ピアノの音色 (愛野由美子のブログです)

クラシックピアノのレッスンと演奏活動を行っています。ちょっとした息抜きにどうぞお立ち寄り下さいませ。

防空壕の中のダン・タイ・ソン

2012年07月17日 | クラシック豆知識
先日、豪雨の中、コンクールの全国大会に浜松まで出かけたときのこと。全国大会ですから各地から集まってきていて、他県の知り合いの先生方ともお会いしました。その時、ちょうど豪雨被害のあった地域からやってきた先生がいました。お話を聞くと、自宅が床上浸水してしまった生徒さんがいて、その生徒さんはまだその水がひかないうちに、家族と一緒にドレスを担いでコンクール会場にやってきたのだそうです。本当に大変なことだったろうと思います。

この話を聞いて、ダン・タイ・ソンの有名なエピソードを思い出しました。それは、ベトナム戦争の戦火の中、防空壕の中でピアノの練習を続けたというものです。ダン・タイ・ソンといえば、1980年にアジア人として初めてショパンコンクールで優勝した実力派ピアニスト。1958年生まれということですから私とほとんど同世代といえます。そんなこともあって以前からずっと注目してきた大好きなピアニストの一人です。

ただ、あまり彼に関する情報を目にする機会がなくて、防空壕の話のような断片的なエピソードをいくつか目にしたことがある程度でした。彼のことをもっと知りたいと思っていました。そこで今回検索してみると、とても面白くて興味深いサイトを発見しました。台湾の音楽評論家がダン・タイ・ソンにインタビューして発表した記事を、フリーライターの森岡葉さんが日本語に翻訳してアップしているサイトです。「『遊藝黒白』~ダン・タイ・ソン インタビュー」 このインタビュー記事、ほんとに読み応えがあります。

インタビューの内容は、彼の生い立ちから始まって、ソ連留学時代に学んだこと、ショパンコンクール当時の回想、東洋人として西洋音楽に取り組むことの意義等々、多岐にわたります。是非皆さんにもご一読されることをおすすめします。

ここではあの「防空壕」のエピソードについてだけ簡単にご紹介します。戦火が激しくなってハノイ音楽院も山奥に疎開しました。そこに持っていくことのできたピアノは水牛の背に乗せて運んだたった一台のアップライトピアノだけでした。

(焦): 山の中で、どのようにピアノを学んだのですか?

(ダン): それは、本当に大変なことでした。ピアノがボロボロだったということばかりでなく、もっと深刻な問題がたくさんありました。当時、私たちは防空壕の中で寝ていたのですが、ベッドの傍に地下トンネルがあり、爆撃の音が聞こえるとすぐに地下壕に潜りました。ピアノも、地下室に置いてあったのですが、そこは湿気が多いため、ペダルが効かなくなったばかりでなく、鼠の巣になってしまったのです。毎朝練習する前に、まず棒で鼠を追い払わなければならなかったんですよ! 晴れた日には、ピアノを地上に引きずり出して、乾かしました。学生たちは皆、そのピアノで練習するしかなく、それぞれに割り当てられた時間は1日20分でした。それでは足りなかったので、私は紙に書いた鍵盤の上で、指使いなどを練習しました。

©樋崎香

ダン・タイ・ソン、11月に東京で二夜連続の「ベートーヴェン/ピアノ協奏曲全曲演奏会」やるんですね。

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2 コメント

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Unknown (しょうこ。)
2012-07-17 09:52:20
11月、これ、理由に東京行き、考えませんか~??(^^)/待ってます。
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しょうこさん。 (piano-no-neiro)
2012-07-17 23:12:58
そうしたいなあ。そろそろ、東京に行きたいと思ってます。コンサートか、仕事にかけて行きたいです。実現化、本気で考えてみます。
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