音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■Chopin の Polonaise-Fantasie 幻想ポロネーズを、自筆譜から読み込む、No.2■

2013-07-19 19:01:23 | ■私のアナリーゼ講座■

■Chopin の Polonaise-Fantasie 幻想ポロネーズを、自筆譜から読み込む、No.2■
 ~ 冒頭の 「 23個の 拍節外 四分音符 」 の大きな役割 & 「 p 」 の位置~
                                    2013.7.19   中村洋子

 

 

 

 

★以下のURLは、私のアナリーゼ講座を熱心に受講されている方

のブログです。
http://glennmie.blog.so-net.ne.jp/

このブログで懸念されていることに、私も強く同感いたします。

どうぞ、ご覧になって下さい。


★世の中には、権威とされている 「 権威 」 が無数にあります。

本当の権威もあれば、

肩書にのみ頼って、内容の伴わない権威、

正しくないことを、さも正しいことのように、

心の隙間に、そっと囁きかけてくる権威など、

いろいろな権威が、あります。


たとえ 「 権威 」 のおっしゃっていることでも、

間違いがある、変なこと、おかしいことが書かれていれば、

それを 「 おかしい 」 と、普通に言う、

言うことができるブログは、必要であると思います。

「 普通に 言うことができる 」 、

それが、 「 表現の自由 」 と思います。

表現の自由は、空気のような存在です。

何より大切なことであると、思います。


★しかし、「 公益 及び 公の秩序 を害する 」 と、

法律を作る人たちに、勝手に判断され、

レッテルを貼られてしまいましたら、

どんな些細なことでも、

批判することができなくなる・・・


★人々が、経済的苦境で喘いでいるうち、

「 表現の自由 」 が滅びてしまう、怖い、恐ろしい世の中が、

知らない間に、横丁の曲がり角まで、

忍び足でやって来ていた・・・、

 そんな世の中になりそうな気配が、漂い始めています。


★“ 最近の政治を見ていると、

つくづく政治には失望した!、

投票に行っても何も変わらない、

選挙にもう関心がない!、

世の中どうなろうと、自分には関係ない、

なるようになるんです!〝 、

という人が増えている、といわれます。

選挙での投票率の低下には、目を覆いたくなります。

でも、その結果、とんでもない、取り返しのつかない、

被害を蒙るのは、私たちであると思います。

「 空気 」 がなくなれば、生きていけません。

7月 21日は、日本の将来にとって、歴史的な、

重い選択の一日、となりそうです。

 

 


Chopin の 「 Polonaise-Fantasie 幻想ポロネーズ 」 は、

驚くほど革新的で、未来を見据えた曲でありながら、

その根っこが Bach であることは、

まごうことなき事実です。


1、 2小節に横たわる、

≪ 拍節外の、23個の小さな四分音符 ≫ を、弾く時、

私はいつも、Beethoven ベートーヴェン(1770~ 1827) の

「 Klaviersonate Nr.17 d-Moll Op.31- Nr.2  "Tempest" 」

1楽章の序奏、 1、 2小節と  7、 8小節、

そして、展開部での 93 ~ 98小節での、

神秘的な Arpeggio を、思い出します。

Chopin と大変によく似た、記譜なのです。


★ Chopin の脳裏にも、

Beethoven のこの傑作が、あったことでしょう。

ずいぶん前のことですが、Valery Afanassiev

ヴァレリー・アファナシエフ(1947~)の東京コンサートで、

この Tempest の名演奏を、聴きました。

 

 

 


Chopin の、この 「 23個の 拍節外 四分音符 」 を、大きく、

くくりますと、 1個の和音に要約できます。

1小節目を例にとりますと、主調 As-Dur の同主短調 as-Moll の、

Ⅲ の和音  [ Ces - Es - Ges 変ハ、変ホ、変ト ]  の和音の、

Arpeggio なのです。


★[  6、 7、 8番目  ] → [  11、 12、 13番目  ]

→ [  21、 22、 23番目  ]

Des →  Fes → Es  ( 変ニ → 変ヘ → 変ホ )の順で、進行します。

この Des と  Fes は、 Es に対する changing note 倚音で、

非和声音です。


Claude  Debussy  クロード・ドビュッシー (1862~1918)は、

7、8番目に、「 5、 4 」 の fingering 、

12、13番目にも、「 5、 4 」 の fingering を、

書き込んでいます。


変ホ音 es1 と es2 は、「 4指 」 となりますが、

これは決して、弾きやすく、ミスタッチしないための

「 指使い 」 では、ありません。

「 4指 」 という 5本の指の中で、

最も繊細な指を、指定することにより、

Arpeggio の中で、この変ホ音楽が、

特別な意味をもっていると、

注意喚起しているのです。

遠くから、仄かに響いてくる鐘の音のように、

何かに、共鳴していることを、示唆しているのです。


★その 「 何か 」 とは、

1小節目冒頭 1拍目のソプラノ1点変イ音 ( as1 ) の

16分音符に続く、1点変ホ音 ( es1 )の、

付点 8分音符です。

Debussy は、この 1拍目の 1点変ホ音 ( es1 ) に、

「 3 」 の fingering を、記入しています。

これにより、この 「 1点変ホ音 ( es1 )」 の重要性を、

また、示唆しています。

それが、 2、 3小節目で新たに、展開していきます。

この点につきましては、後日当ブログで、

「 Chopin の counterpoint 」 として、ご紹介いたします。

 

 


★このように、実に重要な役割を担っている、

1、 2小節目の 「 23個の 拍節外 四分音符 」 について、

Chopin は、1拍目の  f  とは対照的に、あくまで、

仰々しくなく、さりげなく弾いて欲しいと、

考えていたようです。


★そのために、 Chopin は、 「 23個の 拍節外 四分音符 」 の、

最初の 4つの音符の上に、かぶさるように、

大きく濃く、 「 p 」 の記号を、書き込んでいます。


★そして、その 「 23個の 拍節外 四分音符 」 全体に、

まるで、真綿の細い糸を風にたなびかせるように、

軽く軽く、ふんわりと、 slur スラー の線を、引いています。

大きく濃い 「 p 」 は、 slur スラー の下に、置かれているのです。


slur スラー の下に、 「 p 」 があることが、重要なのです。

しかし、残念なことに、ほとんどの 「 実用譜 」 は、

p 」 を、 slur スラー の上に、無神経に置いています。

演奏される場合、どうぞ、

この点に留意して、弾いてください。


★私のアナリーゼ講座で、よく、

「 Debussy 版は、現在の実用譜と音が違っている

ところがあるが、どちらが正しいのでしょうか」 という質問が、あります。

Debussy は、100年近く前の 1918年に亡くなった方です。

この Debussy 版 は、 copyright by Durand & C ie, 1915年

と、なっています。

おそらく、晩年の Debussy は、

Durand 社から提供された 「 実用譜 」 に、

fingering 等を書き込んだのだと、思われます。


★そのたびに、ご説明しておりますが、

まず、 Chopin の自筆譜を基本とし、それにいくつかの 「 実用譜 」 を、

参考にして、その誤りを正しながら、 Debussy 版をお使いになるのが、

よろしいかと、思います。

 


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