音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■アンナ・マグダレーナ・バッハのためのクラヴィーア小曲集■

2009-01-25 16:52:51 | ■私のアナリーゼ講座■
■アンナ・マグダレーナ・バッハのためのクラヴィーア小曲集■
             09.1.25 中村洋子


★明日は、旧暦のお正月です。

きょうは、「大つごもり」、樋口一葉の世界です。

明治の冬より、格段に暖かい東京の「年の瀬」です。


★明後日の1月27日は、カワイ表参道で、

6回目の「バッハ・インヴェンション・アナリーゼ講座」を、

開催いたします。

インヴェンション15曲、シンフォニア15曲の計30曲のなかで、

この各6番は、5番までの総まとめのうえ、さらに、

そこから、新しく出発する曲です。


★バッハは、そのように、緻密に計算をして、

全30曲を、編み出しました。

インヴェンションは、ゆるぎない設計計画の上に

成り立っている曲です。


★それに対し、バッハが2番目の妻である

「アンナ・マグダレーナ」に、贈った2冊の小曲集は、

バッハ自身の曲や、息子たちの作品、さらに、

当時、流行していた賛美歌やアリアなどの声楽曲、

「ゲオルク・ベーム」(1661~1733)、

「クリスティアン・ペッツォルト」(1677~1733)

=バッハ作曲とされていた有名なト長調のメヌエットの作曲者=・・・

などの作品、果ては、当時のフランスの巨匠「フランソワ・クープラン」

(1668~1733)の作品まで入っています。


★たくさんの子どもたちや愛する妻、お弟子さんたちと営んだ、

暖かい、音楽に満ちた家庭生活が、目に浮かぶようです。

ここには、インヴェンションで見せた、

一点一画を、揺るがせにしないバッハの姿ではなく、

良き父、夫であるバッハの姿が、垣間見られます。


★1巻は1722年の日付、2巻は1725年と記されていますが、

この2巻は、実際は、1725年から1742年まで、

書き続けられた、とされています。

1巻では、フランス組曲の1番~5番までの不完全な初稿と、

その他の幻想曲と変奏曲、オルガン・コラール

大バッハ自身のメヌエットなどが、収められてます。


★私たちが、「アンナ・マグダレーナ・バッハのための

クラヴィーア小曲集」をイメージする時は、実は2巻なのです。

ここには、先ほどの有名なぺッツォルトの

「メヌエット」ト長調&ト短調も、4、5番として入っています。

また、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハの作曲した

マーチ、ポロネーズなどの可愛らしい舞曲も、たくさんあります。

今回の講座では、インヴェンションの、楽曲と舞曲との関連も

お話いたします。


★この6回目アナリーゼ講座では、作曲者不明のメヌエット2曲を

取り上げますが、ここでの半音階は、まさに

大バッハの半音階なのです。

もし、この曲が、息子の作品であったとするならば、

まあ、なんと、凄い才能なのでしょう。


★日ごろのレッスンで、この曲を、きちんと丁寧に、生徒さんに

指導されますと、その生徒さんが、

インヴェンションを学び始めたとき、

バッハの音楽が、決して「堅苦しく、難しい」ものではないと、

受け止められることでしょう。


★この曲集の優れたCDは、数多くあると思いますが、

たまたま、聴きましたものを1枚、ご紹介いたします。

トラジコメディア(スティーヴン・スタッブズ主催)という

演奏団体による「アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳」

[第2巻(1725)他より 全30曲収録])というCDです。

WARNER CLASSICS BEST100  WPCS-21072


★この曲集を、リュートやヴィオラ・ダ・ガンバ、オルガン、

アルパネッタ、ダブル・ハープ、トリプル・ハープ、そして、

声楽で、演奏しています。

肩肘張らない演奏も、楽しく、お稽古にいらっしゃる生徒さんに、

このCDを、すこし、聴かせてあげるのも、いいかもしれません。


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