音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ロギールさんの和紙 

2008-01-11 00:15:57 | ■楽しいやら、悲しいやら色々なお話■
■ロギールさんの和紙 

              08・1・11

高知の山里から、素晴らしい手漉きの和紙が届きました。

「檮原(梼原)」という町からです。

梼原は「ゆすはら」と読みます。

あまりおなじみのない名前かもしれません。

檮は、辞書によりますと「切り株」の意です。

しかし、町名は「ゆすのき」という樹木に由来しています。

かつてはこの「ゆすのき」がたくさんあり、町のシンボルでした。

材質が硬く、色も美しいので、箸や耳掻き用に使われ、人気があります。

★高知市から西、宿毛の方へ約30キロ、須崎という漁港に着きます。

ここから、バスで1時間半ほど、山道を北上してやっと到着します。

四万十川源流域で、昔は、高知のチベットともいわれた奥地です。

その先はカルスト台地が広がります。

最近は、「千枚田」という棚田や、風車などで、

観光的に有名になりつつあります。


★谷あいには清流が走り、緑濃い山の中腹に

黒光りする100年以上たった農家があります。

その主が、この和紙を漉いています。

名前はロギールさん、姓はアウテンボーガルト。

日本人ではなく、オランダ出身で、30年ほど前に来日しました。

月明かりで、薪の五右衛門風呂に入るのが大好きな人です。

奥様は千賀子さん。


★ヘラルド・トリビューン紙に包まれた障子紙を取り出します。

その色合い、奥深さに感動します。

白い色では決してありません。

淡い淡い土の色、仄かな仄かな枯葉色。

木、水、太陽、山の恵みが一枚の紙に、凝縮しています。

表面をそっと撫でてみます。

微細な羽毛のような感触。

太陽にかざしますと、柔らかい陽光に体がくるまれるようです。


★この障子紙のお部屋は、世の中の雑音を、

黙って吸収してくれるかのようです。

心が和み、癒され、落ち着いてきます。

和室、障子の真の価値は、

このような素晴らしい和紙を貼って、

初めて分かるのかもしれません。


★紙の原料作りから、最終仕上げまで、すべて

ロギールさんやご家族による、愚直なまでの手作業です。

楮や三椏は、川沿いで有機無農薬栽培します。

皮を剥ぎ、釜の中で石灰を加えて煮上げる工程も、

大昔からの方法そのまま。

手で丹念に叩いて叩いて、皮の繊維を分解する力仕事、

漉き上げた紙の、天日による板干しなど、一切手抜き無し。

紙に粘りを出すために加えるトロロアオイも、有機無農薬栽培です。

これほど伝統的な本物の和紙は、

多分あまり他では、お目にかかれないかもしれません。


★一般的に、手漉き和紙といっても、

電熱器で暖めたステンレス板に、漉いた紙を貼り付け、

簡単に乾かすのが多いようです。

ロギールさんの乾燥は、松の木の一枚板に、漉いた紙を

一枚一枚、丁寧に貼り付け、太陽の光で乾かします。

紙の耐久力がぐんと増します。

大きい松の板は、畳ほどあろうかという大きさ。

いまでは、こうした大きな一枚板は、ほとんど入手できず、

とても貴重だそうです。


★ロギールさんとは、ひょんなことからお知り合いになり、

かれこれ15年以上のお付き合いです。

私の「無伴奏チェロ組曲」などを聴きながら、彼は紙を漉きます。


★今回は、障子用の和紙をお願いしましたが、

私の家には、彼の作品がたくさんあります。

壁と天井の一部は、彼の和紙を貼ってあります。

「袋貼り」という古い技法です。

下地に2回も紙を貼り、

最後に、大きな和紙の端にのみ糊を付け、ふんわりと貼ります。

そのため、糊の付いていないところが、

ふっくらとした風合いを醸し、典雅です。


★彼は、また「行灯」や「灯り」作りの名人です。

山で自生する藤蔓(かずら)を組み合わせ、

それに和紙を貼り合わせます。

和紙から漏れる明かりは、この上なく暖かで、

幻想的ですらあります。

我が家では、この「行灯」がずっと玄関の主役です。


★檮原和紙 かみこや アウテンボーガルト・ロギール&ちかこ

TEL/FAX 0889-68-0355(紙漉き体験民宿かみこや)
       
かみこやブログ http://kamikoyat.exblog.jp/

かみこやのホームページ http://www4.ocn.ne.jp/~kamikoya/


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