田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

震災前の穏やかな朝はもどったか? /麻屋与志夫

2011-04-17 11:20:53 | Weblog
4月17日 日曜日

●静かな目覚めだった。
震災以来――福島方面へ、ヘリコプターが飛び交った。
轟音に起こされた。
不安な目覚めがつづいていた。

●「恋空」で有名になった観覧車のある千手山公園。
桜が散りだした。
2階の書斎から花吹雪が観られる。

●裏庭のアンズの花も散ってしまった。
白木蓮もおわり。
震災騒ぎで杏花も木蓮の花もゆっくりとたのしめなかった。
きょうは桜を観に行こうと思う。

●金曜日には東京にもどった。
年に2回受けている定期健診。
尿酸値が少し高かった。
あとはまつたく異常なし。
ありがたいことだ。
まだまだ塾の教壇に立てる。
勉強の遅れている子に特訓を再開しょう。

●尿酸値が高いのは肥満したからだ。
このところ運動不足だった。
1月ほど風邪が長引いた。
体力をつけるといって、少し食べ過ぎた。
2キロふとってしまった。
それに、お酒は、ほんとうは止めた方がいいのだ。
「ストレス解消になるから少しはいいでしょう」
わたしがショボンとしているのでO先生がなぐさめてくれた。

●桜の花びらが部屋にひそやかにはいってきた。
桜の花の舞い込む部屋で文章をかけるなんてしあわせだ。
東京と鹿沼と故郷をもてるなんてこれまたしあわせだ。

●ただ教育や文化の落差がやたらと目につく。悲しい。

●鶯が頻りと鳴いている。

●猫のブラッキがのどをごろごろさせてPCの脇にいる。

●穏やかな朝。
だが震災前とはビミョウニかわったわたしの心境。
それが小説にも表われてくるだろう。
どんなかわりかたをするのだろうか?


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記者会見(5)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-17 07:48:30 | Weblog
5

「だったら、静かに休むといいわ」
医務室で、なんどもうがいはした。
「水はあとで分析するから」
白衣の看護師が言う。
気をきかしてデスクにもどっていく。

「どういうことなんだ」
自問するように隼人がキリコと並ぶ。
部屋の隅のソファにかける。

「隼人を脅かすのがねらいかもね」
「ぼくはフロリダからきたばかりだ。
だれがぼくの到着を知っているというのだ」

隼人は辺りを気にしている。声を低める。
看護師はすこし離れた処にいる。
声は聞こえていないはずだ。
それでも、さらに声を低める。

「おこらないで。あくまでもアタシの考えよ。
だって、美智子さんと一緒にいて。
事故死したのは直人でしょう。
こんどだって、美智子さんに怪我はない。
あくまで隼人にたいする警告とみたらどうなの。
おれたちは、おまえさんの存在に気づいている」

隼人はさらに声をひくめる。
いままで、美智子さんの周辺でなにも起きなかった。
盗聴器で身辺はたえず見張られていた。
それでもなにも起きなかった。
それなのに、ぼくがきたとたんに……。
辺りに警戒の視線をむける。
キリコの耳もとでささやく。

「そうか、おれの任務がもれている。
そういうことか。
FBIかフロリダ警察に内通者がいる。
麻薬シンジケートから汚い金をうけとっているやつがいる」
「わたし兄貴に連絡してくる」

「直人の夢を見ていた。
あんなに夢でもいいから。
会いたいと思っていた直人の夢見た」
美智子はすがるような眼差しをしている。
隼人をじっとみている。
直人のことをおもいだとている。
水に何が混入されていたのか。
美智子が狙われているのか。
いまのところはなにもわかっていない。
美智子の顔色は平常にもどっている。 
美智子がベッドでつぶやいている。

「直人の夢みたわ」
記者たちの声が廊下でする。
背後でシャッターをきられながら。
キリコがすばやく部屋にもどってくる。
「隼人が直人に似ていることに気づいたひとがいるみたい。
美智子さんのモト彼が生きていた。なんていってる。
ヤバいよ。どうする」
「どうします」



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