だって、人間だもの。
相田みつをじゃないけど、そんな風に思ってしまった。物語としては決して面白くはない。でも心に引っかかる1本だった。
基本的に描かれるのは、あのアウシュビッツ収容所のすぐ隣にある所長の家の何気ない、幸せな日々だけ。塀1枚を隔てた隣で行われた世界史上に残る惨劇は音だけで表現される。それを狂気と表現している人がいたけど、自分はそうは思わなかった。所長は与えられた仕事をひたすら真面目に遂行していただけだし、家族はそのおかげで夢に見ていた楽園での暮らしを手に入れていたのだ。
人間は見たいものだけを見るし、聞きたいものだけを聞く。いろんなイベントでそのことは実感してきた。その感覚を左右するのはパーソナリティだけでなく、時代の空気や環境も。表現の仕方としては、こうしたら?がいくつもあったけど、切り口やチャレンジとしては魅力のある作品だった。