前日の日本女子のソフトボールの快挙の余韻が残る中、せっかくその祝祭的な気分に、冷や水を浴びせるような星野ジャパンのぶざまな敗戦には、今回の北京五輪で、全競技を通じて最も腹立たしく、くやしい思いをさせられた。
某月某日(金)
午前中の議会運営委員会が終わり、昼休みになった。
例によって応接室のテレビをつけて、数人で昼食をとりながら野球を観戦。
「あ、勝ってますよ、日本が」と、若手のYクンの声がはずむ。
星野ジャパンは、1回表に先制の1点をあげていた。
僕たちが見ている間に、日本は青木のタイムリーで加点し2点のリードを奪った。ここからじわじわと点差を広げ、韓国の息の根を止める…理想的な展開に見え始めたとき、4回に杉内が打たれ、併殺崩れで1点を返された。2対1。ここで1時のチャイムが鳴り、テレビを消して、みんな後ろ髪引かれる思いで事務所に戻る。
僕は1時15分から出張に出なければならなかった。
市議会議長、副議長の2人と、大阪城横のKKRホテルで開催された府下の総会に出席するためである。黒塗りの公用車の助手席に乗り込んだ僕は、車についているテレビを運転手さんにつけてもらい、野球の続きを見た。画像が悪く、画面左上に出ているスコアなどの細かい数字は見えなかったけれど、2対1のまま進んでいることは間違いなかった。できることならこのまま車に乗り続けて野球を見たかったけれど、そうもいかない。車はすぐにKKRホテルに着いた。あ~ぁ。
会議の開始は2時だ。大阪府下33市の正副議長ら関係者がずらりと並ぶ中、うちの市は副会長だったので、正面に、居並ぶ会員市と対面する形で席がセットされている。そんな目立つ席に着いて緊張が漂う空気の中、開会直前にズボンのポケットの携帯がブルブルっと振動した。周囲にわからぬよう、こそっと携帯を取り出して見ると、いつもメールをくれる知人から「7回。2ー2の同点に追いつかれた」との情報。「ふぅ…」とため息を漏らしてまた姿勢を正し、総会に集中。
2時15分、またメールが入ったので、またこっそり見る。
8回で2対2だが、投手が岩瀬に代わって、打たれている、という。
2時20分過ぎに総会は終了し、第二部の講演会に移るまでの約20分間、ロビーで時間待ちだったが、そのロビーのソファに座るか座らないかのうちに3度目のメールが届き、それを見て僕は天井を仰いだ。
「8回、李に2ランホームランを打たれ2-4に逆転される」
がっかりしながら、正副議長と共に、第二部の講演会に出席した。
講師は、日曜日の朝、関口宏が司会する「サンデーモーニング」などでおなじみのコリア・レポート編集長、ピョン・ジンイル(辺真一)さんであった。
「アジアの風を読む」と題した1時間の公演だったが、ピョンさんは冒頭で、
「私は韓国人ですが、日本生まれなので、野球は日本を応援しています」
と、いきなり、いまやっている野球の日韓戦のことに触れた。
なになに…? と、そのことで頭がいっぱいの僕は、がぜん身を乗り出して聴く。
「私は中日ドラゴンズの大ファンで、球場へもよく応援に行きます。でも…」
と、そこでピョンさんは少し苦笑いを浮かべ、
「今やっています日本と韓国戦は、2対2の同点で、ウチ(中日)の岩瀬が出てきましてですねぇ…、それがですねぇ、なんと、巨人にいる李に2ランを打たれちゃって、4対2で韓国にリードされちゃったんですよ」
会場が一瞬どよめいた。みんな、今日の野球のことは気になっているんだ。
僕はメールで、すでにそのことは知っていたけれど。
ピョンさんは、会場の人々に向かって、
「どうも、うちの岩瀬が打たれてしまって申し訳ありません」と、笑いながら壇上で頭を下げた。会場にも、笑いが起こった。僕もつられて笑ってしまった。
しかし、笑っている場合ではないのである。
講演中にも「2-6。G・G佐藤に再びミス。ガンガン打たれている」とのメールが届き、その後、「負けちゃった」とのメールが入って、万事休した。
もう、今日は夜のテレビのニュースはいっさい見まい。
李の本塁打のシーンなど、見たくもない。絶対に、見ないのだぁ!
そう固く決意をして帰宅したのに、ビールを飲み始めると、ちょっと怒りが鎮火して来たか、NHKのニュースで野球のダイジェストを見てしまった。しかし、出るはため息ばかりである。この試合、韓国の李に対してはそれまで14球すべて外角球を投じて討ち取っていたにもかかわらず、岩瀬、矢野のバッテリーは、このときに限り、内角低目で勝負をし、ホームランを打たれた…というような話を聞くと、またムカついてくる。岩瀬も矢野もアタマ悪いんちがうか…というグチまで出てくるのである。まあ、僕は巨人ファンだから、巨人の4番を打つ李が中日の岩瀬から本塁打を放つと、通常なら拍手しているところだ。しかし、こんなところでなぁ…。
李も、巨人ではアカンくせに、こんなところで打つなよ。ほんまに。
野球で韓国に連敗するなどとは、あまりにもくやしい。前日のソフトボールは、上野投手と心中するという悲壮な覚悟が全員にみなぎった気力の勝利だった。しかし星野Jには、最後までその気迫は見られなかった。投手も顔見世興行のようなこまぎれの起用で、「こいつに任せた!」という軸になる投手をつくらなかった。左打者が続くから左の岩瀬を…という芸のない継投策にも疑問が残る。野手の中でも、日本選手をグイグイ引っ張っていく選手がいなかった。
結果論だろうけど、星野ジャパンも、先日1勝も出来ずに予選落ちしたサッカー男子の反町ジャパンも、要するに選手たちが甘やされているのである。ほかのオリンピック選手と違い、彼らはいずれもプロである。日常からプロとして厚遇されることに慣れきっている。監督も含め、いわゆるハングリー精神のかけらもないのが野球とサッカーの選手たちなのだ。それと、星野監督は、山本浩二や田渕という仲良し友達をコーチに選んだことで、知らず知らず自らへの厳しさも見失っていたようにも思う。和気藹々ムードというのも、時には必要かもしれないが、しかしその程度のチームワークでは、韓国選手にほとばしる壮絶なまでの気迫には、とうてい対抗できないだろう。
今回の日本は、キューバにも米国にも敗れ、韓国にはご丁寧にも2回とも敗れるというみっともない成績で、これはもう、運とか勝負の流れの問題ではなく、力が劣っていたと認めるしかない。それが、何よりもくやしい。
あぁ…。出るのはグチばかり。
今日のアメリカとの3位決定戦は、もう見ない。見たくもない。
負けたらまた腹が立つだろうし、逆に日本選手が力を発揮してアメリカに快勝したとしても、今頃なに元気出しとんねん、と文句が言いたくなるだろうから…。
夜は、ニュースのあと、7時半から陸上競技があったので、テレビをつけて見ているうち、うつらうつらとしてきた。
「リレーがはじまるよ」という妻の声に起こされて、またテレビを見る。
塚原、末続、高平、朝原の出場するリレーだ。
その陸上男子400mリレーは、アクシデントが続発していた。
予選で、16チーム中6チームが失格したり、ゴールできなかったりしたという。
去年の大阪の世界選手権で優勝したアメリカがバトンを落としただけではなく、ナイジェリア、ポーランド、南アフリカ、さらに世界選手権3位のイギリスまで失格する中で、日本は堅実にバトンリレーをして3番目の記録で決勝進出を果たした。
日本は千載に一遇の好機を迎えたわけだ。
そして、星野Jのようにその期待を裏切るもことなく、4人はそのチャンスを見事にモノにして、バトンもスムースにつなぎ、全員力を出し切って、ジャマイカ、トリニダード・トバゴに次ぐ3位に入ったのである。
銅メダルだ。バンザ~~~イ!
日本人が陸上のトラック種目でメダルをとったのは、実に80年ぶりだそうである。
80年前といえば、オランダ・アムステルダムオリンピックである。
10何年か前にアムステルダムへ行ったとき、観光バスで、ガイドさんが
「ここがオリンピックスタジアムでございます。むかし、日本の織田幹雄さんが三段跳びで金メダルをとり、人見絹江さんが800mで銀メダルをとったのが、このスタジアムでございます」
と紹介されて、おおぉ、ここが! と窓に顔をくっつけて外を見たのを思い出す。その後、僕は人見絹江自伝「炎のスプリンター」という本を読んで、当時のオリンピックと、今とのあまりの大きな違いに信じられない思いを抱いたことがある。
その人見絹江さんが、1928年…というから昭和3年(うむ。母が生まれた年だ) に行われたアムステルダムオリンピックで、800メートルに出場し、銀メダルをとって以来のトラック種目でのメダルを、昨日のリレーチームは獲得したのである。80年ぶりですよ、80年ぶり。
これも歴史的な快挙として、記憶に刻んでおきたい。
星野Jの野球では勝利の女神に見放され、くやしい思いをしたけれど、陸上のこのラッキーな銅メダルは、予想もしなかった朗報だ。
陸上競技ファンのはしくれとして、メチャうれしい。
捨てる神あれば拾う神あり。
禍福はあざなえる縄の如し。
世の中、悪いことがあったら、次にはいいことがある。
そんなことで、夜は寝そびれて、まだ(1時をまわっている)起きています。
オリンピックはやはり何といってもNHKですね。
民放は、見ていて腹が立ちます。
今日は陸上で、女子の走り高跳びがありました。
この種目、女子のフィールド競技で一番魅力がありますね。
みんなすらりとして足が長く、ヨーロッパの選手が多いので美人が多いし。
そして、あの2mのバーを飛び越える醍醐味は、なかなかのものです。
今日は世界記録を破ろうかという有力選手が出ていたのですが、残念ながら2位に終わりました。僕の好きだった女優のマリサ・トメイに似ていました。
この世界記録(2メートル09)を持つのは、ブルガリアのコスタディノワという人で、80年代に活躍した選手です。僕は、これまたこの選手の大ファンでして、長居陸上競技場でグランプリがあったときには、そばでじっくり見ました。
昔の女優、篠ひろ子に似ていました。
僕は篠ひろ子ファンだったので。
…なんの話や。
自分のことばかり延々と書き続けて失礼しました。
日頃めったに起きていない時間なので、ちょっと狂ってきたのかも。
もう寝ます。おやすみなさい。
負けてよかったと思います。
「金しかいらない」と言って北京に乗り込んだのに、中途半端に銅メダルなんかをとって、「メダルの色は違っても、よく頑張ったです」なんてマスコミが言うのを聞くのって、なんだかイヤですものね。
徹底的に負けたらいいのです。
トラックでのリレーのメダルは、世界に誇れます。
これだけは、いくら中国だって、韓国だって、真似ができないでしょう。
辺真一さんは高感度…じゃない、好感度した、ということですので、さっき、記事の中に、携帯で撮影したその講演会の辺さんの写真を追加して載せましたので、ご覧下さい。
全くの色気抜きですよ。
少し見直しました。yukariさんは詳しいことまでよくご存知ですね。彼の師匠のこと、作品の特徴まで教えて頂きありがとうございました。
いずれ、彼はこの世界で報道カメラマンとしてブレイクするのかも知れませんね。
一度彼の作品をチェックしたいですね。
昨日も仕事で今日も仕事だったので星野野球見てませんが、見なくてよかったですわ。
最低ですね。最初の予想のように余り期待すべきではなかったのです。
あああ、GG佐藤の落球ばかり、ぼこぼこ岩瀬、もういいですわ。期待したほうが悪いのです。
この関係のニュースは見たくない!です。
それにしても、巨人の李はなんという男ですか!
ネットでホームランの写真見ましたが、凄みがありましたね。まるで悪魔(言いすぎかもしれませんが)の使いみたいな顔をしてました。日ごろ少しも打たないのに!
ノンさんの言うように、最後のリレーは良かったですよ、感動しました。
後味の悪い星野野球は忘れたいけど、一生、尾を引くかもしれませんね。日本の選手とおんなじように。
オリンピックもいよいよ総決算ですね。今、昨日のリレーの録画をやってましたが、何度見てもいいですね。但し、やはりNHKですね。民放は駄目ですわ。
これを星野野球でやって欲しかったです。
野球に気をとられ過ぎて、大好きな陸上の方に目をやるのが、少しおろそかになったことを反省しています。
でも、今回は、すでに峠を越したと思われる朝原と、スランプが続く末続では、リレーも決勝進出は無理だろうと思っていました。
去年の6月、大阪長居で行われた日本陸上選手権に3日間通い詰めて観戦したのですが、そのころはまだ望みがつなげました。しかし2ヵ月後の大阪の世界陸上では日本は不振を極め、これでは1年後の北京は厳しい、というのが正直な感想で、さらに最近の低迷で、期待できる要素がなかったのです。それが、幸運も手伝ったとはいえ、頑張って、まさかの銅メダルを獲得したのですからうれしかったです。
トラック競技80年ぶりということですが、男子では史上初ですよね。
あきらめてはいけない、というお手本のような感動のメダルでした。
それだけでも、この五輪の価値があったというものです。
塚原は日本選手には珍しく闘志を前面に出す選手で、頼もしい限りです。
今の日本人選手には、この闘志がちょっと欠けているように思えますのでね。
好感度でした~
もうメダルなんて貰っても貰わなくていいや~といった開き直りです(苦笑)
負けてもがっかりもせず・・です
100×4は本当に素晴らしかった
あかべえさんと同じく為末さんを見たときうるっときました
塚原選手のスタート時のパフォーマンスは「おぅー気合い入ってるな、頑張れ~」と見てましたが苦言を呈した人がいたとは驚きです。
トラック競技は黒人選手の一人勝ち。その中に日本人がいるのですからすごいよ。
辺真一さんは私の中ではかなり高感度しました~
昨日の私は、陸上の400mリレーのみに注目していました。念願の銅メダルを獲得した瞬間は、のんさんと同じく思わず歓喜の声を上げていました。ネット上の掲示板でも多くの方が日本の陸上短距離を牽引してきた朝原選手を礼賛していましたが、本当にそう思います。
その一方で塚原選手のレース前やインタビューの態度に苦言を呈する方がいました。でも、彼は今回が初めてのオリンピックでメダルが掛かったリレーだったことを思うと極度の緊張状態のでしょう。その中で自分を鼓舞し、闘志をかき立てるために撮影する長々と映していたカメラに向かってああいうパフォーマンスをしてしまったのではないかと思えました。
インタビューも緊張から解き放たれて一気に感情が溢れてしまったのではないかと思うと責める気持ちにはなりませんでした。スタンドで見ていた為末選手のように、不覚にも涙が出ました。
ところで、ある方のコメントを見て改めてVTRで見ると、ゴールを駆け抜けていった選手がチームの数よりも1人多いことに気がつきます。何とジャマイカの第3走者のボルトがパウエルにバトンを渡した後、再び走り始めて最後尾の選手に迫っていたんですね。正に「ボルト恐るべし」……です。