さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

勝利という名の、輝かしくも冷酷な「真実」をその手に 井上尚弥、ノニト・ドネア戦迫る

2019-11-02 02:25:29 | 井上尚弥




さて、言うとる間に11月です。大変です。
ということで来週木曜、7日の井上尚弥、ノニト・ドネア戦について、ちょろっとだけ、事前に書いておこうと思います。
細かい戦力分析とかは、改めてやることもないくらい、両者の闘いぶりは、多くの目に、つぶさに見られてきたものですので、簡単に。
あとは無責任に「思うところ」を。



公開練習の様子、複数見ましたが、試合一週間前の段階で、何もこんなに動きが切れていなくても...というくらい、井上尚弥の速さ、鋭さは、改めて驚異的に映りました。
ワンツーパンチがまるで、ミットを切り裂かんばかりです。







井上が少年時代から仰ぎ見ていた強豪、ノニト・ドネアとの闘いに、どれほどの思いで臨まんとしているのかが、ほんの短い映像だけで、瞬時に伝わってきます。
敵意ではなく、敬意を抱いているからこそ、他の誰でもなく、この手にかけて、かつての王者を仕留めて見せる。
言葉にすれば、そのような意志、決意なのではないか、と。


しかしその反面、アタマは涼しいというか、当然のことながら、ドネアの強打に対しても、冷静に警戒をしています。
さらに前の記事によれば、本人は判定勝ちを視野に、前提に、というコメントをしたようです。
ここ数試合の速戦即決と同様の決着を、安易に求めはしない、と「表明」をしたわけです。

フェザー級でもタイトルホルダーを破り、また敗れた試合でも一度は相手をKO寸前に追い詰めているドネアの「一撃」は、その破壊力において、井上尚弥の耐久力を凌駕するものを秘めています。
その現実が、試合の結果に反映されたとしたら、そのとき、井上尚弥はプロ転向後、初の黒星を喫しているでしょう。


ノニト・ドネアが、今回の試合にどのような戦略をもって臨むのか...安易に想像すれば、やはり左右ともに一打必倒と言える強打を決めるべく、井上にプレッシャーをかけて出る、ということになるのでしょう。

ライアン・バーネット戦のように、正面から圧して上下に強打を散らし、ボディを叩きに来るか。
或いは、捨てパンチを決めて、サイドに回っての攻撃を狙うか。
左リード一本に絞って、力を込めて打ち、井上を止めにかかるか。

パターン自体はいくつかあり得るかもしれませんが、往時のスピード、機動力、カウンターの精度や「合わせ」の敏捷さが、どの程度生きているか...カール・フランプトン戦や、バーネット戦の感じだと、井上相手では苦しいかもしれません。

確かに、フランプトン戦でも終盤、一発好打していますし、バーネット戦では、ボディ攻撃の威力によって?相手を負傷させてもいます。
また、ベテランらしく、さらに他の出方を模索する可能性もあります。

しかし、井上の戦力充実を一旦、脇に置くとしても、そもそもドネアというボクサーは、計算より本能、分別より稚気が勝つタイプの天才型パンチャーであり、ここ最近の試合ぶりも、その流れから逸れたものではありませんでした。

となれば、結局のところ、全ては、一撃の破壊力をもって、井上を打倒するための「手」です。
その機会を創出し、掴み取るために、攻めて出る。
それがドネアの答えなのだと思います。
たった一瞬、強打を決める刹那に辿り着けさえすれば。たった一瞬でいいから。



井上尚弥は、その「打倒」の機会を、ドネアに与えずに闘い終えねばなりません。
ドネアが心中に秘め、左右の拳に込めた思いを、遂げさせないまま、試合を終わらせること。
それが何よりもまず、大事です。

さすれば、若き王者の思いが遂げられ、かつての王者は「打倒」の意志をかなえられることなく、リングを降りることになります。
かつてノニト・ドネアが、多くの相手を従わせてきた、優勝劣敗の掟に、彼もまた、従わされて。

その上で、さらなる期待を言えば、やはり試合の度に、こちらの期待や想像を上回る衝撃的な勝ち方を繰り返してきた井上尚弥の手による「打倒」があってほしい、とも思います。
それもまた、きっと、井上尚弥の思いでもあるはずです。
輝かしくも冷酷、残忍な若き勝者として、井上尚弥がその思いを遂げる姿を見たい。それが正直な気持ちです。


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「ボクシングにドラマはないんですわ」とは、かの渡辺二郎の言です。
ならばボクシングとは何か。

現実、なのだと思います。詩的に言えば「真実」なのだと。

リングの上で、ふたつの意志が、闘志が激突し、瞬きする間もない刹那に、優勝劣敗が切り分けられる。
酷薄無情の冷厳さと共に、遂げられた思いと、かなわぬままに終わった思い、その両方を、目の当たりにする。

つまりはそれが、ボクシングを見ることです。


これから、多くを成し、遂げていくであろう若き王者と、かつて同様だった王者とが、11月7日という「今日」に、世界の眼前で、どちらが「勝利」という名の、冷酷な真実を手にするのか。

その闘いが、いよいよ迫って来ました。
震えるような思いで、当日までを過ごすことになりそうです。


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ということで、一曲。
Kyosuke Himuro feat. Gerard Way “Safe and Sound” です。







コメント (12)
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