心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

アンドレア・ボチェッリ

2006-12-03 10:50:54 | Weblog
 わたしの職場は電車の駅から歩いて18分のところにあります。その途中に小さな公園があります。それを通り過ぎると遠くに職場の高いビルが見えてきます。毎日、少し早足で歩くこの往復が、わたしのささやかな運動です。
 その僅かな時間を、ときには音楽を聴いたり、ラジオニュースを聞いたりしているのですが、昨日は少し考え事をしていて、何かの拍子に天を望むと、公園に聳える大きなイチョウの黄色い葉っぱが陽の光に輝いて、わたしに迫ってきました。一瞬、目が眩み、立ち止まり、心臓がドキンと大きく鼓動するのを感じました。視界には、真っ青な空に真っ黄色のイチョウの葉っぱ。このコントラストが、ある種非現実な世界にわたしを誘うかのようでした。この不思議な体験をわたしは一日中引きずっていました。
 ところで12月に入ると、さすがに愛犬ゴンタとの夜のお散歩も、厚手のジャンパーが要ります。それでも、毎年この時期になると、住宅街の庭々に様々なイルミネーションが輝き、昼間とは違う表情を見せてくれるから嬉しい。澄みわたった夜空には綺麗な星座を仰ぐことができます。なんだか「温かさ」をいただいたような気分になります。人間って不思議ですね。環境の変化にきわめて敏感な生き物なんだとつくづく思います。やはり地球空間の中に生かされている小さな存在なんだと思います。
 こんな季節は、ジャンパーのポケットにデジタルオーディオプレイヤー忍ばせ、イタリアのテナー歌手アンドレア・ボチェッリのCD曲を楽しみながらのお散歩になります。ですが、ついつい遠回りをしてしまい、帰宅がずいぶん遅くなって、家人に心配をかけることもあります。彼のレパートリーは、ポップスからオペラまで幅広く、ファンの裾野には広いものがあります。「夢の香り」「ロマンツァ」「アモーレ~オペラ・アリア集」「セイクリッド・アリアズ~アベ・マリア」「ビアッジョ・イタリアーノ」「愛のために」「燃える心を~ヴェルディ・アリア集」「トスカーナ」「アランフェス~センチメント」「アンドレア」など。最近、サラ・ブライトマンと歌う「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」が、テレビCMなどで登場していますから、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
 以前にもご紹介したことがありますが、ボチェッリは子供の頃の怪我がもとで視力を失いました。しかし、「こころ」は失っていない。それ以上のものを彼は育みました。自らが「在る」空間を全身で受け止め、自分の思いを素直に表現できることの素晴らしさを思います。自著「沈黙の音楽」(早川書房)を読んで、その彼から、わたしは「真摯に生きること」を学びました。病める現代人に、一筋の希望を与えてくれます。悩める若い方々も、すぐに自死なんて考えないで、不思議な地球号に乗って楽しい旅をしようよ。先は長いんだから。

アンドレア・ボチェッリのWEBサイトをご紹介します。http://www.andreabocelli.com/2006/home.html
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