■ Bach の源流 C.フィッシャー、そして、Debussyデルフォイの舞姫へ ■
2012.3.20 中村洋子
★明 21日は、KAWAI表参道での、 Bach 「 平均律アナリーゼ講座 」 、
第 1巻 21番 ≪ 変ロ長調 前奏曲&フーガ ≫ です。
★この 21番フーガが、
Claude Debussy クロード・ドビュッシー (1862~1918)
「 Préludes Premiere Livre 前奏曲集 」 の、
≪ デルフォイの舞姫 Danseuses de Delphes ≫ 、
≪ La Fille aux cheveux de lin 亜麻色の髪の乙女 ≫ に、
どんなに深く、影響を及ぼしているかについても、お話します。
★これまで、このアナリーゼ講座では、 後世の大作曲家への、
Bach の圧倒的な影響を、中心にみてきましたが、
3月 21日は、Johann Sebastian Bach ( 1685~1750 ) の、
≪ お誕生日 ≫ です。
★今回は、 Bach をバッハたらしめている先輩作曲家の、
「 Caspar Fischer (1656~1746) カスパール・フィッシャー 」 も、
取り上げます。
★ Bach の師は、父と長兄ですが、その背後で、
大きな翼を広げ、暖かく見守っていた人物がいます。
≪ Johann Pachelbel パッヘルベル (1653~1706) ≫ です。
父の親友で、家族ぐるみの交流があり、長兄が 15歳から数年、
内弟子として、師事しています。
★ Bach の伝記などを読まなくても、 Bach の作品を読みこなせば、
Pachelbel パッヘルベル が、 Bach の先生であることは、
一目瞭然です。
★それでは、 Caspar Fischer カスパール・フィッシャー と、
Bach との関係は、どうだったのでしょうか。
★日本の研究書には、判で押したように、孫引きで、
「バッハの平均律クラヴィーア曲集は、C.フィッシャーの、
『 Ariadne Musica アリアドネ・ムジカ ( 1702年出版 ) 』
という曲集を、モデルにした 」 と、書かれています。
★この画一的な、思考停止的な解釈に、
私は二つの点で、違和感を覚えます。
★1) この 「 平均律第 1巻 21番 」 は、C.フィッシャーの
「 Musicalishes Blumen-Büschlein 音楽の花束 (1698年出版) 」 に、
類似曲があり、アリアドネが基になってはいません。
2) 「 モデル 」 という語の意味を、 「 調の異なる 前奏曲とフーガを、
並べたもの( アリアドネは20の調 、平均律は24の調 ) 」 という点では、
同意できますが、何故、 Bach が、
「 Ariadne Musica アリアドネムジカ 」 や、
「 Blumen Büshlein ブルーメン ビュッシュライン 」 と、酷似した曲を、
わざわざ、平均律クラヴィーア曲集に、組み込んだのか。
★ Bach のような天才ならば、C.フィッシャーに似ていない曲を、
即座に、用意できたはずです。
★その答えは、
「 Blumen Büshlein ブルーメン ビュッシュライン 」 の初版譜と、
Bach 「 Wohltemperirte Clavier 平均律クラヴィーア曲集 」 の、
自筆譜を、じっくり見比べると、出てくるのです。
アッと驚く秘密が、発見できるのです。
これにつきましては、アナリーゼ講座でご説明いたします。
★ 「 平均律 第 1巻 21番 」 の市販楽譜ですが、
21番前奏曲については、「 Henle版 」 と、 「 Bärenreiter版 」 は、
珍しくも、完全にレイアウトが一致しています。
2小節目の真ん中までを、第 1段目に配置し、
2段目は、 2小節後半 3拍目から、始まります。
★5小節目の前半までを、 3段目に記譜し、
小節を途中で切断し、4段目は、5小節目の後半3拍目から・・・、
というように、何やらもっともらしいのですが、
Bach 自筆譜に見られるような、メッセージを込めた、
深い意味のある 「 小節の切断、レイアウト 」 とは、
完全に、似て非なるものです。
★ Bach 自筆譜では、
1段目は、2小節目の3拍目まで、
2段目は、2小節目の4拍目から4小節目の2拍目まで、
3段目は、4小節目の3拍目から、6小節目の1拍目まで・・・、
というレイアウトになっています。
そこに込められた意味については、講座で解説いたします。
★また、 「 Henle版 」 で、気付いた問題があります。
小節番号が、長年にわたって、訂正されず、
間違ったままの箇所が、あります。
2段目 2小節目後半の部分で、誤って 3小節の 「 3 」 と記され、
4段目 5小節後半では、 6小節の 「 6 」 と、書いています。
Andras Schiff アンドラーシュ・シフ の fingering が記されている
2007年版ですら、訂正されていません。
お気を付けください。
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