■音楽の中にはなんと沢山の大聖堂があることでしょう!■
~ことしもBachを勉強できる幸せ、1月21日「ゴルトベルク変奏曲」講座~
2017.1.12 中村洋子
★2017年最初のブログになりました。
年末年始も忙しくしておりました。
大晦日は、仕事をしながら夜のしじまに響きわたる除夜の鐘を
心に刻み付けました。
★ベルリンのWolfgang . Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー先生から、
新年のお祝いのカードをいただきました。
先生は、クリスマスをご家族と過ごされた後、弦楽三重奏とデュオの演奏旅行に
出掛けられたそうです。
★お手紙には、「 Mozart(1756-1791)のディヴェルティメントKV563や、
Beethoven のOp.9、ハイドン、シューベルトなどを演奏しました。
≪なんと音楽には多くの大聖堂(ドーム)があることでしょう!≫」と、
書かれていました。
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MITTWOCH, 28.12.2016
JOSEPH HAYDN, Streichtrio in G-Dur, (Hob.XVI 40)
FRANZ SCHUBERT, Trio in B-Dur (D471)
LUDWIG VAN BEETHOVEN, Streichtrio op.9 No 1, Stephan Picard, Violine,
Julia-Rebekka Adler, Viola, Wolfgang Boettcher, Cello
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★これだけの傑作群(大聖堂)がひしめき合っているクラシック音楽の中で、
その根本となる作曲家「Bach」を、ことしも勉強できることは、幸せです。
新年は、1月13日(金)のカワイ金沢の
「 Notenbüchlein für Anna Magdalena Bach
アンナ・マグダレーナ・バッハのためのクラヴィーア小曲集」アナリーゼ講座、
1月21日の東京・シビックホールでの「ゴルトベルク変奏曲」
第2期第1回アナリーゼ講座で、Bachの勉強始めとなります。
★ Boettcher ベッチャー先生にお話を戻しますと、
12月30日のコンサートでは、 Mozartが編曲したBachの作品を
演奏されました。
Adagio & Fuge für Streichtrio gesetzt von W.A. Mozart
(KV 404a Nr. IV)の
Adagioは、「Ⅲ.Orgelsonate(BWV527)」、
Fuga は、「Die Kunst der Fugue フーガの技法の、
Contrapunctus Ⅷ 」という二つの違う曲を組み合わせて一つの曲に
編曲しています。
大曲です。
★ちなみに、KV 404a Nr. Iのフーガは、平均律クラヴィーア曲集1巻8番
dis-Mollの編曲です。
Ⅱは、平均律クラヴィーア曲集第2巻14番fis-Mollの編曲です。
Ⅲは、平均律クラヴィーア曲集第2巻13番Fis-Durの編曲です。
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FREITAG, 30.12.2016
JOHANN SEBASTIAN BACH
Adagio & Fuge für Streichtrio gesetzt von W.A. Mozart
(KV 404a Nr. IV)
MAURICE RAVEL
Sonate
für Violine & Violoncello
WOLFGANG AMADEUS MOZART
Divertimento für Streichtrio
in Es -Dur (KV 563)
Stephan Picard, Violine
Julia-Rebekka Adler, Viola
Wolfgang Boettcher, Cello
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★この Mozart編曲の平均律クラヴィーア曲集については、
私の著書「クラシックの真実は大作曲家の自筆譜にあり!」の、
Chapter7 「 MozartはBachの4声フーガを
弦楽四重奏に編曲して勉強」で、
詳しく書いてありますので、是非、お読みください。
★ Mozartの時代、Bach作品の出版物はまだ少なく、
Boettcher ベッチャー先生から以前お聞きしましたお話によりますと、
「MozartはBachの作品の楽譜を見るために、演奏旅行の日程を変更して、
わざわざ楽譜のある町を訪れたこともある」とのことです。
やはり Mozartは、Bachとその息子たちの土壌の上に、
すくすくと育った偉大な樹木であった、と思います。
★ MozartがBachの作品を編曲することによって自分を育てたように、
Bachもイタリアの Antonio Vivaldiアントニオ・ヴィヴァルディ
(1678-1741)や、
Alessandro Marcelloアレッサンドロ・マルチェッロ(1669-1747)
の曲を、編曲することにより、彼らの音楽をさらに豊かにしたことは、
間違いありません。
★これについては、21日の「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」
講座でも、お話いたします。
今回は、ゴルトベルク変奏曲の第16、17、18変奏です。
第16変奏曲は、ゴルトベルク変奏曲の後半の幕開けとなる重要な変奏曲です。
★一見しますと、フランス風序曲の形式、即ち、
前半は付点のリズムを伴った荘重な序曲、後半は、軽やかな小フーガです。
後半には、Vivaldiヴィヴァルディ(1678-1741)の影響や、
さらには、スカルラッティとの共通点が見られるのは一目瞭然です。
★私は、この第16変奏曲の後半部分を勉強しますと、
これらの音楽がいつも、頭の中で甘美な声楽曲として鳴り響きます。
それは何故なのでしょうか。
★クリスマスから新年にかけての音楽を聴きましょう、と思い立ち、
まず、Bach「Weihnachts-Oratoriumクリスマスオラトリオ」の
CDを聴きました。
名盤は沢山ありますが、今回は、Kuijkenクイケン(1944-)指揮の
演奏を楽しみました。
★カール・リヒターのモダンなピッチに慣れていますと、
クイケンの演奏は、バロック時代のピリオド楽器ですので、
当然ピッチも約半音低くなっています。
大雑把に言いますと、リヒターを「D-Dur」 として聴きますと、
クイケンの演奏は、「Des-Dur」に聴こえます。
これが、イエスの生誕を祝う喜びや、幼子を謳い上げるのに、
大変に柔らかく、心地よく聴こえます。
★「Weihnachts-Oratorium」の第4曲目に差し掛かりますと、
「ああ、これはゴルトベルク変奏曲の第16変奏曲!!!」なのです。
★第16変奏曲は、前半16小節を二回反復します。
16小節目の二回目反復から、後半が始まります。
後半の小さなフーガの主題の中にある、“ジグザグモティーフ”が、
まず18小節目の上声、19小節目の下声に出現します。
★実は、このモティーフは「Weihnachts-Oratoriumクリスマスオラトリオ」の
第4曲「Aria」でも、たびたび使われています。
クリスマスオラトリオ第108小節は、ゴルトベルク変奏曲18小節目と
全く同じ音(1オクターブの差はありますが)です。
★Bachの自筆譜を見ますと、この「Aria」を、3段譜で書いています。
ソロのAriaを歌うアルトは、真ん中の段です。
最下段は通奏低音です。
最上段は、oboeとviolinです。
★その108小節の最上段を、もう一度ご覧下さい。
“ジグザグモティーフ”に話を戻しますと、
次の第17変奏のややおどけた“ジグザグモティーフ”につなげるために、
第16変奏曲の“ジグザグモティーフ”は、明るく軽やかです。
“ジグザグモティーフ”の面白さは、和声の面白さである、とも言えます。
★ケーズバイケーズですが、例えば、18小節目の場合、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ
のように、和声の「平行進行」が生まれることがあります。
ある意味、機能和声の厳格な法則の頸木から解き放たれている意味も
ありますので、それが軽やかさの一因かもしれません。
★そうのようなことを考えながら、16変奏曲を勉強し、
クリスマスオラトリオの第4曲「Aria」を聴きますと、
共通する motif モティーフが他にも見つかり、
理解が深まりますので、是非、お聴きください。
★アルトのAriaですので、歌の冒頭部分を自筆譜通りに「アルト譜表」で
写譜します。
アルトに慣れていない方のために、「ト音譜表」に直します。
これも、お弾きになってください。
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■「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」アナリーゼ講座
https://www.academia-music.com/academia/m.php/20161026-0
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