心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

北欧神話と巨木

2013-02-10 09:32:41 | Weblog
 雲ひとつない快晴の朝を迎えました。いつものように愛犬ゴンタと朝のお散歩を楽しみながら、さあてきょうは何を書こうかと思案します。朝食をすませ、グレン・グールドのシベリウスを聴きながらのブログ更新です。 
 ところで最近、インフルエンザが流行っています。職場でも大きなマスクをして歩いている人があちらこちらにいます。「えっ、君も風邪?」と尋ねると「いや、予防のためです」と。彼の地からやってくるPM2.5のこともありますから、皆さんご用心、ご用心。
 私はここ数年、風邪らしい風邪をひいたことがありません。「元気なんですね」と感心されるので、「毎日、呑むアルコール消毒をしていますから」とお茶を濁していますが(笑)、外敵に鈍感なのかもしれません。しいて言えば、毎日紅茶を飲んでいること、時には濃いめのハーブティーを嗜んでいること、そのあたりに秘密があるのかも。その昔、ペストが流行った中世ヨーロッパでは、紅茶の薬効が重宝がられたという話を何かの本で読んだことがあります。どうなんでしょう。
 
 話は変わりますが、きのうの夜、変な夢を見ました。若葉が萌える頃、父と愛犬ゴロウと3人で杉林の中を歩いていました。そこには、樹齢100年ほどの大杉が天をも突き刺さんばかりに林立していて、足元には美しい山野草が頭を擡げていました。....5月の連休に東京から帰ってくる父は、よく私を山に連れて行ったものです。旨そうにピース(煙草)を吸いながら木々の成長を眺めていました。....次の瞬間、一筋の陽の光が辺りを照らし、数羽のアカゲラ(赤啄木鳥)がやってきました。ト、ト、ト、ト、ト、ト。アカゲラが樹を突く音が静まり返った森に響きます。いつの間にか、至る所で大杉の幹に大きな穴がぽっかりと空いています。驚いて父に告げようとしますが、周りには誰もいません......。

 なぜこんな他愛ない夢を見たのでしょう....。
 どうやら、昨夜、布団の中で読んだ杉原梨江子さんの近著「いちばんわかりやすい北欧神話」の影響かもしれません。世界の中心に立つ一本の宇宙樹「ユグドラシル」に象徴される北欧神話は、世界が「原初の巨人ユミルの肉体をバラバラに解体して作られた」という創生の物語です。カット満載の楽しい新書ですが、ワーグナーの楽劇「ニーベルンゲンの指輪」にも通じる神話の世界に、ずるずるとのめり込んで、そのまま眠ってしまいました。





 それはそうと、最近気になったニュースがあります。神社に立つ樹齢何百年ものご神木が、なんの前触れもなく立ち枯れてしまう事件です。調べると、根元にドリルで穴をあけ除草剤を注入したのが原因のようですが、犯人は枯れたご神木を安値で買い付け高く売る悪徳業者のようでした。これだけの大木は最近なかなか出回らないそうで、高値で販売ルートに乗るのだとか。この罰当りめ!悲しいお話です。
 ご神木と言えば、南方熊楠の神社合祀反対運動があります。その昔、国の施策で神社の合祀が決まると、吸収されてしまう神社のご神木が伐られてしまいます。鎮守の森がなくなると、村の祭の舞台がなくなります。人々が集まる場所がなくなってしまいます。何よりも自然が破壊されます。南方は身体を張って反対しました。ここでも悪徳業者が暗躍したようですが、いつの世にも同じようなことが繰り返される。人の性なんでしょうか。
 毎週、大阪と広島の間を行き来していると、山陽道の山肌の荒れ具合も気になります。花崗岩質の山だからでしょうか。それとも酸性雨のためでしょうか。山に元気がありません。砂の採取のためか通過するたびに形を変えていく山もあります。寂しいことです。
 私たちは自然を侮ってはなりません。この地球は人間だけのものではないのです。「共生」という言葉の本来の意味が問われています。

 さて、きょうは久しぶりに孫君が一人でお泊りにやってきます。弟が風邪をひいているためです。この孫君たちが大人になる頃には日本の森林は今よりも狭くなっているかもしれません。一方では、1億数千人を数えるわが国の人口は、今後100年の間に明治後期とほぼ同じ5千万人台にまで減少するという試算もあります。政治、経済、社会、文化、さまざまな分野でパラダイムシフトが進んでいるかもしれません。私の杞憂であれば良いのですが。

【写真説明】
上段の写真は、壁紙村さんからお借りしました。http://e-kabe.sakura.ne.jp/kabe/
中下段の写真は、Wikipediaから著作権の保護期間が満了した作品をお借りしています。

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