そこそこの放送作家・堀田延が、そこそこ真面目に、そこそこ冗談を交えつつ、そこそこの頻度で記す、そこそこのブログ。
人生そこそこでいいじゃない



岳 (1)

小学館


某番組の会議で「最近どのマンガが面白いか?」という雑談になった。

結構みんなマンガを読んでいるのだ。
それこそ30歳を超えたいい大人ばかりだが、みんなマンガを読む。

僕はここ10年、マンガをほとんど読まなくなった。
だが、運転免許を取る前、電車で移動していた頃は、駅の売店で毎日一冊マンガ雑誌を買っていたもんだ。
車で毎日移動するようになった途端、その習慣はなくなってしまったけど。

なので、僕はここ10年ぐらいのマンガに疎い。

とはいえ、後輩作家に薦められて、以前「カイジ」は読んだ。
これは、なかなか面白かった。
後輩の薦めで「ジョジョの奇妙な冒険」も全巻揃えて読んでみた。
これは、途中で断念してブックオフに売った。
「スラムダンク」は最後まで面白かった。
「デスノート」も最後まで面白かった。
でもまぁ、ここ10年のマンガで読んだのはそんなもんだ。

で、みんなの話を聞いていると、オススメは「20世紀少年」らしい。
調べたら22巻も出ているので、後回しにすることにした。
で、「岳」というマンガがあると聞いた。
これは山岳救助隊のマンガだという。
僕は高校時代、山岳部だったので、この作品に興味を持った。
幸い、まだ4巻しか出ていない。
早速購入して読破した。

なるほど面白い。
おそらく本格的な登山の経験がある僕の方が、普通の読者より数段面白く感じるはずだ。
そして、読んでいるうちに、高校時代のことを思い出した。

たしか今から21年前の夏、17歳だった僕は、白神にいた。
今は世界遺産に登録されている、秋田と青森の県境にある白神山地だ。

あの夏、白神山地に行けたのは、今思えば貴重な体験だった。
今や世界遺産の「コアゾーン」に指定され、許可なく立ち入ることが出来ない白神山地の中核部分を、僕らは踏破したのだから。

白神山地の中核部分には、登山道なんてないのだ。
地図だけを頼りに、道なき道を行く。
ダケカンバの密集した尾根を、ヤブをかき分けて進み……
足を滑らせれば死にそうな源流をわらじを履いて下り……
10メートルはあろうかという滝を降り、急斜面を高巻きし……
ようやく開けたなだらかな清流地帯に降り立つと、川を渡る僕の足に逃げまどうイワナの群れがピチピチと当たった。

そう、あまりにも人里遠く、自然が残されている白神の「コアゾーン」では、渓流魚が足に当たるのだ。
魚影が濃すぎるのだ。
米粒をエサに釣り糸を垂れるだけでイワナが入れ食いなのだ。
こんなこと、普通の渓流ではあり得ない。

あの手つかずの大自然。
どこまでも続く原始のブナの森。
その後世界遺産に認定された白神山地だが、今も当時のままなのだろうか?
また行ってみたいなぁ~と思うが、体力的に無理だろう。

マンガ「岳」は山岳遭難救助の数々を描いている。
そして僕らも白神山地で遭難者を救助した。
雨で体力を奪われ、白神岳直下の源流部でビバークしていた2人組の登山者を発見し、白神岳山頂まで誘導したのだ。
山での遭難は、何も冬山だけではない。
夏でも、豪雨に見舞われれば、体温は急速に低下する。
体力は無情に奪われる。

山は美しいが、こわい。
僕も実際、この白神山行の途中、崖から滑り落ち、死にかかった。
斜面を滑り落ちていく僕の背中のリュックを同行者がつかんでくれたから助かったが、あのまま落ちていたら、20メートル下の岩肌に打ち付けられ、よくて複雑骨折、打ち所が悪ければ即死していた。

この「岳」というマンガ。
しばらくブックオフに売らずに、うちの本棚に置いておくことにした。

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