音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ドビュッシー前奏曲集第1巻第1番「デルフィの舞姫」の複縦線は何のため?■

2009-06-06 00:27:09 | ■私のアナリーゼ講座■
■ドビュッシー前奏曲集第1巻第1番「デルフィの舞姫」の複縦線は何のため?■
               09.6.6   中村洋子


★明7日に開きますアナリーゼ講座「前奏曲とは何か~」の、

テキストを、準備しています。

バッハ、ベートーヴェン、ショパン、ドビュッシーが、

「前奏曲」という形式の曲により、音楽史上、

一本の線の上に、スーッ と見事に並んで、

位置していることが、いまさらながら、さらによく分かり、

少々、興奮気味です。


★この4人の楽譜を、手で写し取ってみることにより、

発見できることが、多々ありました。

ショパンの手書きの楽譜を、じっくり見ますと、

「ナショナル・エディション・エキエル版」とは、

同じ曲とは思えないほど、異なっています。


★「エキエル版」を、「Urtext」 といえないことは、

前回のブログで、述べましたが、

さらに、ショパン手稿譜には、2小節ごとに、小節線の真上に、

「1、2、3」と、練習番号のように、

ショパン自身によって、数字が書き込まれています。

この数字は、この曲を読み込む上で、とても重要です。


★「Metrum」 という、ドイツ語の楽語があり、

ドイツでは、音楽のレッスンで、よく使われる言葉ですが、

日本では、まともな訳すらなく、

私たち日本人の音楽理解のなかで、最も欠落した分野であり、

実は、クラシック音楽の、最も大切な部分なのです。


★この「Metrum」 は、日本語では「拍節」あるいは

「韻律」と訳されていますが、

このショパンの「1、2、3」と、どのような関係があり、

ショパンがどのように、演奏して欲しいと望んだか、

エキエル版は、それを無視している、という点についても

講座で、お話をいたします。


★ドビュッシーの「前奏曲集 第1巻 第1番」は、

31小節というとても、短い曲ですが、

曲中に複縦線が 3ヶ所もあります。


★ショパンの「練習曲集 Op.25の1」について、

前回のブログで述べましたように、エキエル版は、

8小節目の最後の音で、フレーズを終わらせていますが、

ショパン自身は、9小節目の最初の音まで、

フレーズを、延長しています。


★この部分が、ドビュッシーの複縦線の部分に、

実は、照応しています。

これらは、「Metrum」 と「前奏曲」という概念にも、

深く、関係しており、

ドビュッシーが、バッハやショパンから、

なにを学んだかが、大変よく分かります。


★私のアナリーゼ講座は、曲がどう出来ているか、

機械的に冷たく、分析するためのものでは、ありません。

その音楽を、作曲家がどのように作曲し、演奏したか、さらに、

“どのように演奏されたいか”と望んでいたかを、探り、

私たち自身の音楽を、より豊かにしていくための、手段です。


★バッハ、ベートーヴェン、ショパン、ドビュッシーが、

どうして「天才」であったと、言えるのか、

その秘密の一端を、皆様にお伝えできれば、と思っております。


                       (グミの実)
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