■第 4回「 平均律クラヴィーア曲集第 2巻・アナリーゼ講座 」
第 2巻 6番 d-Moll prelude & fuga
~ Klavier Konzert が投影されている6番 prelude、厳しく豊饒な6番 fuga ~
2013.7.13 中村洋子
★7月 9日に開催いたしました、
第 3回 「 平均律 第 2巻・アナリーゼ講座 」 では、
「 第 3番 Cis-Dur 」 について、 “ ロンドン写本 ” と呼ばれる
「 London Manuscript 」 と、
ほとんどの実用譜で採用されている
「 Altnickol アルトニコル写本 」 とを、演奏しながら、
詳しく、比較分析いたしました。
★その結果、明確に分かりましたのは、
「 Altnickol アルトニコル写本 」 が、
「 London Manuscript 」 より、後期であることから、
こちらの方が “ 最終稿に近い ” 、あるいは、
“ 優れている ” という訳では、
決してない、ということです。
★この二つは、それぞれ別の
≪ version ヴァージョン ≫ として、存在しているのです。
どちらも、あたかも別々のストーリーを奏でるように、
展開しているのです。
Bachは、展開過程で異なった試み、構築をしています。
どちらも、説得力のある、
魅力的な筋道、となっています。
★従いまして、 2007年新版の Henle版のように、
編集者が、その両者を、恣意的に混合することは、
決して、すべきではないと思います。
★どちらの版を選ぶかは、それを演奏する奏者に、
ゆだねるべきなのです。
★Bach の 平均律 第 2巻の自筆譜は、24曲中 21曲が、
イギリスの British Library に、収蔵されています。
これが、 「 London Manuscript 」 です。
4番 cis-Moll、 5番 D-Dur、 12番 f-Moll は、
残念ながら、行方不明です。
★Bach の作曲意図を、直接くみ取ることが可能な 21曲は、
私たちに残された、貴重な人類の遺産です。
私の講座では、
Bach の肉声のような、この 21曲を勉強した後に、
羅針盤を持たない航海のようですが、
残りの 3曲を、分析します。
★ 「 London Manuscript 」 のうち、2番、6番、9番、15番が、
妻アンナ・マグダレーナAnna Magdalena Bach の写譜です
(9番は、夫婦の合作)。
また、11番の一部も Anna Magdalena の写譜です。
★今回の 6番 d-Moll は、Anna Magdalena Bach の写譜です。
しかし、彼女の写譜は、現代の尊大な校訂者と異なり、
夫の楽譜をひたすら忠実に繊細に写しています。
雄渾な Bach 自身の写譜とは、別の趣きがあります。
★この 6番 d-Mollの prelude は、
Bach の Klavier Konzert の Tutti と、
曲想が、大変によく似ています。
Klavier Konzert の音楽が、この 平均律 2巻 に、
投影されているのです。
ピアノという現代の楽器で、これをどう演奏すべきか、
詳しく、ご説明いたします。
★6番 d-Moll fuga は、
Bach の晩年の傑作群と共通の motive と内容をもち、
厳しくも豊饒な音楽です。
prelude と fuga をただ、並列して弾くのではなく、
両者をどのように、強く結びつけるかを、
お話いたします。
■日 時 : 2013年 8月30日 ( 金 ) 午前 10時 ~ 12時 30分
■会 場 : KAWAI 表参道 2F コンサートサロン・パウゼ
■予 約 : Tel. 03-3409-1958
■ 講師:作曲家 中村 洋子
東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。
2003年~ 05年:アリオン音楽財団 ≪ 東京の夏音楽祭 ≫ で
新作を発表。
07年:自作品 「 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
W.ベッチャー氏が演奏した CD 『 w.ベッチャー日本を弾
く 』 を発表。
08年: CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
CD ソプラノとギターの 『 星の林に月の船 』 を発表。
08~09年: 「 バッハのインヴェンション・アナリーゼ講座」
全 15回を開催。
09年 10月: 「 無伴奏チェロ組曲第 2番 」 が、W.ベッチャー氏に
よりドイツ・マンハイムで 初演される。
10~12年: BACH平均律クラヴィーア曲集第 1巻の全曲アナリ
ーゼ講座(24回) を、カワイ表参道で開催。
09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲
第 1番 」 が、「 Ries & Erler Berlin 」 ベルリン・
リース&エアラー社から出版される。
10年: CD 『 無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』 W.ベッチャー
演奏を発表。
「 Regenbogen-Cellotrios レーゲンボーゲン・
チェロトリオス( 虹のチェロ三重奏曲集 )」 が、ドイツ・
ドルトムントのハウケハック社
Musikverlag Hauke Hack 社から出版される。
11年 4月: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
チェロ二重奏のための10の曲集 」
が、「 Ries & Erler Berlin 」 ベルリン・
リース&エアラー社から出版される。
12年12月:「 Zehn Phantasien für Celloquartett
(Band 1,Nr.1-5) チェロ4重奏のための10の
ファンタジー(第 1巻、1~5番)」が、
ドイツ・ドルトムント Musikverlag Hauke Hack
社から出版される。
・ スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
自作品が演奏される。
★上記の 楽譜 と CD は、
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で、
販売中。
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