田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

記者会見(2)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-14 05:01:49 | Weblog
2

「日本に出向した目的知ってる。
直人さんの三回忌の供養のためだけに。
フロリダからきたんじやないこと。知ってるよ」
「隠してもだめらしいな」
「いわなくていい。わかっているから。
……わたしたち黒髪のモノも。いったでしょう。
おなじような仕事をしてる」
「そうらしいな。世間では、おれたちの活かしかたを知っている。
そういう偉いさんがいるってことだ」

司会者の男がマイクを持った腕を下ろした。
美智子が卓上に並んだマイクの前で話しだした。
記者会見をドタキャンした謝罪会見だった。
なにもそれだけで、記者会見をすることはない。
でも宣伝にはなる。

謝罪会見とはいうものの――。
賞味期限改ざんなどの謝罪ではない。
華やかなムードが漂っていた。
部屋はプレスの腕章をつけた男女で満室になっていた。
隼人は注意深くひりとひとりに視線を向ける。
あやしい人物はいない。
プレスの多さに、美智子の人気を知った。
うれしかった。
彼女は輝いていた。

「この春にクランクインする作品は、監督は香取俊。
タイトルは『戦火の村で』。
場所は中近東のある村。
ストーリーは日本から来た報道カメラマンと。
村で日本語を教えている――
NPOから派遣された女子大生の愛の物語です。
ラブストーリです。
わたしはその女子大生の役で出演します」
そこで彼女はほほえんだ。 
ひととおり謝罪がすむと、受賞第一作の新作発表となった。

謝罪のほうはさっと流した。
パーティー会場をぬけだした。
プレスのインタビューをドタキャンした。
そのことには、あまり触れなかった。
さすがに演出がいきとどいている。
霧降まで昨日でかけた話を。
むしかえすことは得策ではない。
それらの話を省略した。
事務所サイドの賢明な判断によるものだろう。



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