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田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

鹿沼の怪談(3)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-07 07:04:07 | Weblog
3

中山美智子が襲撃された。
翔太郎の孫、美智子が、正体不明の男に狙撃された。
その理不尽な事件はまだ翔太郎にはしらされていない。
 
その現場からさほど離れていない。
鹿沼インターをおりる。
旧例弊使街道沿いに江戸時代に開けた宿場町鹿沼。
Fデパートの食品売り場で智子が万引き呼ばわりされていた。
密かにまた怪異がはじまっている。

このデパートは奇怪なことばかり起きる。
開店祝いで賑わった夜。
屋上から中学の女生徒が飛び降り自殺したことがあった。
そのあと同じ場所で同じような投身自殺が三件も起きている。
補陀落信仰(ふだらく信仰)の山。
ふだらく山、が二荒山と変化した。
黒髪山。
男体山。
みなおなじ山の呼び名だ。

いまは、男体山と呼ばれる日光連山の主峰を眺められる小さな田舎町、鹿沼。
光りと闇の二神が相争い、戦ってきたのは、このあたり前日光高原の地域だ。

不思議と超常現象ともいえるような戦いの場なのだ。
奥日光の戦場が原は、ムカデと大蛇のた戦い。
那須は九尾狐と犬を屈指する部族の戦い。

日光に東照宮ができたことによって発展してきた町。
京都の天皇家から例弊使が毎年日光に往還した街道の宿場。
それに、大名の日光詣でで栄えた町。
 
そのことに異を唱える男。
麻耶翔太郎は学習塾「マヤ塾」主宰者。
郷土史家。
カムバックを狙う伝奇作家でもある。
麻耶はいっている。
ここは、例弊使の行き来した街道。
だから、例弊使街道といわれているのではない。
それは表の歴史。
表の伝説。
表の言い伝えだ。
裏の意味は――。

霊兵士街道の町なのだ。
……と確信している。

闇の霊――悪霊と、光の霊が戦いをつづけてきた場所。
その光の霊に支えられた部族の住みついた街。
朝廷の使者が日光往還をぶじにすませることができるように。
麻耶家の先祖が影の護衛をつとめた。
勅忍の里隠れるとして先祖が京都から移住し、住みついた町。
そして霊の力を喚起できる能力を受け継いできた里忍の町。

弘法大師空海のもともとは護衛にあたっていた。
この土地に「草として久しく生きよ」と命令された。
空海伝説のある草久という村落。草忍、里忍の。
そこの娘と結ばれて勅忍が住みついた。
そこが麻耶家のものが住みついだ。
麻耶家のルーツの地だ。
鹿沼の中心街からは20キロほど古峯神社の方角に入ったところだ。 
古峯神社は天狗を祭つっている。「遠野物語」にもでてくる。

鹿沼市西大芦草久の山間の小さなだった。

それが何度かテレビにその地名がでてしまった。
鹿沼女性ドライバー水没死事件。
その取材でプレスが押しかけてきた。
ゲリラ豪雨で草久地区の人たちが避難しています。
やまの崩落が予想されています。
と連日報道された。

秘密を、あぶりだされたような感覚――が。
いまは市内でささやかな学習塾をしている翔太郎にはあった。
祖先が住みついた隠れ里がテレビに映ってしまった。
なにをいまさら……と思わないでもなかったが……。
これは、ヤバイことになった。
だか、ここを離れられない。
転居するわけにはいかない。
霊の存在がきわだって強い街。
ここを離れるとじぶんの能力も。
弱まるようで。
怖いのだ。

作者注 古峰ヶ原神社については、柳田国男「遠野物語」 話の番号65,66に載っています。

 
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