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田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

盗聴(4)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-12 05:36:14 | Weblog
4

たんなるイヤガラセであるわけがない。
たんなるノゾキ趣味にしては念が要りすぎている。

いくつしかけてあるかまだわからない。
家の周囲はキリコの連絡を受けた者たちが調査した。
キリコの兄の機関のスタッフがきてくれた。
近所にかならず盗聴している者が。
配置されているはずだ。
最後まで付き合いたかったが。
盗聴器を全部取り外すのにはまだ時間がかかる。
だいいち、取り外したほうがいいのか。
外せば、かれらがどうでるか。
目に見えない敵だけに。
不気味だ。

隼人はいらだっていた。
出発がおくれた。

「里恵さん、あのままさりげなく時間をすごせるかしら。
なにかいつもとちがう動きでもして、気づかれたらことよ」

キリコは、派手なピザ屋のラップがほどこされた配達車できていた。
駅付近の駐車場まで歩いて、隼人は乗りこんだ。
大口のデリバリにつかう車なのだろう。

「隼人、アメリカの麻薬シンジケートがからんでいるの。
隼人あなたの正体。いいかげんで教えて。
あなたたちのことは調べがついている」
「それはまた手早いことで」
「ちゃかさないで。わたしたち黒髪のモノもおなじようなことしているの」
キリコの兄たちも、おなじゅうなミッションに従事しているということなのか。

「ぼくらの能力を活かすとなると、そんなところだろうな」
「そうよ」
「それより。滝の音でもっと気づいたことがあるのだろう」
「わかったぁ」
「まあな」
「さすがぁ」
「ひやかさないでくれよ。そこまでだ。
なにかあると感づいただけなのだ。悲しいことだけどさ」
「直人さんは、あのときからアタイはおかしいと思っていたの。
事故でなかった。転落事故ではなかった。
そういうことも滝の音にかくれてひびいていたの。
滝が警告をはっしていたわ。アタイにはわかる。
近づかないで。滝の源流には、近づかないで。
近づかないで。そんな超音波がながれていた」
「滝の声か」
「たぶんね」
「直人にはきけていたのかな」
「たぶんね」
「直人は滝の声をききに、霧降の滝にかよっていたことになる」
「そういうことになるわね。
アタイね、まえからいやな予感がしていたの。
黒髪の女たちが。霧降高原の奥の奥にあるという鬼神のに。
拉致されてなにかやらされている。そんな感じがしていた。
サル彦ジイチャンもいっていた。
女たちを奪回しょうと忍んだが。
……女たちは性の供犠としてつれていかれたのではない。
なにか仕事をさせられているようだ。
警備がかたくての内部までは忍べなかった。
そんなこといっていた。アタイもそれ信じるよ」

キリコは興奮してアタイを連発しているのに気づいていない。
隼人は沈黙。
考えこんだときのこれまた癖だ。



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