音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■Sequenzの和声を手の内に入れると、和声が“指から湧き出てくる”■

2016-06-23 03:23:51 | ■私のアナリーゼ講座■

■Sequenzの和声を手の内に入れると、和声が“指から湧き出てくる”
 ~平均律1巻3番 Cis-Durに、目の覚めるようなゼクエンツが輝く~
          2016.6.23     中村洋子

 

 

★前回のブログで、Sequenz ゼクエンツについて書きましたが、

6月29日名古屋 KAWAI で開催のアナリーゼ講座

「平均律1巻3番 Cis-Dur」にも、目の覚めるような、

Sequenz ゼクエンツが、綺羅星のように輝いています


3番フーガを見てみましょう。

Sequenz ゼクエンツは、「嬉遊部」で見つけることができます。

嬉遊部につきましては、私の著書

≪クラシック音楽の真実は大作曲家の自筆譜にあり!≫の、

Chapter2  P41を、参照してください。

 

★まずは、7小節目から始まる「第1嬉遊部 Episode1」の、

7、8、9小節をご覧ください。

 

 

一見、複雑そうに見えますが、和声を要約しますと、

切ないほどに美しいSequenz ゼクエンツが浮かび上がります。

 

 


16小節から始まる「第3嬉遊部」も、和声要約しますと、

こんなにも美しいSequenz ゼクエンツになります。

 

 

Cis-Dur 嬰ハ長調ですので、調号は、♯が7つです

弾くことを躊躇しがちですが、まず、この和声要約を

ゆっくりと弾いてみましょう。

頭の体操にもなります。

何度も弾いてみますと、段々と慣れて手の内に入ってきます。

そして、その得も言われぬ魅力の虜になっていきます。

 

 


和声要約を自分のものにする(手の内)ことが出来た後、

嬉遊部を Bachの楽譜通りに弾いてみましょう。

和声が“指から湧き出てきます”。


★これらのSequenz ゼクエンツの和声につきましては、

講座で詳しくお話いたしますが、

もう少し先を見ますと、

「第5嬉遊部」の途中、31小節目から32、33そして、

34小節の前半までも、大変美しいSequenz ゼクエンツです。

 

 


★この譜例の、34小節目2拍目に、“Bach magicマジック”の、

「Ⅲの和音」が、現れます。

 

 


「Ⅲの和音」につきましては、私の著書

≪クラシック音楽の真実は大作曲家の自筆譜にあり!≫の、

Chapter7  P233 『Bach magic「Ⅲの和音」の凄さ、分析なくして

名演奏はあり得ない』 に、詳しく解説してあります。

 

 

 


★6月25日の「第3回ゴルトベルク変奏曲・アナリーゼ講座」で、

取り上げます「第9変奏曲」にも、

素晴らしい「Ⅲの和音」が、三回現れます。

最初は、2小節目の4拍目です。

 

 

2小節目3拍目は、「Ⅰの第2展開形」と「Ⅴ」の和音ですから、

大きく捉えますと、「ドミナント」です。

ということは、ドミナントはトニックを指向しますから、

本来4拍目は「Ⅰの和音」になるはずです。


★試みに、4拍目を「Ⅲ」の代わりに「Ⅰ」としてみましょう。

 

 

 


ダイアモンドの輝きが、鈍って聴こえます。

この場合、「Ⅰの和音」の代わりに「Ⅲの和音」を配置しましたので、

これを「代用トニック」と、呼びます。

 

25日「ゴルトベルク変奏曲」、29日「平均律1巻3番」の講座で、

Bach の「堅個な構成」を支える「繊細な和声」の“色彩”についても、

お話いたします。

 

 

 

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■バッハ 平均律 第1巻 3番 Cis-Dur Prelude& Fuga アナリーゼ講座
  ~平均律1巻3番は 当時の革新的な調性、
                       異名同音調Chopin「雨だれ」の源泉~

■日時 : 2016年 6月 29日(水) 10:00 ~ 12:30

■会場 : カワイ名古屋2F コンサートサロン「ブーレ」

■予約 : カワイ名古屋 Tel 052-962-3939

 

★初夏の早朝、飛び立っていくハミングバード(蜂雀)の羽音のような「平均律クラヴィーア曲集第1巻3番 Prelude Cis-Dur」は、調号に「♯」が7つある、Bachの時代には極めて珍しい、革新的な調性です。しかし、難解な曲ではなく、生きていることの愉悦を表現しているような曲です。 Bachは、「フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集」で、平均律1巻の前半(7番を除く)11曲のPreludeを、当時9歳を過ぎたばかりの長男のレッスン用にまとめています。

★そのうち、5、6、10番は平均律の前半のみですが、3番はほとんど省略せずに、フリーデマンに与えています。
子供にも、3番 Preludeを楽しみながら弾いて欲しかったのでしょう。
子供でも容易に弾けるようにするために、どのように勉強したらよいのか、そのカギは、やはり、Bachの「Manuscript Autograph 自筆譜」にあります。

★心が躍るような軽やかな曲想は、途切れることなく、3番 Fugaに引き継がれていきます。
この曲を理解し、容易に弾くためには、和声の理解が、欠かせません。講座で、分かりやすく詳しくご説明いたします。

★Frederic Chopin ショパン(1810-1849)と、Bartók Béla バルトーク(1881-1945)の両天才が、この曲につけたFingeringを見ますと、両者がFingeringで意図しようとしたことが、驚くほど似ています。天才を知るのは、天才だけなのでしょうか。
そのFingeringの意図を理解いたしますと、霧の中から建物が浮かび上がってくるように、演奏が、立体的に表現されます。

★Chopin ショパンの「雨だれ」(前奏曲Op.28-15)は、Des-Dur変ニ長調です。Cis-Durと異名同音調です。
「雨だれ」と、平均律1巻3番 Preludeとは、非常に多くの共通点をもっています。

★「雨だれ」の源泉は、実は、Bachの平均律1巻3番なのです。
その点につきましても、Chopinの「Manuscript Autograph 自筆譜」を、参照しながら、お話いたします。

 

 http://shop.kawai.jp/nagoya/lecture/pdf/lecture20160629_nakamura.pdf

 

 

 

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