Casa de lápiz:鉛筆庵

鉛筆庵に住む鍵盤奏者が日々の生活の徒然・音楽などを綴ります。

読み返す本の話

2012-02-10 00:13:31 | 
去年の12月のピアノ2台のホーム・コンサートで演奏後、いらして下さったお客様と楽しくお話しする機会に恵まれた折、たまたま隣に座られた方とミラノの話から須賀敦子さんの話になり、学校も同じでらしたので色々な場面で須賀さんとお会いになっていたという夢のような、素晴らしいお話を伺うことが出来たのだった。
それ以来、彼女の本を広げるのが更に楽しみになっている。というか、本の中だけでなく、こう言ったら語弊があるけれども敢えていえば作品がより近くに思えるのだ。
そして特に最近感ずるのは透徹した悲しみ。作品の底にずうっとあり流れている浄化されて透明になった、でも決して消えることのない悲しみ。こんなに悲しい話だったかしらん、と自分自身を訝るようなこちんと固まった悲しみに触れて胸を突かれるのだ。今まではもっと違った読み方をし、違う面に注目していたように思う。それは例えば純粋に文章の美しさであったり構成の巧さであったり、ふっとしたユーモアとともにある孤独であったり、でも今ほどの悲しみを感じてはいなかったと思う。「トリエステの坂道」にある「・・リナーテ空港に異国の音を求めに行った…」という一文にふと啄木の歌を思い出す自分に驚き、その心情をあれこれ想像している自分を発見する。今までは多分すうっと読み進んでしまった一つ一つの文、単語が別の表情を持って自分に迫ってくるのだ。

ミラノに行った時にムジェッロ街はともかくも「コルシア書店」:<それはヴィットリオ・エマヌエーレ通りのサン・カルロ教会の「いわば軒をかりたかたちで、ひっそりと店をかまえていた。」>
サン・カルロ書店(旧コルシア書店)は是非とも訪れるべきだったなあ~。
と思いつつ「ミラノ サン・カルロ教会」で検索していたら幾つかヒットした。その中の一枚に教会内部の画像もあるものがあったのだが、それはどう見ても訪れた教会なような気がする。日曜のミサでオルガンとともに聖歌隊の歌を聴いたあの教会ではないかと思うのだ。ミサの後、クリスマスが近いのでクリスマス用のクッキーやジャムのバザーを入り口でしていた、あの教会なのではないかなあ。でも、サン・カルロ書店というのは全然気付かなかったから、記憶違いかなあ。でも、もしそうだとしたら素晴らしいよねっ!

ところで、1月の終わりに前述した音楽会でお会いして須賀さんのお話を一杯聞かせて下さった方から素敵なプレゼントを頂いた。
DVD+愛蔵本がセットになった「須賀敦子 静かなる魂の旅」

ここには、彼女自身もそして彼女の作品に登場した何人かに出会えるという喜びと感激が詰まっている。本当に嬉しくありがたかった。
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