■Schumann 対位法の粋「トロイメライ」、「楽しき農夫」を読み解く■
~ KAWAI 金沢アナリーゼ講座~
2017.2.7 中村洋子
★立春、節分を過ぎましたが、寒い毎日です。
しかし、暮れそうで暮れない夕方を眺めていますと、
しみじみ日が長くなった、と実感します。
春間近です。
★ここ数日、毎朝のことですが、
ヒヨドリが我が家の窓ガラスの端にとまり、
嘴でガラスをでトントンと、突っつきます。
理由は分かりませんが結構、無粋な音、
春の訪れのノックではなさそうです。
★2月10日(金)は、 KAWAI 金沢でのアナリーゼ講座です。
Robert Schumann ロベルト・シューマン(1810-1856) の小品集
「Album für die Jugend, 子供のためのアルバム」Op.68 と、
「Kinderszenen 子供の情景」Op.15から、
よく知られた数曲について、お話いたします。
★ごくシンプルに、何気なく書かれてような曲に見えますが、
その中に、シューマンの作品の神髄、即ち、
「counterpoint 対位法」 の粋が凝縮されています。
★それを知ってこそ、本当の Schumannシューマンが弾けます。
また、それらの曲をご指導される際も、
それが前提となることは、当然でしょう。
★例えば、「Träumerei トロイメライ(夢)」、
冒頭の上声「c¹~f¹」が、どのように展開されているか見ているだけでも、
Bachの音楽と、いかに深い地下水脈で結ばれているかが、
よく分かるのです。
★楽譜につきましては、Robert Schumannの妻の
Clara Schumannクララ・シューマン(1819-1896)の意向が色濃く、
にじんでいます「Breitkopf & Härtel
ブライトコプフ・ウント・ヘルテル」版は、参考程度にします。
★私は、BärenreiterベーレンライターやHenleヘンレ版を使いつつ、
偉大な作曲家Gabriel Fauré ガブリエル・フォーレ(1845-1924)校訂の
「Revision par Gabriel Fauré 」(子供の情景:1915年刊)を主に勉強いたします。
この校訂版を読み込めば読み込むほど、
Robert Schumannの、そして、校訂したGabriel Fauréの偉大さが、
眼前に迫ってきます。
★是非、お薦めしたい楽譜です。
「子供の情景」:Durand は1915年刊、
「子供のためのアルバム」も同時期と見られます。
しかし何分、100年前の古い楽譜ですので、疑義があるところは、
BärenreiterベーレンライターやHenleヘンレ版で、お確かめになるのが
いいと、思います。
★「Träumerei トロイメライ」の冒頭を見てみましょう。
冒頭上声の「c¹-f¹」は、2小節目1拍目「c²-f²」まで、
静かに歌い上げていきます。
このモティーフがどの位置にあるかは、誰の耳にも明らかです。
★もう少し注意深く、耳と目を凝らしますと、
下声3小節目4拍目から4小節目1拍目にかけても、
「c-f」は、バス声部にさりげなく、
しかし、crescendoクレッシェンドを伴って、
1、2小節目の「c¹-f¹」、「c²-f²」に、呼応するように現れます。
★この4度 motif モティーフがその先、どのように変容していくか、
講座で詳しくお話いたします。
同時に、Fauré のフィンガリングのどこが偉大かも、ご説明します。
★この曲最後の24小節目2~3拍目バス声部に、「C-F」が、
「こだま」のように、名残惜し気に現れてきます。
★まとめますと、「c¹-f¹」、「c²-f²」、「c-f」、「C-F」、
つまり、属音と主音によって形成される「4度音程」が、
郷愁を呼び起こしつつ、見果てぬ夢のように、
次々と出現します。
ちなみに、「C」音は、Celloの最も低い減の開放弦の音、つまり、
最も低い音です。
Schumannは、「C-F」でチェロの低く暖かい響きを、
心の中で思い浮かべていたのかもしれません。
★そして、この motif モティーフは、何かを思い起こさせてくれます。
そう、「Album für die Jugend, 子供のためのアルバム」の
「Frohlicher Landmann,von der Arbeit zurückkehrend
楽しき農夫」の冒頭です。
★冒頭、バス声部の「c-f」は、アルト声部の「c¹-f¹」のカノンにより、
耳に焼き付きます。
★小品といえども、Robert Schumann ロベルト・シューマンの
「Counterpoint 対位法」 の粋といえる、これらの曲に、
じっくり取り組んでみましょう。
★私の著書≪クラシックの真実は大作曲家の自筆譜にあり≫の P256
Chapter 8「シューマンの音楽評論、音楽の本質を珠玉の言葉で表現」を、
お読み下さい。
Schumannが、やさしく分かりやすい言葉で、
毎日、音楽をどう勉強していくべきかを語りかけています。
★P259≪「子供のためのアルバム」は、シューマンの「インヴェンション」≫
でも、「Album für die Jugend, 子供のためのアルバム」Op.68
について、触れております。
Bachが「Invention」で、1番から2番、3番へと変奏させていったように、
Schumannも、第1番「Melodie メロディー」から motif を変容させ、
10番「Fröhlicher Landmann,von der Arbeit zurückkehrend
楽しき農夫」にたどり着いています。
「Invention」の学び方が応用できます。
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■中村洋子アナリーゼ講座
《「トロイメライ」や「楽しき農夫」を読み解き、どう演奏に活かすか》
~シューマンの「子供のためのアルバム」、「子供の情景」~
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★2016年の金沢アナリーゼ講座では、5回シリーズのBach「イタリア協奏曲」、2017年1月には「アンナ・マグダレーナ・バッハのための小曲集」を開催いたしました。
★バッハ以降のヨーロッパの大作曲家で、“Bachの後継者”でない作曲家は、一人もいません。
その申し子の一人「 Robert Schumann ロベルト・シューマン (1810-1856) 」の
≪Kinderszenen 子供の情景 Op.15≫と≪Album für Jugend 子供のためのアルバム Op.68≫から、
数曲選び、お話いたします。
★≪子供の情景≫からは、第1番「見知らぬ国々と人々」、第7番「トロイメライ」、
第13番「詩人は語る」等を取り上げます。≪子供のためのアルバム≫から、第1番「メロディー」、
第10番「楽しき農夫」、第4番「コラール」、第14番「小さな練習曲」について、解説いたします。
★いずれも小品ですが、Schumanの類稀な和声と対位法が、縦横無尽に張り巡らされ、
その天才が申し分なく発揮されています。
「アンナ・マグダレーナ・バッハのための小曲集」が小品であっても、
Bachの厳しい目で選び抜かれているため、それがまごうことなく“Bachの世界”であったのと同様、こ
の二つの小品集もSchumanがどういう作曲家であったのかを、くっきりと、私たちに提示しています。
雰囲気や感情だけで表現できる世界ではないのです。
怜悧で、考え抜かれた構造をもち、その構造故に本当の“詩”が生まれ出るのです。
勉強を続けていきますと、これは“Bachの曲”なのではないかとすら、錯覚します。
★それらをどう読み解き、演奏や指導に生かしていくか・・・。
大作曲家のGabriel Fauré ガブリエル・フォーレ(1845-1924)校訂版が、
何よりの道しるべとなるでしょう。
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■日 時 : 2月10日(金) 午前10時~12時30分
■会 場 : カワイ金沢ショップ 金沢市南町5-9
(尾山神社前 南町バス停より徒歩3分、有料駐車場をご利用下さい)
■予 約 : Tel.076-262-8236 金沢ショップ
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■講師: 作曲家 中村 洋子
東京芸術大学作曲科卒。
・2008~15年、「インヴェンション・アナリーゼ講座」全15回を、東京で開催。
「平均律クラヴィーア曲集1、2巻アナリーゼ講座」全48回を、東京で開催。
自作品「Suite Nr.1~6 für Violoncello無伴奏チェロ組曲第1~6番」、
「10 Duette fur 2Violoncelli チェロ二重奏のための10の曲集」の楽譜を、
ベルリン、リース&エアラー社 (Ries & Erler Berlin) より出版。
「Regenbogen-Cellotrios 虹のチェロ三重奏曲集」、
「Zehn Phantasien fϋr Celloquartett(Band1,Nr.1-5) チェロ四重奏のための
10のファンタジー(第1巻、1~5番)」をドイツ・ドルトムントの
ハウケハック社 Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。
・2014年、自作品「Suite Nr. 1~6 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲第1~6番」のSACDを、Wolfgang Boettcher
ヴォルフガング・ベッチャー演奏で発表
disk UNION : GDRL 1001/1002)
・2016年、ブログ「音楽の大福帳」を書籍化した
≪クラシックの真実は大作曲家の自筆譜 にあり!≫
~バッハ、ショパンの自筆譜をアナリーゼすれば、曲の構造、
演奏法までも 分かる~ (DU BOOKS社)を出版。
・2016年、ベーレンライター出版社(Barenreiter-Verlag)が刊行した
バッハ「ゴルトベルク変奏曲」Urtext原典版の「序文」の日本語訳と
「訳者による注釈」を担当。
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