音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■物問いたげに、G-d³の完全5度音で、前半の幕を閉じる第15変奏-ゴルトベルク変奏曲」アナリーゼ講座■

2016-08-04 23:54:09 | ■私のアナリーゼ講座■

■物問いたげに、G-d³の完全5度音で、前半の幕を閉じる第15変奏■
    ~オーボエ・ダモーレのTrioを髣髴とさせる第13変奏~
ー第5回「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」アナリーゼ講座ー
                 2016・8・4   中村洋子

 

 

★盛暑です、植木鉢のミニトマトも完熟してきました。

カラスがトマトを一つ嘴にくわえ、電線にとまっていました。

漆黒のカラスと真紅のトマト、

色彩のコントラストに、思わず噴き出しました。


★先週7月30日は、「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」の

第4回アナリーゼ講座、第10、11、12変奏でした。

遠方から遥々、受講にお出で下さった方もたくさんいらっしゃいました。


★ゴルトベルク変奏曲は、3曲ずつが1セットで、

各セットの三番目、つまり第3、6、9、12、15変奏は、

「カノン」となっています。


第3変奏は同度のカノン、第6変奏は2度のカノン、第9変奏は3度、

第12変奏は4度、第15変奏は5度のカノンとなっています。


調性の中で最も重要な音程である「3度」、「4度」、「5度」のカノンが、

この前半15曲の中に、含まれているといえます。

 

 


★≪3度≫につきましては、

Bachが「Wohltemperirte Clavier Ⅰ平均律クラヴィーア曲集 第1巻」の、

序文で自ら書いていますように、

≪調性を決定するために、最も重要な音程≫です。

 

★例えば、「c」を主音とした場合、長3度上の「e」を置きますと、

「C-Dur」、「c」の上に短3度上の「es」を置きますと、

「c-Moll」となります。


★「C-Dur」の音階は、「c d e f g a h」です。

短3音の旋律的短音階を書きますと「c d es f g a h」です。

つまり、音階の第3音しか、異なっていないのです。

音階の「第3音」が調性を決定するという一例です。


★そして、音階の第4音は「下属音」、第5音は「属音」です。

3度、4度、5度がいかに大切な音程かお分かりになると、

思います。


★その3、4、5度のカノンである第9、12、15変奏が、

前半15曲の中で、隠れた主役であるとも言えます。


★その12変奏の4度カノン、15変奏の5度カノンを、

導き出すのが、「Variatio10 Fugetta」(第10変奏「Fugetta」)

であるのです。

 

 

 

★第4回講座では、「Variatio10 Fugetta」を、

規範フーガ(学習フーガ)の様式で、私が作曲して演奏し、

Bachの雄渾な「Fugetta」と、比較していただきました。


規範フーガに則った「Fugetta」は、小奇麗で整っています。

こちらを良しとする方は、昔も今もいらっしゃるかもしれませんね。

なぜ、Bachがそのように書かなかったか、

そこにBachの天才があります。


★次回の第5回「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」

アナリーゼ講座は、前半の華となる第13、14、15変奏です。

これで講座の第1期は終わります。

 

 

■Bach「ゴルトベルク変奏曲」 アナリーゼ講座

第5回   変奏曲 第13、14、15番

・オーボエ・ダモーレのTrioを髣髴とさせる第13変奏

・一瞬の輝きの中に、様々な要素が絡み合っている第14変奏

・物問いたげに完全5度で曲を閉じる第15変奏

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■日時:2016年9月3日(土)13時半~16時半
■会場:文京シビックホール 練習室
■問合せ:アカデミアミュージック企画部 03-3813-6757
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★第5回は、前半15曲の最後のグループ、第13、14、15変奏です。

いよいよ佳境に入り、三曲が互いに火花を散らし燃焼します。


★第13変奏は、イタリア協奏曲の第2楽章と対比されることもあり、

流れるように優美な曲です。

オーボエ・ダモーレをソロとする華やかなTrioを髣髴とさせます。

曲の冒頭は、一度聴いたら耳から離れないような、

甘く切ない旋律です。

その源流は、初版譜を勉強しますと一目瞭然。

どのように変容し、この13変奏にたどり着いたかに、

驚かされます。


★第14変奏は、主題(Aria)3小節目の下降トリルに対応する形で、

冒頭1小節目に上昇トリルが現れます。

いやがうえにも、この作品のAriaが想起されます。

心を浮き浮きとさせ、一瞬の輝きのようにも聴こえる曲ですが、

実は、多種多様な要素が、複雑に絡み合っています。


★第15変奏は、前半の掉尾を飾る曲です。

1小節目のよろめき歩むような2度のモティーフは、

すぐに平均律第1巻14番フーガの対主題を思い起こさせます。

物問いたげに、G-d³の完全5度音で、静かに幕を引きます。

 

 

 


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