、肩書きと試合相手のレベル、そして内容が釣り合わない、と言わざるを得ない10ラウンズでした。
普通の試合として見たら、確かに好ファイトとは言えずとも、何も悪いことなどない内容なのですが。



あと、6回にキティデッチが、加納の後頭部を右で打つと、即座に減点1が課されましたが、その後加納がダウンを奪ったあと、一発余計に打ったら、こちらにも即座に減点の処分。
しかも2点減点でした。ダウン後の加撃に加え、その一発がキティサックの後頭部に入ったことから、こういう裁定になったのでしょう。

えらく的確なルール運用やなあ、と逆に驚くほどでした。池原信遂レフェリーの裁定は正しいものでした。
これからも、どのような規模の試合であろうと、対象がどこのどなた様であろうと、この至極当然、真っ当な基準でのルール運用によって、全ての試合が裁かれることを、ファンとして期待したいと思います。




コメント (2)
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