フジテレビの「テラスハウス」が9月で終わります。
僕はその昔フジテレビの「あいのり」やTBSの「未来日記」といった恋愛バラエティに携わり、その延長なのか「テラスハウス」にもアドバイザー的な立場として関わらせていただきました。
「テラスハウス」を始めるに当たって僕をスタッフとして呼び寄せてくれた制作会社イーストの皆さんにまずは感謝です。
そして、このような特異な企画を自分自身の強い理念だけで実現させてくれたフジテレビの太田亮氏にも感謝です。
もちろん2年間にわたってスポンサードして下さったトヨタ自動車さん、今期になってスポンサードして下さったコカコーラさんにも感謝です。
テラスハウスで寝起きし、生活の全てをカメラに晒すというリスクを背負ってくれた出演者の皆さんに感謝です。
とくに2年間もテラスハウスに住み続けてくれた菅谷哲也くん、お疲れさまでした。
後にも先にも、こんな形態の番組はなかったと思います。
海外のリアリティショーとはまったく違う、独自の方程式で作られた、スタッフのこだわりが色濃い番組でした。
テーマ曲が大ヒットし、ムック本やサントラがバカ売れし、イベントは大入り満員。
テラスハウスに住んだ出演者の多くが、芸能人として、各所で活躍しています。
そんなテレビ番組は、今のテレビ業界にあまり存在しません。
ファンの皆さん、ありがとうございます。
終わる理由はよく分かりません。
フジテレビの編成が決めたことです。
確かに視聴率はイマイチでしたし、Twitterをはじめとする各種SNSではヤラセだという妄想的な批判や、写真週刊誌によるいい加減なバッシング記事など、良い面でも悪い面でもれいろいろと話題の多い番組でした。
逆に言うと近年ここまで話題に上った番組はないと言えるぐらい、賛否両論が激しく世間を賑わせた番組でした。
ですから、スタッフたちは手応えを感じていました。
視聴率なんていう、ビデオリサーチという1社独占企業が弾き出す真偽の程が正直よく分からないデータだけで自らを計ってきたテレビ業界に「視聴率だけでなくネットでの反響や若者たちの間での話題性を加味せざるを得ないのでは?」という潮流を作り出したのは、この「テラスハウス」という特異な番組のひとつの功績だと思います。
「あいのり」が終わるときにも感じた憤りを、感じてます。
強烈にその番組を好きなファンが少なくとも何十万という単位で存在する番組を切り捨て、ながら見の視聴者メインでその番組があろうがなかろうがそんなことどうでもいい大衆にふんわり見られている番組を守る……それが本当に企業として正しい判断なのか、それは、10年後、20年後に歴史が判断してくれるでしょう。
僕は放送作家の仕事を25年以上続けてきました。
いつの時代も常にテレビは若者のものであるべきだと思い、いかに斬新なことをやるかに力を入れるあまり、ほとんどの番組が低視聴率で打ち切られてきました(笑)。
それでも、たまになかなか面白いものが生まれ、世間の話題になることもありました。
テレビって、そういうものじゃないかと思います。
ここ数年がテレビ業界にとっての分水嶺になるという気がしています。
どこも同じようなタレントを使い、同じようなグルメや旅の情報を扱い、タレントをわっと集めてトークしているようでは、テレビはそのうち死にます。
でも、テレビが死なないようになんとか新しい事を生み出して行こうと、僕のまわりのテレビマンたちの多くが、日々頑張っています。
しかしながら、視聴率至上主義のテレビ局の意向を前に、どうしてもやれることには限界があり、視聴率が取れない斬新な企画が次々と終わらせられていくのが現実です。
分水嶺。
今、本当に新しい事を生み出すために、苦しいときにその苦しみに耐えられるかどうかが、テレビ業界の未来を左右すると思います。
……本当に難しいです。
食っていくためには、仕事を無くすことは出来ません。
だから、作り手はある程度視聴率が計算できる安牌な番組を作り、視聴者はそんなものにどんどん飽きていき、負のスパイラルに陥っています。
「テラスハウス」
こういったオンリーワンソフトを、テレビ業界がどのように考えていくか。
たとえ視聴率が低いとしても、そこに10年後20年後の視聴者をテレビの前につなぎ止めていくInvisible Powerを感じとれるか?
テレビは今、試されています。
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