音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■平均律2巻22番Fugaは異例な記譜法、そこには大きな仕掛けが・・■

2015-01-20 01:49:07 | ■私のアナリーゼ講座■

■平均律2巻22番 Fugaは異例な記譜法、そこには大きな仕掛けが・・■
            ~平均律 第2巻 22番 b-Moll アナリーゼ講座~
              2015.1.20   中村洋子

 

 

 

22日は、KAWAI 表参道「Bach 平均律第2巻アナリーゼ講座

第22番 b-Moll 」です。

第2巻は、終曲に近づくにつれ、“平均律1巻と2巻を統合したい”という

Bach の大きな意志を、強く感じます。


★平均律第2巻の曲を弾いていますと、1巻の曲ではないかと、

錯覚をすることが、たびたびです。

逆に、第1巻を弾いて、第2巻と思ってしまうことも

多いのです。


★どうしてそのような錯覚が起きるのか、

講座でご説明する予定ですが、ここでは、22番の

「Manuscript Autograph facsimile 自筆譜 」 の、

レイアウトについて、ご説明します。


★というのも、22番のレイアウトは、

極めて、誤解を受けやすいのです。

いつも言われている≪Bach は、紙を惜しんだ≫という誤解を、

招きやすいのです。

しかし、そのレイアウトには、Bach の恐ろしいほどの仕掛けが、

隠されているのです。

 

 


★22番は、全体で4pagesです。

大まかには、初めの2pagesが Prelude、

後半の2pagesが Fuga 。

Preludeは7段ですが、 Fugaがあまりに長大な曲であるため、

8段で書かれています。


★ Fuga の最初のpage(左)は、第1小節~44小節1拍目まで、

2page目は、44小節2拍目~83小節2拍目まで。

しかし、その下に「Volti」と記しています。

「Volti」は「直ぐにめくる」という意味で、ここでは、

前のPreludeの2page目に戻ることを、意味しています。


★このpageを見ますと、 Preludeは、最後の7段目の中ほどで

終わっており、右半分が余白になっています。

その余白に、Fuga の83小節3拍目~85小節目までが

「Appendix」として、書かれています。

 

 


★しかし、 Fuga はここで終わりません。

その後は、なんとその下の余白部分に飛ぶのです。

今度は、 Preludeの1page余白の左端に

「NB=notabene 注意せよ」と記したうえ、

そこから、86小節~101小節目(最後)が、

細かくびっしりと、書き込まれています。

Prelude1~2page余白を、真横に貫いて

一直線に書いています。

101小節目(最後)は、2page余白の右端です。


★この異例な記譜について、

後世の Bach学者がどうコメントしているかは、知りませんが、

“Bachは、紙を惜しんで余白に詰め込んで書いた”

のではないことは、断言いたします。

大きな構想の下に、意図的にそのように記譜したのです。

これと同じパターンの記譜が、実はあの

「 Messe in  h - Moll  ロ短調ミサ 」 BWV232 にも、

あるのです。


★講座では、この変則的な譜で、Bachが何を意図したのか、

分かりやすく、ご説明いたします。

 

 

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■第 19回 : 第 22番 b-Moll BWV891 Prelude & Fuga

~ 悲しみの下行音階 Prelude 、101小節にも上る大伽藍八声 Fuga ~

■日  時 :  2015年 1月22日(木) 午前 10時 ~ 12時 30分

■会  場 :  カワイ表参道  2F コンサートサロン・パウゼ

■予  約 :    Tel.03-3409-1958

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■ 講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

    2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

    07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
         無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
         Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
    CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

    08年: CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
        CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

    08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

    09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」  から出版。
  
   10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ

                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

    10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
       「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」の楽譜を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

    11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

    12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
   チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」の楽譜を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

    13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
       「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

   14年:「 Suite Nr.2、4、5、6 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 2、4、5、6番 」 の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

     SACD 『 Suite Nr.1、2、3、4、5、6 für Violoncello
                            無伴奏チェロ組曲 第 1, 2, 3, 4, 5, 6番 』 を、
    「disk UNION 」から、≪GOLDEN RULE≫ レーベルで発表。

          スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
    自作品が演奏される。

   ★上記の 楽譜 & CDは、
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/ 
「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で
 販売中

  ★私の作品の  SACD 「 無伴奏チェロ組曲 第 1 ~ 6番 」
   Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
  disk Union や全国のCDショップ、ネットショップで、購入できます。

 

 

※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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