そこそこの放送作家・堀田延が、そこそこ真面目に、そこそこ冗談を交えつつ、そこそこの頻度で記す、そこそこのブログ。
人生そこそこでいいじゃない





今年の1月に日本でも公開された韓国の航空パニック映画。
致死ウイルスを使ったバイオテロによって、ハワイ行きの旅客機内がパニックになる。
イ・ビョンホン、ソン・ガンホという日本人にもお馴染み二大スターが共演。
Amazonプライムに来ていたので観てみた。
その感想。

これはね、盛り込みすぎ。
2時間半とかある映画なんだけど、とにかく長く感じる。
最初の1時間ぐらいは、ものすごく面白い。
余りに面白いので「ヤベーよ韓国映画って全部このクオリティなのかよ」と前のめりになっていたのだが、途中から急にだれ始め、映画が終わる頃には「なんか変な映画だったなぁ」って感じ。
ストーリーをツイストさせすぎなんだよ。
盛り込みすぎなのよ。
星1つ半。★1/2
いや、ホント、最初の1時間ぐらいはものすごく面白いのに勿体ない。

以下、ネタバレで問題点をあげつらう。













太平洋に急降下していき墜落しそうになるあたりまでは、とんでもなく面白い。
しかし、その直後から急速にグダグダになっていく珍しいタイプの駄作。
とにかく問題点は、「時間の描き方の曖昧さ」に尽きると思う。
テロによって機内にばらまかれた致死ウイルスに罹患して最初の死者が出る。
周囲の乗客や客室乗務員にも次第に感染が広がっていく。
さぁ、どうする……っていう流れで、これって絶好のタイムサスペンスなのだが、時間の描き方が絶妙に適当なので、すぐ死ぬ人、全然死なない人、時間感覚がまったくいい加減でムチャクチャなのだ。
映画の舞台設定はソウル国際空港からハワイに向かう飛行機だ。
往路が8時間とかで、帰路が10時間とかだろうと推測する。
その往路8時間の割と早い時点で1人目の死者が出ているのに、そのあとハワイに着陸を拒まれ、成田にも断られ、ソウルにもデモによって降りられず……と、計算すると15時間近く密室の中でみんなウイルスに感染しまくっているはずなのに、ぜんぜん次の乗客が死なないの。
なんか知らないけど、ゴホゴホ咳き込んでも、死なないの。
そういった「時間の描き方の曖昧さ」によって、全てがリアリティを失い、「なんじゃこりゃ」と冷え冷えとした気持ちになっているところに、なんと後半いいところでついに発動するまさかの「反日」ストーリーw。
成田空港が着陸を拒むわ、自衛隊のジェット機が韓国の民間機に対して威嚇射撃するわで、日本人としてはとてもじゃないが観ていられない、むしろ腹が立つ展開に突入する。
そのあと母国韓国にすら着陸を拒まれるという話になるので少しは「反日」が薄らぐのだが、それにしても自衛隊機があんな威嚇射撃を民間機相手にしないだろ。
韓国映画にたまに出てくる反日の思想、なんとかならんかw。
と思っていたら、あれだけ足りない足りないと言っていた燃料がいつまで経ってもなくならず、普通にハワイまで行って戻ってくるし。
さいごにソン・ガンホがとる行動とその結果も、余りに陳腐すぎて観客全員に先が読めてしまい、寒々しい気持ちになる。
バカバカしい。

とにかく、最初の1時間ぐらいだけ観て、観るのをやめるのがいちばん良いと思う。
太平洋に墜落しそうになるのをギリ機首を上げてセーフ、の所までは抜群に面白いので。



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今年の9月に映画館で公開されていた2023年の新作「ホーンテッドマンション」。
公開当時、割りと評判が良かった記憶があるので、Disney+で配信されたタイミングで観てみた。
その感想。

星2つ。★★
最初から最後までまるでピンと来ない。
特に語ることが何もない凡作。
ディズニーランドのホーンテッドマンションに乗ったことのある人なら、「ああ見たことあるアレだ」的な楽しみ方がちょいちょい出来るが、ただそれだけ。
別に観て損はしないが、そもそも観ても観なくてもどっちでもいいし、なにひとつ記憶にも残らない、よくあるポップコーンムービー。
ヴィランが、本場のディズニーランドのホーンテッドマンションに出てくるけど、浦安のホーンテッドマンションには出て来ない“首なし帽子箱”なので、日本人観客にはよりピンと来ないと思う。


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Netflixで先日最終話が配信されて完結した韓国ドラマ「無人島のディーバ」。
「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」主演のパク・ウンビンが同作の次に出演することを選んだドラマ作品がこれ。
スーパー演技派とされるパク・ウンビンの新作と言うことで鑑賞。
その感想。

これまた傑作。
星3つ半。★★★1/2
「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」(あれは星5つ★★★★★)のような、なにかとんでもないものを見させられているような高揚感はないのだが、全12話見終わったときの満足感はこちらも高い。
ただ、脚本上ちょっとやりすぎなところがあり、中盤「おいおい大丈夫か?」となるのが勿体ないところ。
最後まで観ると全てのつじつまが綺麗にあっているので、実は凄い脚本ではあるんだけど、途中ストーリーにツイストを利かせようとする余り、少しアクロバティックが過ぎると思う。
その辺で、5点満点から少し減点したという感じ。
だが、何度も言うが、途中どれだけ荒唐無稽な話に見えようが、最終的にはつじつまがきちんと合うのでご安心を。

以下少々ネタバレ。

第1話がとんでもなく良い。
「無人島のディーバ」というタイトルからは荒唐無稽ラブコメディの匂いしかしないが、韓国ドラマでよくありがちな第1話「え、そんなところから始めるの?」がこの作品ではひときわ輝いている。
思っていたのと全然違う角度から攻めてくるので、この第1話はホント素晴らしいなと感心した。

ところが、である。
第2話からしばらく、やべー展開が続く。
「そんなわけあるかい!」と思わず誰でも突っ込んでしまうような強引なツイスト。
まさかの偶然展開。
そして少々滑りがちなギャグ。
そして、韓国ドラマあるある。
この辺が連発されるので、見ている方はちょいと呆れかえってくるのだが、そのあと急にまた面白くなってくるので、このドラマ、中盤はとにかく我慢だ。
最終話手前あたりにはすっかりハマってしまっていることだろう。
中盤以降の盛り返しは凄い。

そして、何がすごいって、主演パク・ウンビンの歌唱力だ。
聞くところによると彼女、この役を演じるため歌のトレーニングを積みまくったそうで、作中で歌う歌はパク・ウンビン自身の歌声だと言うから驚いてしまった。
ほんの1年ぐらい前、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」で急に大スターになり、初めてのファンミーティングを韓国や日本で開いていた彼女だが、その映像を見る限りお世辞にも歌が上手いとは言えずむしろ「ちょい音痴」ぐらいのレベルだったのに、だ。
どれだけ歌のトレーニング積んだんだよ、というか、パク・ウンビンさん、どれだけ演技に対して真摯で天才なのかと。
そりゃ、そんな努力型の演技派だからこそ、ドラマに今引く手あまただし、正直韓国の女優さんとしてはビジュアルも背格好も決して最高とはいえない地味めな彼女が売れまくっているのもよく分かる。
日本にこのタイプの女優ってなかなかいない。
吉高由里子とか高畑充希とか黒木華とか松岡茉優とかの感じかなぁ。
にしても、なんか違う。
彼女の主演作はなんにせよ今後も注目だ。

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ナポレオンの映画化と言えば、「2001年宇宙の旅」の次回作としてスタンリー・キューブリックが実現の一歩手前まで行って挫折したことが映画ファンの間では語り草。
実現すれば、ナポレオン役はあのジャック・ニコルソンが内定していたのだから、本当に観たかった惜しい作品だ。
このキューブリックの「ナポレオン」は、キューブリックが執筆した脚本を元にHBOで近々スピルバーグが全7話でドラマ化することにもなっていて、そっちの方が楽しみではある。
と、そのキューブリック&スピルバーグ版ナポレオンより一足先に、ナポレオンを映画化したのが「エイリアン」「ブレード・ランナー」の名匠リドリー・スコットである。
しかもナポレオン役は「ジョーカー」でアカデミー主演賞に輝いたホアキン・フェニックス。
そりゃあもう期待は高い。
公開初日に二子玉で鑑賞。
その感想。

これはズバリ、佳作です。
惜しい!
星2つ半。★★1/2
なんというか、ホントに惜しい。

戦争スペクタクル映画としては、マジ凄いです。
異常な数のエキストラを使って撮っている大戦闘シーンはものすごい。
そういう意味では本当に100点。
しかし、ナポレオンという人間を描くという意味では、少し足りない。
そのせいもあり、上映時間がちょっと長い。
2時間38分の映画なんだけど、いい意味でも悪い意味でも伝記なのでストーリーが起承転結にならないため、少々単調。
だから長く感じるんだろうけど、それ以上にこの映画、中身に少し問題があると思う。

そもそも論として、キューブリックはナポレオンの映画化に際し「長い映画になる。まぁ『風と共に去りぬ』ほどではないかな」と言ったと伝わっており、あの映画は3時間42分なので、おそらくキューブリックの想定では3時間半はあったのだろう。
そのぐらいナポレオン・ボナパルトという大偉人の半生を描こうとすると尺が当然掛かるわけで、やっぱり誰もが学校で習って名前だけは絶対知ってるような偉人中の偉人なわけですよ、濃すぎの人生なわけです。
で、名匠リドリー・スコットはキューブリックばりに全てを描くのは無理だと思ったんでしょう。
思い切ってナポレオンを妻ジョゼフィーヌとの関係一点で描こうとしたんだと思う。
ほぼこの映画、ジョセフィーヌとの話と言って良い。
が、しかし!
ナポレオンを描く以上、戦争に次ぐ戦争という歴史は描かざるを得ない。
イギリスと戦ったり、エジプト遠征して戦ったり、ロシアに攻め込んだり、島流しになり、またフランスに帰還し、最後はワーテルローの戦いなわけですよ。
この歴史の流れは描かざるを得ない。
その結果、妻ジョゼフィーヌとのドラマ部分と、ナポレオン自身が辿った政治的な流れや戦争の流れを描く部分が、結構乖離している。
政争でこんなことになりました、戦争して勝ちました負けました、で、妻とはこんな感じでした……をどっちも両方やろうとした結果、どっちも中途半端な感じ。
そこが実にもったいないなぁと思う結果になってます。
なぜジョセフィーヌにあそこまで執着したのかがよく分からないし、なぜ戦争に勝ったり負けたりしたのかも実はよく分からない。
どっちも中途半端で消化不良。
で、淡々と実際の出来事が矢継ぎ早に流れていくので、まぁ、正しいと言えば正しいんだろうが、映画として盛り上がるところがない。
ナポレオンも妻ジョセフィーヌも行動動機がよく分からないので、観ていて全く感情移入が出来ない。
まぁ現実の人間はそのまま映したら何考えているかなんて分からないわけだし、人生は起承転結で進むわけでもないし、とんでもないドラマチックな瞬間が映画みたいに来るわけでもないので、この映画、リアルと言えばリアル、正しい伝記と言えば正しい伝記。
なので、好きな人はとことん好きなタイプの映画なんだろうけど、僕としては、人間くさく描くならもっと人間くさく、ナポレオンと妻ジョセフィーヌのドロドロの愛憎劇ばかり濃く激しく詳しくやって欲しかった。
表面上、ナポレオンもジョセフィーヌも相手に対して泣いたり怒ったりしてはいるんだけど、「なぜ?」がイマイチ伝わってこないのよ。
情緒不安定な男女が奇妙な距離感で相手を愛しながら憎んでる、みたいなことしかよく分からない。
スピルバーグが作るキューブリック脚本版「ナポレオン」はその辺どう描いてくるのか?
本当に出来上がるのかなぁ。
HBO頑張って欲しいなぁ。
正式発表が楽しみです。

まぁでもこの映画。
戦争シーンの迫力、残虐さは、19世紀初頭のヨーロッパの戦争ってこんな感じで人権無視の肉弾戦だったんだなぁと思えて、身震いします。
血みどろです、肉片まみれです。
あと、オープニングがいきなりマリー・アントワネットの斬首台シーンから始まるのも最高でした。
あ、見る前に、ナポレオンの基礎知識、ジョセフィーヌの基礎知識をある程度Wikipediaとかで読んでから観に行ったほうが置いていかれずに済んで楽しめると思います。

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