音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■フーガ形式極致の第10変奏、軽やかな第11変奏、そよ風のような第12変奏■

2016-06-26 17:28:43 | ■私のアナリーゼ講座■

■フーガ形式極致の第10変奏、軽やかな第11変奏、そよ風のような第12変奏■
   ~第4回 Goldberg-Variationenアナリーゼ講座 のお知らせ~
                    2016.6.26  中村洋子

 

 

★6月25日の第3回「Goldberg-Variationen 

ゴルトベルク変奏曲・アナリーゼ講座」では、Johann Pachelbel

ヨハン・パッヘルベル(1653-1706)の、あまり知られていない

独奏鍵盤楽器の作品をいくつか弾き、

そこに現れてくる 「Sequenz ゼクエンツ」が、いかにBachに大きな

影響を与えていたかを、お話いたしました。

このPachelbelの曲は、聴く人の心を暖かく包み込み、

ホッと和ませるような作品です。


★Pachelbel パッヘルベル(1653-1706)は、一時期、

Eisenach アイゼナハに住み、Bachの父と親交を深め、

Bachの姉の名付け親にもなりました。


★幼いBachにとっては、優しい叔父さんのような作曲家で、

親近感と憧れをもっていたことは、間違いないでしょう。

 

 


ゴルトベルク変奏曲の30もの変奏曲が、

なぜ聴く人を飽きさせないのか・・・

凡庸な作曲家の作品であったならば、このごく単純な主題和声と、

各変奏曲の素材となる音型では、とても、

30曲を聴き、弾き通す作品は作ることができません。


Bachの構造のどこが凄いのか、お話いたしました。

これから、三曲ずつをじっくり勉強することで、

全体の大きな枠組みが、見えてくるはずです。

 

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第4回「Goldberg-Variationen・アナリーゼ講座」は、

  第10、11、12変奏曲です

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バッハの音楽はなぜ美しく、私たちの心をとらえて離さないのか・・・
人類の宝「ゴルトベルク変奏曲」が、どういう構造で成り立っているか、
一見、単純に見えながら、複雑に絡み合っているその「和声」と「対位法」を、
ピアノで実際に音を出しながら、詳しく分かりやすくご説明いたします。
本講座は、初版譜ファクシミリ(Fuzeau出版社)を基にして進めます。


 第4回講座では、

・フーガ形式の極致の第10変奏

・木管楽器のデュットのように軽やかな第11変奏

・高度な技法を感じさせない、そよ風のように優しい第12変奏

                                     の三つの変奏曲を掘り下げていきます。

 

第10変奏の冒頭、Bachは何食わぬ顔でFugetta(小フーガ)と、記しています。

 しかし、恐るべきフーガです。

 32小節の短いフーガですが、4小節の長さの主題が次々に8回登場します。

 前半16小節は、バス、テノール、ソプラノ、アルトの順で、

 後半はソプラノ、アルト、バス、テノールの順で、主題が奏されていきます。

 全体が32小節ですので、絶えず4小節の主題がどこかの声部に出現しています。

 単純どころか、フーガと対位法、調性とがダイアモンドの結晶のように

   一体となり簡潔にして緊密、フーガの技法の極致といえる曲です。

 また、変応(alteration)についても、分かりやすくご説明いたします。

 


第11変奏は、第2、5、8変奏のまとめとなっている曲です。

 第2変奏を源とし、第5変奏の要素を用いています。
 
 鳥の囀りのように軽やかで、木管楽器のデュエットを思わせます。

 第8変奏の16、32小節目の下行音階は第11変奏に直結しています。

 


第12変奏は、第3、6、9変奏に続くカノンです。

「反行形 Contrary motion」 による4度のカノンです。

 曲の前半は上声が先行し、4度下の反行カノンが1小節遅れで追っていきます。
 
 後半は内声が先行し、4度上の反行カノンが、やはり1小節遅れで

 追いかけていきます。

 しかし、その技法はいささかも難解には聴こえず、

 頬を優しくなでて通り過ぎていくそよ風のようです。

   見事です。

 

 


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■中村洋子・プロフィール

東京芸術大学作曲科卒。
・2008~09年、「インヴェンション・アナリーゼ講座」全15回を、東京で開催。

・2010~15年、「平均律クラヴィーア曲集1、2巻アナリーゼ講座」全48回を、
  東京で開催。
  自作品「Suite Nr.1~6 fur Violoncello無伴奏チェロ組曲第1~6番」、
  「10Duette fur 2Violoncelliチェロ二重奏のための10の曲集」の楽譜を、
  ベルリン、リース&エアラー社 (Ries & Erler  Berlin) より出版。

・2014年、自作品「Suite Nr. 1~6 fur Violoncello無伴奏チェロ組曲第1~6番」の
 SACDを、Wolfgang Boettcher

  ヴォルフガング・ベッチャー演奏で発表 (disk UNION : GDRL 1001/1002)。

・2016年 ブログ「音楽の大福帳」を書籍化した ≪クラシックの真実は大作曲家の
 「自筆譜」にあり!≫

 ~バッハ、ショパンの自筆譜をアナリーゼすれば、曲の構造、演奏法までも分かる~
  (DU BOOKS社)を出版。

・2016年、ドイツのベーレンライター出版社(Barenreiter-Verlag)が刊行した
   バッハ「ゴルトベルク変奏曲」Urtext原典版など、バッハ鍵盤作品楽譜の
 「序文」の
日本語訳と「訳者による注釈」を担当。

 

 

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第4回  変奏曲 第 10、11、12 番
■日時: 2016年7月30日(土)  14:00~16:30
■会場: 文京シビックホール、 練習室1(地下1階)
■≪申し込み・お問い合わせは≫
  アカデミア・ミュージック 企画部 Tel. 03-3813-6757
   E-mail. fuse@academia-music.com
   受付開始:6月29日

第5回の予定
  日時: 9月3日(土)  ※この回は開始時間が変更となります。
     これまでより30分早い  13:30 ~ 16:30 です。
     ※終了時間は変更ありません
     会場:文京シビックホール 練習室1(予定)

 

  

 

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             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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