のらやま生活向上委員会 suginofarm

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枝をつなげる、未来につながる(のらやま通信248/1507)

2016年04月28日 | 今年の梨づくり

 農業技術の進歩はめざましいものがある。明治時代以降、それらの進歩は日本の農業経営の成長に大きく貢献してきた。農業機械や施設の開発・改良、栽培技術の改善は生産体系を大きく変え、大規模経営を可能にさせた。さらには肥料や農薬、品種改良等、生産者だけでなく農産物自体、消費者自身にも直接影響を与えるものまでも大きく変わってきた。
 日本における梨栽培は他の果物と比べても歴史は古い。弥生時代にはすでに食べられていて、日本書紀にも栽培の記述が残っているほどだ。現在の梨栽培の主流である棚仕立て栽培は江戸時代から始まったと言われている。明治時代に日本の農業技術が進歩し始める以前に、すでに梨栽培の技術の進歩は始まっていたのである。そんな棚仕立て栽培は整枝法の確立と剪定技術の向上により150年の歴史にわたって続いてきている。しかしながら高品質品種の登場による剪定技術の複雑化で作業効率が悪くなってきているという問題もある。
 現在、棚仕立て栽培を進化させた樹体ジョイント仕立て法(以下、ジョイント栽培)が全国各地の果樹園で拡がってきている。この樹体ジョイント栽培は神奈川県農業技術センターが梨の早期成園化、省力・低コスト栽培技術開発に向けて研究が進められてきたものである。わが家のある千葉県東葛飾地域では手で数えられるくらいの農家がジョイント栽培を取り入れている。その数少ない農家の中に加わろうと、わが家でもジョイント栽培を試験的に一部に導入しようと決めた。ジョイント栽培とはどういうものなのか。今までの1本樹(慣行)の場合、腕となる主枝を2本、または3本出し、そこにさらに細い枝(側枝)を何本も出し実をつけるというもので、たくさんの実を付け収穫量を上げるのに時間がかかった。ジョイント栽培は腕となる主枝を一直線にし、さらには隣同士複数の樹を接ぎ木で連結し、直線状の集合樹として仕立てあげる新しい仕立て方法だ。慣行では1本の力で養分を汲み上げていたものを、ジョイント栽培で集合樹とすることで複数の力で養分を汲み上げ均等に巡り渡せられるようになるのだ。樹をヒトに見立て簡単にイメージしてもらうと、慣行の場合、腕を大きく拡げているヒトが何人も園内に点在し、それぞれが自分のエリアを確保している状態である。ジョイント栽培はというと、何人ものヒトが肩を組んだ列が複数列あるというもの。慣行が「自分のために」だったものが、ジョイント栽培では「一人はみんなのために、みんなは一人のために」となる。ジョイント栽培の最大のメリットとしては作業動線の単純化により作業の効率化をはかれること、早期成園化を目指せることだろう。
 そんなジョイント栽培をわが家も取り入れることになったのは理由がある。1つは樹の老木化により収穫量のピークが過ぎたことで早期成園化を目指したいこと、もう1つは近年悩ませられている白紋羽病という病原菌の問題である。白紋羽病は梨だけでなくリンゴや柿、ブドウなど、すべての果樹の根に影響を与える病気である。それがジョイント栽培で根に与える影響を軽減できるのではないかと考えている。
 わが家は上図のように連結はまだしていない。これをするために苗木を生育している段階である。翌春、もしくは翌夏に接木し連結する予定でいる。
●全く新しい栽培技術
 梨の新しい栽培技術はジョイント仕立て法だけではない。栃木県の農業試験場で開発され各地に普及し始めている盛土式根域制限栽培だ。初期費用に相当かかるのだが、植え付け3年目で3t/10aの収量を見込める方法となっている。この栽培方法では地面にビニル、底面給水の塩ビ管と給水マット、遮根シートの順に敷き、培土を盛り、そこに苗を植え、さらに盛土はビニルマルチで覆う。実際の畑の土の上に遮根シートを敷き盛土する。施設栽培のトマトやイチゴのように梨も作ってみようという今までとは全く違う栽培方法となっている。わが家のような白紋羽病に悩まされている圃場でも問題なく栽培可能になる。
 慣行にしてもジョイントにしても根域制限にしても、それぞれの優劣を考えながら取り入れていきたいと考える。   

(2015年7月)

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