■平均律24番の延長線上にイタリア協奏曲が・・、Debussy とRavelの姿も■
2012.6.9 中村洋子
★アナリーゼ講座を、6月 15日 ( Kawai表参道 ) 、
18日 ( Kawai横浜みなとみらい )、27日 ( Kawai名古屋 )、
28日 (金沢県立音楽堂 ) で、開催いたします。
東京、横浜、名古屋は Bach 、金沢は Debussy ですが、全部、
異なった曲です。
しかし、異なっているものを同時に勉強するからこそ、
見えてくるものも多く、実り多き毎日です。
★特に名古屋での 「インヴェンション 8番 F-Dur 」 のアナリーゼ講座で、
特集します 「 Concerto nach Italienischen Gusto イタリア協奏曲 」 と、
表参道での 「平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 24番 h-Moll 」 との、
共通点 には、深い感動を覚えます。
★「 共通点 」 というよりは、平均律 24番の延長線上に、
イタリア協奏曲が存在する、とみるほうがいい、ということです。
平均律 24番 を勉強した後に、イタリア協奏曲を見ますと、
≪ 対位法 ( counterpoint ) と和声 ( harmony ) を、
どのように組み合わせると、 Bach 後期の素晴らしい、
革新的な響きが現出するか ≫ 、
その過程が、手に取るように、分かってくるのです。
★平均律 24番の前奏曲は、平均律第 1巻全 24曲の中では、
異色の曲です。
17小節と 18小節との間に、反復記号がありますので、
1 ~ 17小節を 2回演奏し、18 ~ 47小節 ( 曲の終わり ) を、
2回演奏します。
この binary form は、平均律第 2巻では、半数近くがこの形式です。
しかし、第 1巻では、この 24番のみです。
和声も、この 24番は 1巻の他の 23曲の様式とは、
少し、異なっています。
★24番 h-Moll の音階も、また、一筋縄で解釈できません。
楽典の教科書では、「 旋律的短音階の上行形は、第 6音と第 7音が、
半音上げられる 」 と、書かれています。
★24番の調 「 h-Moll 」 ですと、自然短音階
「 h - cis - d - e - fis - g - a -h 」 の 6音 「 g 」 が、
半音上げられて 「 gis 」 に、
7音 「 a 」 が、「 ais 」 になるはずです。
★24番前奏曲 Präludium の第 1小節目のバスは、
h-Moll の音階なのですが、何故か、
「 H - cis - d - e - fis - gis - a - h 」 となっており、
第 7音は、導音とはならずに、 「 a 」 のままです。
しかし、第 6音は半音上げられて 「 gis 」 となっていますので、
この音階は、旋律的短音階ではないばかりか、
第 7音のみ上げられる和声短音階でもありません。
9小節目のバスにも、全く同じ音階が現れます。
★第 4小節目でも、少し形は変化しますが、
この 7音が上行しない h-Moll の音階が、現れます。
★この音階の正体は一体、何なのか!
その答えが 「 Concerto nach Italienischen Gusto イタリア協奏曲 」 に、
あったのです。
そして、24番 と イタリア協奏曲 とを結ぶ線の延長線上に、
Claude Debussy クロード・ドビュッシー (1862~1918)、
Maurice Ravel モーリス・ラヴェル(1875~1937) の姿が、
浮かび上がってくるのです。
15日の表参道・アナリーゼ講座で、この点を、詳しくご説明いたします。
★平均律第 1巻全 24曲のアナリーゼ講座が、ここで終了しますが、
続いて始まります 「イタリア協奏曲・アナリーゼ講座 」 では、
Bach が、更にどのような道を辿っていったのか、
探究していく予定です。
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