心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

72回目の夏を迎えて

2022-08-19 09:46:07 | Weblog

 「草も木も枯れたる野辺にただひとり 松のみ残る弥陀の本願」....。お盆の前に京都知恩院の御影堂にお参りした際、柱に掲げられた言葉に目が留まりました。なんとなく荒んだ風景が気になったので、帰って調べてみると、この歌は浄土宗総本山である知恩院のご詠歌とされていて、平安時代末期、大火や飢餓、大地震が続き、民衆が生活に苦しんだ時代、世情不安定な状況のなかで、法然上人が「南無阿弥陀仏」と念仏を称えれば、老若男女、善悪を問わずみな平等に救われるという専修念仏の教えを説いているとのこと.....。
 今夏、72回目の夏を迎え、お盆を前に菩提寺の総本山である知恩院にお参りをしました。弘法大師空海のことはいろいろ本を読んだりしていますが、法然上人についてほとんど知りません。それでも生まれながらお線香の香りとともに身近な存在でありました。仏さまに手を合わせ先祖代々の方々に思いを馳せる。そんな時間があってもよいかもしれません。
 その日は京都・下鴨納涼古本まつりにでかけました。下鴨神社の境内、糺の森で開かれている日本でも最大規模の古本まつりです。蝉の鳴き声が充満する鬱蒼と茂る森のなか、2時間余りいたでしょうか。世界文化社「古事記」(日本の古典グラフィック版)、日本IBM美術スペシャル記念出版「ジャポニズム」、そして西村貞二著「世界史物語」ビジュアル版(講談社)の三冊を連れて帰りました。歳と共に小さな文字が追えなくなってきたので、ついつい図絵や写真が盛りだくさんの本に手を出してしまいます。
 その帰り道、手水場で手を洗ったらなんと冷たかったことか。京の街の一画でこんなにも冷たい水が湧き出ていることに驚きました。
 ところで最近、NPOの仕事とは別に、今秋予定している大学時代の同窓会の開催準備に追われています。2カ月ほど前に引き継いだ資料を紐解いてみると、セピア色の50数枚の写真があります。半世紀以上も前の青春のひとコマですが、このまま私の手元に置いていては、いずれ散逸してしまいます。無かったことになってしまいます。
 ということで、このお盆休みを利用して写真一枚一枚をスキャナーで読み取りスライドショーを作ってみました。パソコンの画面に古き良き時代の風景が蘇ります。さっそく二三の方々にお見せしたところ、こういうものができるのならと新たに写真が送られてきました。こうして徐々に完成度を増していきます。
 このスライドショーは同窓会で上映します。そして、ご希望の方にはデータを提供することで、一人でも多くの方々の手元に置いていただき、今後の心の糧にしていただければと思っています。

 どうも最近、志向が後ろ向きになっているのが気になります。歳のせい?そろそろお疲れが出てきた?いやいや、まだそんな年代でもありません。先日、イングマール・ベルイマンの映画「野いちご」のお話しをしましたが、一昨日は映画「黄昏」を見ました。ヘンリー・フォンダ父娘共演の1981年の映画で、湖の河畔の山荘を舞台に、老境を迎えた夫婦の絆と、偏屈な父と娘の断絶と和解を細やかに描いたものでした。
 いずれの映画も、山折哲雄対話集「こころの旅」にある河合隼雄さんとの対話「フールな老健者~老年期の心理」に登場する映画です。私自身はそんな年代ではないものの、いろいろ考えさせられることがありました。本や映画や音楽を通じて、人それぞれの人生に寄り添うなかで見えてくる世界が、そこにはあります。
 さあて、暑かった夏もそろそろ終わりを迎えるのでしょうか。気持ちを新たにもう少し踏ん張ってみることにしましょうか。

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