さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

実力差通りの内容も、色々複雑でした 平岡アンディ、強打佐々木をTKO

2021-10-21 10:56:31 | 関東ボクシング




試合自体について、あまり長々と書こうとは思わないですが、一昨日のメイン、それにまつわる雑感です。



佐々木尽の計量失敗、聞けば今回二度目とのことです。
昨今増えている水抜き減量の失敗、という話のようで、いつもの手順で減量を進めたところ、最後の段階で何故か今回だけ、突然落ちなかった、というコメントが陣営から出ていました。
そういうこともあるのだなあ、と思いつつ、その最後に落とす幅が3キロほど、と聞くと、最終段階、計量前日の時点でそれだけオーバーしていることの是非については、色々思ってしまいました。


昨今、国内はもとより、世界戦や国際的な試合において、多くの日本人ボクサーが、2~30年前と比べてかなり良い内容と結果を出しています。
その一因として、技術的な進歩はもちろん、体幹やウェイト、その他体力強化トレーニングの進化と共に、可能な限り体力の低下を避けて、体に負担をかける期間を減らす減量方法の成功もあるのではないか。
だとしたら、その減量方法自体を、一概に否定することも出来ない。何しろその方法を成功させたボクサーが、強豪や強敵相手にパワーで負けず、終盤になってもペースを落とさず健闘すれば、私は日々、それを見て、拍手し、称賛しているわけですから。


ただ、それとは別に、試合を観戦するために、身銭切って暇割いて、それこそ遠方から観戦しに行く、という身には、お目当ての試合に出るボクサーが、計量前日に3キロオーバー、それが落ちない可能性もある、というのは、ちょっと怖い話です。
もし思うように落とせなくても何とかして...という話が出来る範囲に、その数字は収まっていない。
実際、今回の佐々木尽も、結果として4ポンドオーバーという「話にならない」数字を、公式計量で記録することとなりました。

計量への経緯としては、リミット目指して落とそうと努めたが落ちず、体力の限界...それこそ歩くことも出来ないような状態になったがため、水を採って計量会場へ向かい、秤に乗った結果が4ポンドオーバーの数字だったのでは、という見方を聞きました。あくまで推測ですが、佐々木は体力温存を優先して、減量の努力を放棄したわけではない、という見方です。
もっとも、それはそれで、そんな状態の選手を翌日、公式試合のリングに上げていいのか、という問題もありますが。

この辺については、知る限り、実際のところが語られているわけではないですが...いずれにせよ、JBCが数年前に新設したルールどおり、試合当日午後5時に、リミットの8%以内の体重であれは試合は挙行、ということで、佐々木は68.1キロでリングに上がりました。
対する平岡アンディの試合当日体重がどうだったかはわかりませんでした。



試合内容としては、概ね、元々こういう感じだろう、という実力差が出た、と言えるものだった、と思います。

佐々木尽は終始、強気の表情を崩さず、強振して出る。好打されても、自らに気合いを入れるように雄叫びを上げ、打ち返す。
そんなことを意に介さず、ジャブを突いて足で捌き、冷静に自分を見ている平岡アンディに対し、何度か足を止めて手招きするパフォーマンスも。

普通なら、技巧で上回る強敵に対し、怯まず果敢に闘っている、という絵で、その闘いぶりは健闘の部類でもありました。
7回に二度のダウンを喫してもなお、気合いを入れて立ち上がり、その都度強打を振りかざす佐々木の姿は、感動的なものだと言えもしただろう、と。
もしこれが、普通の状況で行われていれば、場内、声援禁止の状態であったとて「沸騰」に近い盛り上がりが、盛大な拍手によって表現されていたはずです。

しかし残念ながら「前提」が違う試合で、場内も試合前から微妙な空気。試合中も、中立的な観客はもとより、双方の応援客も、そこまで盛り上がりきってはいない様子でした。
順番で言えばセミだった栗原慶太、中嶋一輝戦と比べればはっきりしていたと思います。場内の空気がまったく違った。それは会場にいて実感しました。



今回の件は本当に残念で、腹立たしくも思います。
前回の試合から「路線」を敷いて、ファンの多大な注目を集め、ひかりTVのライブ配信第二弾のメインカードとして売り出された好カードでもあった試合が、きつく言えば「台無し」になった。
試合後の平岡のコメントや、試合自体が行われたことでもって、若干救われてもいるのでしょうが、それとは別に、処分は厳正なものであってほしいです。

何しろ、起こったこととしては非常に重大です。個人的には、中止になってもそれはそれで良い、と思っていたくらいです。
別にセミも好カードだったから、というのではななく、そもそもイコールコンディションではない者、前提が違う試合など、強いて見たくもないし、どういう気持ちで見ていいものかわからん、どちらが勝っても負けても、何を思えばいいものか、という気持ちでした。


その上で、もちろん自らの失態故ではありますが、四面楚歌の状況にありながら、弱気を見せず、引け目を隠して闘い終えた佐々木尽は、微妙な表現ですが、よく頑張っていた、と思います。
試合後、相手コーナーに挨拶に行ったとき、何か言葉をかけられて、顔を覆っていましたが、おそらく涙を堪えられなかったのでしょう。
彼に関しては、上記の通り厳しい見解を持つ一方、部分的に感心したところもありました。
試合中の様子や振る舞いで強気を貫いたところも、私としては、殊勝な態度を見せたところで仕方なし、これでいい、と納得しました。



対する平岡アンディについては、体重差のある相手に、ある意味危険な試合でもあったはずが、見ている限りではほとんど危なげがなかった、そのことに感心させられました。

佐々木が強引に出て振り回す強打は、間違って一発でもまともに入れば、それが即、危機につながるものでしたが、基本、足で捌いて距離を取り、ジャブを突いておいて、徐々に4連打をまとめ、相打ちでも正確さでまさっていく。







7回、ロープを背負ったと見えたが、左カウンターでダウンを奪い、追撃でもう一度。10回はアッパーを織り込んだ連打。
11回に仕留める流れでしたが、概ね安定していて、佐々木の挑発にもほぼ乗らず、全部自分の判断で試合を進めていく冷静さが光りました。







全体的に、試合の流れ自体は、佐々木の計量失格がなくともこういうものになるだろう、と思っていたものとほぼ違いませんでした。
それは佐々木がかろうじて、自分の心身を奮い立たせて闘ったこともあったでしょうが、やはり相手の強打をものともしない、平岡の冷静さと技術レベルの高さ故、だったと思います。

ただ、今後について、もう一段上の話をするなら、もうひとつ攻撃の精度、威力を上げるために、多彩さや変化が必要かな、とは思いました。
もっとも、色々歪な試合で、そういう普通の話を求めるべきなのかどうかは、ちょっと迷うところではありますが。
そういう意味でも、やはり色々と、残念な試合でした。




※写真提供は引き続き「ミラーレス機とタブレットと」管理人さんです。




コメント (2)
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