ピアノの音色 (愛野由美子のブログです)

クラシックピアノのレッスンと演奏活動を行っています。ちょっとした息抜きにどうぞお立ち寄り下さいませ。

「仕掛け」

2010年08月30日 | レッスンメモ
あるピアノの先生から、「けっこう上手に弾けるのに、コンクールに出るとなかなかいい成績がとれない生徒がいる」というお話がありました。コンクールの審査員の仕事をしていると、確かに、そつなくちゃんと弾けるのに、なぜかきらりと光るもの、人を惹きつける何かが欠けているような演奏に出会うことがあります。

ただ、スケール(音階)を弾くだけでも、素敵な音で素晴らしいスケールと、ただドレミという音が出ているだけという場合があります。ピアニストたちは、一つ一つの音作りに心血を注いで取り組まなければなりません。一見、無機質に見える音符の羅列を、まず、解釈して、それぞれの解釈に応じた音や表現を用意するのです。そして、その音には、指と手首と肘と腕の使い方や、角度、落下の速度などあらゆる「仕掛け」を考えて、求める音を作ります。その「仕掛け」を発見するまでが大変なんです。こればっかりは、自分の耳で確かめ、試行錯誤するしかないですね。

素晴らしいピアニストの演奏を聞くと、実に何気なく自然にピアノを弾いているように感じられます。出てくる音も多彩で、とても美しいのに、何だかとても軽々と弾いている感じ。

でも、実はそこに至るまでには、深い探究心に満ちた練習があって、「ああでもない、こうでもない」と悩んで、一音一音に耳を傾ける作業を黙々と続けてきたのだと思います。いろんな事を考えて、聴いて、自分で工夫を凝らして、タッチ一つでも、「ここの音は、このタッチが欲しい。」「あそこの音は、あのタッチにしてみようか? どんな音がいいかな?」と日夜研究しているものだと思います。

時間がかかることですが、そんな「仕掛け」をたくさん自分の引き出しの中に持つことが自由自在に演奏できる秘訣でもあり、そこからきらりとひかる演奏も生まれてくるのだと思います。

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