音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■Bach はなぜ平均律第 2巻 8番を 「es-Moll」 でなく、 「dis-Moll」 にしたか■

2013-09-28 18:50:49 | ■私のアナリーゼ講座■

■第 6回「平均律クラヴィーア曲集 第 2巻・アナリーゼ講座」
  第 2巻 8番 dis-Moll 嬰二短調  prelude & fugue
~ Bach はなぜ 8番を 「es-Moll」 でなく、異名同音調 「dis-Moll」 にしたか ~

                             2013. 9. 28  中村洋子

 


 

 

私の作品 「 無伴奏チェロ組曲 4、5、6番 

Suite für Violoncello solo Nr. 4、5、6 」

Wolfgang  Boettcher
ヴォルフガング・ベッチャー先生 

演奏の CD が、

≪ アカデミア・ミュージック 
               03 (3813) 6751、 Fax 03 (3818) 4634 ≫

   https://www.academia-music.com/ 
でも、

お求めになることが、できるようになりました。

よろしくお願いいたします。

 

台風が過ぎ去り、美しい秋の空となりました。

澄み切った青さに、

思わず、見とれてしまいました。

9月 26日の講座では、台風の雨にもかかわらず、

たくさんの皆さまが、ご参加くださいました。

きっと、 「 Bach先生からのご褒美 」 があることでしょう。

 
★次回の第 6回講座は、平均律 第 2巻 8番 dis-Moll 

嬰二短調 prelude & fugueです。

prelude は、 2番 c-Moll ( ハ短調 ) 、5番 D-Dur に続く、

二部構成の曲です。

反復記号を伴った副縦線で、前半と後半が区切ら
れています。






★7番  「 Es-Dur」  に続く  8番がなぜ、 「 es-Moll 」 ではなく、

「 dis-Moll 」  なのでしょうか?

Bachはどうして、 「 es-Moll 」 の異名同音調  「 dis-Moll 」 を、

選択したのでしょうか?

 

★ちなみに、 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻で、

異名同音調は、
8番 prelude と fugue との間にあります。

ここ 1か所だけです。


8番 preludeは  「 es-Moll 」 であるのに対し、 

fugueは 「 dis - Moll 」  です。

8番という  「 一組 」  のなかでの、出現です。

第 2巻では、7番の次の 8番が、

 「 異名同音調の同主調 」 です。




 

★8番 fugue について、 Richter リヒテルは

「 これは、私が一番好きな
 fugue です 」  と 、語っています。

fugue の 第 1小節目冒頭、 8分休符の後に奏される、

8分音符の 三つの  repeated notes  ( subject 主題の頭部 ) 

「 dis  dis  dis 」  は、 “ 憂愁の雲 ” に閉ざされたように、

メランコリーです。



★しかし、これは実は、平均律 2巻 5番 D-Dur  fugue の

第 1小節目 冒頭の主題 「 d1  d1  d1 」  と同型なのです。

ここでは、弾けんばかりに明るく、

喜びに満ちた曲想です。


この第 2巻 8番という曲は、平均律 第 2巻 全 24曲のなかで、

ちょうど 3分の1の地点にあり、

ひとつの到達点と、位置付けることができます。

それゆえ、それまでの7番までのいろいろな要素が、

ここに注ぎ込まれているのです。

講座では、 異名同音調 とした理由を含め、

8番の全体像を、分かりやすくお話いたします。

 

 ★また今回は、Bach と同い年の Domenico Scarlatti

ドメニコ・スカルラッティ(1685 - 1757) のソナタについても、

二人の共通点と、大きく異なった
個性に触れながら、

少しお話する予定です。


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■ 日 時 : 2013 年 10 月 15 日(火) 午前 10 時 ~ 12 時 30 分

■ 会 場 : カワイ表参道  2F  コンサートサロン・パウゼ

■ 要予約 :
 Tell..03-3409-1958



 


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■ 講師 :   作曲家  中村 洋子 Yoko Nakamura

 

東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

 

2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

 

07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
        Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
     CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

 

08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
    CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

 

08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

 

09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
     ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

        「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」
              が、W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイ ム
              で、初演される。

 

10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

 

10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

     「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

 

11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
     ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
     チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」 を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
  

   スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、

    自作品が演奏される。

 

★上記の楽譜とCDは、「 カワイ・表参道 」   http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
「アカデミア・ミュージック 」 
https://www.academia-music.com/ で、販売中。 

 

    ※copyright © Yoko Nakamura    
                 All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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