ピアノの音色 (愛野由美子のブログです)

クラシックピアノのレッスンと演奏活動を行っています。ちょっとした息抜きにどうぞお立ち寄り下さいませ。

楽曲解説 グリーグ「ピアノコンチェルト イ短調」 第1楽章

2011年08月17日 | クラシック豆知識
第一楽章  アレグロ・モデラート、4分の4拍子

グリーグといえばこれ、というくらい有名な出だしです。何の曲かは知らなくてもこの冒頭部分を聴けば誰でも、「あ、知ってる」、と言うにちがいありません。ティンパニが地鳴りをするようにクレッシェンドしながら響いてきて、その頂点に達したところでピアノがドラマティックに始まります。「チャン、チャチャチャン」というあの有名な出だしです。ラソ♯ミという短2度長3度の下降は、グリーグモティーフと呼ばれ、ノルウェーの民族音楽に特徴的なフレーズなのだそうです。何かこれからドラマティックな展開が始まるのではないかと、聴衆を一気に「掴む」、ものすごく効果的で鮮烈な印象を与える出だしです。

その後、オーケストラが第一主題を奏で、ピアノに受け継がれ発展して、ピアノが軽快なリズムを刻む経過部を通って、ゆっくりした静かな第2主題が始まります。この第2主題は、グリーグらしい美しい旋律でノルウェーのフィヨルドを思い起こさせるものです。それから、フルートの旋律にピアノが寄り添う形で展開部が静かに始まり、だんだん熱を帯び華やかに展開部を閉じます。そして、再現部が始まり、全く同じ第1主題が今度はいきなりピアノから始まり、第2主題に流れます。それぞれの主題や展開部や再現部の始まりは、イ短調、ホ短調など短調で書かれていますが、この第2主題はハ長調、そして再現した後の第2主題はイ長調で、それぞれ長調で始まります。

私は、グリーグのこの長調の穏やかで美しく切ない雰囲気に、ノルウェーの自然の美しさと人間の本来持っているであろう魂の美しさを感じます。これが長調であることによって、逆に悲しい美しさを感じてしまいます。

そして壮大なカデンツァが続きます。カデンツァとは、もともとソリストによる即興的な演奏という意味でしたが、ある時期から作曲家が書いた通りに演奏するようになり、即興性自体は失われています。それでもこの部分は協奏曲の中にあって完全にソリストに任された部分であるということは変わりません。カデンツァではオーケストラはお休みし、指揮者も棒を振りません。この曲のカデンツァは、技巧的にも華やかで、ピアニストの腕の見せどころとなっています。

カデンツァが終わるとコーダ(終結部)に入ります。冒頭に使われたグリーグモティーフを、ここではリズムを変えて、3連附のリズムで奏で、第一楽章が華々しく終わります。

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